2012年12月28日金曜日

第30回 Lymphatic Pump Techniques Ⅱ 

以前にも書いたのですが、リンパの手技についてもう少し書いてみます。

リンパパンプは、ミラーにより「呼吸運動を改善する手技」として1926年に開発させれました。 それから、リンパパンプは、リンパの流れを改善することにより間質から炎症を起こす中間物質や老廃物を除くことによりむくみや感染症にも使われるようになりました。

リンパパンプは、身体が感染症などと戦うためにリンパの流れを良くすることを目的にした手技です。 この手技には、胸椎パンプや腹部パンプなどがあり、これらは、胸管の通りを良くすることにより免疫機能を亢進させることを目的にしています。

他にもいろいろな手技がりあます。例えば、ミラーパンプと言ってリズミカルに素早く胸の前を圧迫するもの。足部を使うペダルパンプ、そして、横隔膜ドーミングなどです。もちろん、背部から刺激を加えることもできます。ミラーパンプは、少しやり方を変えると肺の換気にも影響を与えることができます(はじめは、肺へのアプローチをメインにしていたようなのでこの手技の方が使われていたのかもしれません)。

胸部のリンパ手技は、湿咳や上気道炎などにも効果がみられ、さらには、長期の寝た切り状態のときにも免疫を高めるので感染症を防いだり、むくみや痰などを軽減することができます。あとは、炎症の中間物質を減らしたり、免疫を亢進できるのでアレルギーにも効果が期待できます。

前にも書きましたが、基本的には中枢から行います。中枢にスペースをつくりそのスペースに末梢から送りこんで行くようにすると、足のむくみなどは苦労なく、効果的に軽減することができます。

足の捻挫や、膝の前十字靱帯の手術の後のむくみなども中枢から行うことによって効果的に軽減することができるので、是非やってみてください。

しかしながら、使い慣れないといつ使って良いのかが分からないのがリンパパンプです。

風邪の時?怪我の時?乳がんやリンパ腫の時?

この様なときにはもちろん効果的です。でも、それだけではありません。

私は、リンパパンプを日常的に使っています。特に初診時に使うことが多いです。もちろん免疫力の亢進を目的にということもあるのですが、体液循環の改善をさせることにより 全身に栄養やエネルギーが行きわたる様にしたいと考えているからです。実際に、リンパパンプをやると患者さんの顔色がみるみる変化したり、患者さんによっては手や足が暖かくなるのを感じたり、「血液が流れてきているみたいです。」と言われる患者さんがいたりします。

あとは、呼吸の改善です。鼻呼吸ができない、なんだか呼吸がしずらいと感じる時は、もちろんそれらの原因にもアプローチしますが、赤ちゃんが生まれた時に泣き出すと同時に呼吸が始まる時のようなイメージでリンパパンプを使っています。あの「パンッ!」とはじけるような感じです。身体はあの感じを記憶しています。(多分)組織レベルで一回赤ちゃんに戻ってもらって、そこから再生が行われることを期待して治療しています。

少しマニアックな話になってしまって申し訳ないですが、実際の手技はとても簡単ですし、実は知らない間に使っているような手技もあると思います。最近はYoutubeにもたくさん動画があるのでできそうな手技からマネしてみてください。

今年もあと4日。リンパの流れを良くして、健康に新年を迎えましょう。




2012年12月10日月曜日

第29回 Spiritual

皆さんは「スピリチュアル」と聞くとどのように感じるだろう?

なんだか怪しい感じがする?霊?神秘的?などなど。「スピリチュアル」と言う言葉は良く耳にするものの実際問題なんだか良く分からない。おまけに、日本ではテレビなどで面白おかしく扱われてしまったので少し歪んで伝わっているのではないかと思う。私も、「スピリチュアル」聞くと、E原さんとM輪さんが深夜に2人でやっていた番組を思い出してしまう。

先日、少しブログにも書いたのだが、WHO健康の定義に「スピリチュアル」という言葉が加えられるかもという動きがあるようだ。

「スピリチュアル」を治療する。

日本人は、もともと神様や仏様のような霊性と生活が密に関係していたように思う。これは医学の面でもそうであっただろう。しかし、西洋医学の台頭とともにそのような霊性は排除されていき、いまでは生活からも離れてきてしまっているように思う。

もちろん、心、精神、魂などの言葉を積極的に使い、治療している先生もたくさんいる。しかし、治療に、それらの言葉を使うのに違和感を感じる方も多いように思う。

しかし、世界はそちらの方向へ動き始めている。そういうものを無視しての治療、そして、治癒は難しいということなのだろうか。

では、そのWHOでは「スピリチュアル」をどのように定義しているのかというと、

 「スピリチュアル」とは、人間として生きることに関連した経験的一側面であり、身体感覚的な現象を超越して得た体験を表す言葉である。多くの人々にとっ て、「生きていること」が持つスピリチュアルな側面には宗教的な因子が含まれているが、「スピリチュアル」は「宗教的」とは同じ意味ではない。スピリチュ アルな因子は、身体的、心理的、社会的因子を包含した、人間の「生」の全体像を構成する一因子とみることができ、生きている目的ついての関心や懸念と関わっている場合が多い。(WHO「ガンの緩和ケアに関する専門委員会報告」1983年)

つまり、人間全体を考えるときに無視できない、目には見えないが、生きる目的に関する、とても重要な要素だとされる(Wikipediaより)。

最後の一文がなければなんだか良く分からない。もう少し簡単に訳してくれればいいのに。

生きる目標は?自分とは何か?病気とは?死とは?などなどの魂の苦痛。
宗教などに関係なく誰もが感じる苦痛。
それらに明確な答えなどないだろう。しかし、それらがいろいろな形で身体に影響を及ぼす。いままでは、「ストレス」という言葉で片づけられていたのかも知れない。

オステオパシーの原理の1つ、「身体は1つのユニットである」からすると「スピリチュアル」も当然のごとく「ユニット」に含まれてくるのだろう。現にそのような問題を抱えた患者さんは多い。言葉では言い表すことはできないが、辛いことは分かる。それがお互いに一致すればそれだけで症状は解消する。心の解放。魂の解放。精神の解放。

我々、代替医療者ができることは無限に拡がってきている。
実に良い時代になってきた。

我々がそれなりの責任をもてば最後に近づくまで西洋医学に頼ることなく診ることができる。
そのためには、もちろん勉強は必要だが、人間的な成長も必要になってくるのだろう。特に「スピリチュアル」を扱うためには、幅広い事柄、事象に対して自分の考えを明確にしておかなくてはいけないのではないだろうか。 悩んでいる人の前世を当てることが目的ではなさそうだ。

スピリチュアルも含めての健康だ!



2012年12月7日金曜日

第28回 習慣を変える

習慣を変えようと思ったら3週間その事を続ける必要があるといいます。そして、我々には、いろいろな習慣があります。それは身体に良いものから、悪いものまで本当に多岐にわたります。そして、それには意識できるものもあれば、できないものもあります。

チョコレートを食べすぎてします。たばこを吸ってしまう。 車のスピードを出しすぎてしまう。
くつは右足から履く。貧乏ゆすりをしてしまう。朝起きるとトイレに行く。。。etc...

本日は、習慣を変える時に起こる6段階のステージについて書いてみます。各ステージを理解すると成功しやすいのではないかと思います。

  1. 無関心(Pre-contemplation)
  2. 関心(Contemplation)
  3. 準備(Preparing)
  4. 実行(Action)
  5. 維持(Maintaining)
  6. 終了(Termination)
1:無関心
このステージでは、人はまだ習慣を変えることに興味もないし、変えることの必要性も感じていません。したがって、変化を起こす意図すらありません。
むしろ、自分の習慣をあえて変えないようにする時もあります。その習慣がもたらすであろう負の部分を見ようとしなかったり、それらの関する情報を排除したりします。変化の必要性や現実にどのように変化していくのかというところに焦点を当てようとはしません。
したがって、このステージにいる人は「抵抗者」「動機なし」「否定段階」などと呼ばれたりもします。

2:関心
このステージでは、その習慣について考え始めたり、変化に対する可能性について考え始めます。ある習慣に問題があることを認識し、それを変えることで人生がさらに良いものになるのではと考えるようになります。
この様に考えるようになるにはしばしばきっかけがあります。自分の病気、仕事の責任の増加や身近な人を死などがきっかけになったりします。
しかし、このステージでは、問題はまだ後回しにしてしまったり、 考えがあいまいだったり、メリットやデメリットばかりを考えてしまう傾向にあります。結局は、変化によって起こる良いところは分かっているにも関わらず、つい楽な方に流されてしまいます。

3:準備
このステージでは、変化が起こります。その習慣がもっている問題がどのくらい悪いのかを心配し、認識することで、変化しようと決心します。
決死したら最低でも一カ月以内には実行に移すようにすると良いでしょう。 鉄は熱いうちに打て!です。そして、このステージは、できるだけその習慣に関する情報を集める時期にもなります。自己反省、そして、決心をし、計画をたて、変化の必要性を再認識する。この時期は「移行期」です。心がとても揺れ動いています。頭では分かり始めていても、潜在意識までは変えることができていません。

4: 実行
決意のもとに、いよいよ変化を実行に移す時が来ました。新しい生活の始まりです。同時に、失敗のチャンスや誘惑もとて強い時期です。その習慣の事ばかりが気になってしまうかもしれません。この時期は、「自制心」のステージです。誘惑が強い分、耐える力も必要になります。モチベーションを維持するためにちょっとしたことに対して賞賛してみてください。だいたい6カ月くらいつづくと次の「維持」のステージに移って行きます。

5:維持
このステージは、変化をより強固なものにしていくことになります。新しい生活を維持し、失敗や誘惑に負けないようにしなくてはいけないからです。 この段階では、変化が必要だった悪しき習慣は当たり前のものになり、誘惑に負けないためにいくつかの手段が用意されているはずです。以前よりも失敗する確率はすくないとはいえ、ここでも進歩していると感じることは重要です。
もし、この段階で失敗した場合でも、自分のことを責めずに、「きっかけ」を再認識して時期を見て再チャレンジしてください。失敗は誰にでも起こることです。がっかりすることはありません。

6:終了
これまでは維持が死ぬまで続くと考えてきましたが、最近になり、この「終了」というステージが加えられました。
この段階では、変えた習慣を考えた時に嫌悪感を感じたり、その習慣自体では変化しようというモチベーションに成りえなくなっています。潜在意識まで変化が起こっています。
そして、この段階までくると、その習慣を変えることを友達、家族、同僚などに勧めてみたくなります。この様に勧めることは、他の人のモチベーションに成りやすく、また、その人が変えようとした時の大きなサポーターにもなります。新たな成功を生むためにとても重要な要素になります。
しかしながら、この時期でも、失敗は十分ありえるのです。でも、ここでは、失敗ととらえるよりはより強固な作戦やサポートシステムを作る良い機会だととらえられるようにしてください。

習慣の変化はモチベーションが強ければ強いほど成功率が上がります。始める前に、本気で変えたいと思えるようなモチベーションを持てるようにしてください。統計だと、成功までに5~6回くらい失敗をしているようです。だから、失敗しても自分を決して責めないことです。

皆さんも何か変えたい習慣があったらチャレンジしてみてはいかがでしょう。


2012年12月3日月曜日

第27回:The Body Possesses Self-Regulatory and Self-Healing Mechanisms

本日は、以前ブログで書いたオステオパシーの原則のうちの1つ「The Body Possesses Self-Regulatory and Self-Healing Mechanisms=身体は自己調整能力と自己治癒力メカニズムを有している」について書こうと思う。

オステオパシーの考え方は、東洋医学を学んでいる先生にも非常に受け入れやすいと思う。それは、どちらも自然治癒力をとても重要にとらえているからだ。中国とアメリカ、どのように接点があったのかは分からないが、身体を治していくなかでそれぞれが自然治癒力に気が付くタイミングがあったのであろう。とてつもなく凄いことだ。

私が鍼灸を勉強し始めた時から良く耳にする「自然治癒力」という言葉。その言葉を知っているために、はじめから自然治癒力を意識して治療をすることができた、しかし、自然治癒力という言葉がいまも存在していないとすれば、私はどの段階でそのことに気が付くことができたのだろう。


今でも必死に患者さんを「治そう」としていたのではないかと思う。治そうとし続ければ限界がくるのでいずれ気が付くことができたのだろうか。いずれにせよ、早い段階で知ることができる時代にいたのはとてもラッキーなことだ。

身体は、常にさまざまなバランスを保つように働いている。たとえば、血圧、血糖、そして、心拍数などは、いつでも正常の範囲に収まる様に調節され続けている。組織に何らかの傷が付いた時は、我々がその傷を治る様に助けることはできるが、その組織の回復は身体の中に存在する力によって行われている。これが自然治癒力である。

Dr.スティルは「身体を治すのに必要なすべての薬は身体の中に存在する」と言っている。彼は、身体中の組織にある生来の知性、身体を回復させるための賢さ、そして、身体を健康な状態に保つ知恵を有していることを理解していた。

それらのバランスが崩れた時、これらの知恵が身体のバランスを元通りにしてくれる。オステオパスは、これらの力が病気や身体のアンバランスにより障害された時に、どうすれば内なる力が最大限に働くようになるかを考え、そうすることによって少しでも早く回復に導くようにしています。

自然治癒力が働かない状態や減少はいろいろある。それは、身体的にも精神的にもある。しかし、誰もが有している力です。その自然治癒力が最大限に働ける状態を「健康」と呼べるのでしょう。

WHOの健康の定義も見直され、「スピリチュアル」という単語が加えられるかもという話です。スピリチュアルも含めての健康。精神だけでなく、心も含めての健康なのです。昔の人たちは知っていました。途中でそういうのを排除してしまったのです。まさしく、東洋医学やオステオパシーの原理に時代が追いつきて来ています。楽しみですね。



2012年12月1日土曜日

第26回:根本的な解決

我々、日本人は様々な啓蒙活動のおかげで「薬を飲めば病気が治る!」と信じている人が多いように思います。そして、知らないうちに医療費の増大に貢献しています。

確かに、薬には素晴らしい効果を発揮してくれているものはあります。しかし、薬というのはあくまでも対症療法であり病気を根本から治すというものではありません。

抗生物質も長期間使い続ければ効果がなくなるだけでなく、耐性菌により深刻な事態を引き起こします。ステロイドやNSAIDsなどにもそれぞれに副作用があることを認識しておかなくてはいけません。

高血圧、糖尿病、うつ、そして、腰痛など慢性のものは、その原因を取り除かない限り完治することはありません。治っては繰り返しするのは、その症状を一時的に楽にしているにすぎません。

薬によっては、長期間の服用により関節自体を痛めたり、肝臓を痛めたりしてしまうものもあります。そして、薬の長期服用は交感神経系を興奮させるのでより病気になりやすい状態にもしてしまいます。薬を飲むことにより実は完治からはどんどん遠のいているのです。

実は、手技療法も同じです。長期間に渡る不必要な刺激は、身体に痛みを記憶させます。そして、原因などを忘れ、そこが悪いと身体が勘違いをします。そうなれば治ることはありません。そればかりか、原因を思い出させるのに非常に苦労します。

では、根本とはなにか?

身体は本来ホメオスタシスと言って自然に治る力を有しています。不適切な薬の使用はこの機能を大きく低下させます。低下させるだけならよいですが、多くの精神薬のように皆無にしてしまうものまであります。

症状になる前には必ず何らかの小さなサインがあります。そして、慢性の症状には慢性になるだけの原因や理由があります。それは、肉体的、精神的、生活習慣、生活動作、食生活、人間関係、不安などさまざまなことがあるでしょう。少しおかしいと思ったら、立ち止まって自分に聞いてみるとよいのではないでしょうか。

特に、自分にはストレスがないと思っている人は注意が必要です。そういう人に限って、慢性の腰痛、肩コリ、頭痛や高血圧などの症状を持っている場合が多いです。でも、全くそう思っていない患者さんに強要する必要もありません。

原因をなくしておかないとどうなるか。身体は、あるストレスに対する対処を記憶してしまいます。なので、同じストレスに直面した時にまた同じ痛みや症状となって身体に現れることになります。これが症状が繰り返すメカニズムです。無視し続ければ慢性の状態になり、いずれ動けないような状態になります。身体が強制的にストップをかけるからです。

根本的に治そうと思ったら、自分の状態を知ることです。自分が本当にやりた事、楽しいこと。本当はやりたくない事、嫌いな事。いろいろあると思います。それらとどのように向き合うかも大切になってくるでしょう。

自分で気が付き、自分を変えていくことがとても大切になります。私は、治療で身体や気持ちにきっかけを与え、患者さんの身体にある自然治癒力を引き出すことをします。あとは、患者さんの身体に任せます。つまり、患者さんの身体が治しているのです。私ができるのはそれだけです。根本もヒントは見せますが、それ以上はしません。患者さんが答えを出すことが大切と考えています。

みなさんも自分にある症状や状態を変えたいと思ったら、自分の身体に原因を聞いてみて根本から治してみてはいかがですか?

増大する医療費が減らせるかもしれません。