2013年8月14日水曜日

第41回:アメリカ研修を終えて

2013年7月21日から26日までBasic Cranial courseに参加、その後、26日から28日までIntensive Pediatric courseに参加してきた。その体験を忘れないように書きとめておこうと思う。

場所は、アメリカ、サンディエゴ。Drサザーランドの弟子のなかでただ一人生きているDrフライマンが1982年に開いたOsteopathy Center for Children & Families.

去年から行きたいと思っていたのだが、去年のこの時期はオーストラリアから帰国したばかりで何かと忙しく参加できなかった。しかし、あきらめはつかず、このセンターのHPをちょこちょこチェックしていると今年は7月に開催とのこと。そして、Drフライマンが行う最後のセミナーとの記載もあり、参加を躊躇する理由がなくなりその場で申し込み(5月)。セミナーの内容ももちろんなのだが、なによりもオステオパシーの歴史をこの目で見たいという思いが強い。

申し込みした日から勉強を始めよう思っていたのだが、今年はATC,骨塾、外部セミナー、そして、それらの資料づくり、治療の振り返りなどに追われてなかなかできず。結局、7月に入って解剖の復習を少ししかせずに参加することに。(これはほぼ言いわけ)

日本時間の7月21日(日)の昼に出発。ロス経由でサンディエゴに着いたのが現地時間の7月21日(日)のお昼頃。完全に時間の感覚がなくなる。オーストラリアは時差がほとんどなかったので今回もあまり意識をしていなかったが、時差はやっぱりつらい。

飛行機に乗る前は、少しの不安を感じていた。やはり行ったことのない土地に行く不安を感じているのだろうか。しかし、それとともに大きな期待も感じている。この感じは2006年にオートラリアに行く前の感覚に近い。ワクワク・ドキドキ!

ホテルに着き会場となるクリニックの場所を確認。このホテルは主催者が推薦してくれているところ。にも関わらず歩いたら1時間以上。お勧めの場所だからてっきり歩いて行ける距離だと思っていた。あわててホテルの受付の人に行き方を確認。バスを使えとのこと。マジか?!1週間の滞在で事故は起こしたくないので車は使いたくないしタクシーだと往復50ドル。これはバスしかない。その日は、バス停と時刻表を確認して終了。

セミナーが8時開始だったので、毎日6時に起きて朝ごはんを食べ、6時45分のバスに乗って会場へ。バスの運転手に降りたいところを伝え、着いたら教えてくれるように頼んでおく。どの運転手さんも教えてくれるので迷わずに行くことができた。しかし、他の参加者に「バスできた」と伝えるとびっくりされた。車社会のアメリカで「いわゆる普通の人」はあまりバスは使わないみたい。みんなに「気をつけてね」と言われる。実際バス停やバスの中にはいろいろな人がいた。そして、そのなかにアジア人1人というなんともしがたいアウェー感。でも、オーストラリアで慣れていたので良かった。初めてだったらきっと乗れなかったと思う。

そんなバス生活も幸運なことに最後の3日間はアラスカで唯一の手技を使うオステオパス、Drオスワルドの車に乗っけてもらえることに。Drオスワルドは、20数年前。学生の時にDrフライマンの生徒だったとのこと。偶然にも彼の二男がうちの兄が教鞭をとっているUCDavis、それも兄がいる化学学部に9月から入学するとのことで意気投合。世の中本当に狭い。Drオスワルドは、勉強というよりもただDrフライマンに会いに来たとのこと。しかし、最後の3日間はペアを組んでずっと一緒に実技をやることができ、いろいろ教えてもらったり、治療してもらったり感謝、感激。個人授業状態。
最後に空港まで送ってもらい「いつでも勉強しにアラスカにおいで、そして困ったことがあったらいつでもメールしろと」と言ってアドレスも教えてもらえた。これでアラスカにも行ける。オステオパシー最高!

今回のセミナーの内容を一言で言い表すと「とても濃かった。」アメリカ人の参加者もこれまでいろいろなセミナー行ったけどこんなに内容が濃いセミナーは初めてと言っていたし、なによりも少人数なのが良いと言っていた。参加者は全部で25~30人程度。アルゼンチン、スペイン、ウクライナ、サウジアラビア、オーストラリア、シンガポール、ドイツ、そして日本。いろいろな国から来ていた。

そして、なによりも感動したのは講師陣。アメリカにはこのような先生がたくさんいるのかと思うと本当にうらやましい。質問にはとてもオープンになんでも教えてくれるし、どんどんいろいろなテクニックもみせてくれるし、やってくれる。こんな環境でオステオパシーをできるのはやはり歴史のたまもの。

日本も30年後はこのような状態になっているようにしたい。そのためには自分自身が成長していかなくては。今の日本のオステオパシー業界のように閉鎖的な業界に成長はない。どんどんオープンにしていかなくては。オステオパシーに秘密にするようなことは一切ない。むしろ教えてもらってもすぐにはできないことの方が多い。

講師陣の先生が随所に「Drサザーランドはこのように言っていた」「Drフライマンはこのように言っていた」「Drマグーンはこのように言っていた」そして、自分の経験を踏まえて話をしてくれる。オステオパシーの歴史を肌で感じる。感動の連続。これは、アメリカのこの場所でしか体験できないだろう。

しかしながら、アメリカの手技を使うオステオパスの減少も一途をだとっているようだ。学費がとても高いために、みんな儲かるほうへ流れてしまうとのことだった。アメリカのオステオパシーの30年後は今と少し違ってしまっているのではないだろうか。


そして、今回はじめて行われた子供オステオパシーのセミナー。Drセンタースという、Drフライマンと10年以上一緒に働いる先生によって行われた。いまでは、その評価はDrフライマンをしのぐと言われれている。

この先生は、「もう秘密の時代は終わった」と言ってセミナーを始めた。経験だけでなく、知識も圧倒的で自分の勉強不足と痛感。手技から理論どんな細かいことにも応え、教えてくれた。

オステオパシーの勉強に頂上はない。こんな世界を選んだということはとても幸せなことだ。

実際に、子供にデモンストレーションもしてくれる。もちろん我々も指導のもとにいろんな子供に治療をする。子供の検査の仕方、それぞれの症状の考え方、治療の仕方。どれも実に理論的。

「治療の世界に近道はなし」。本当にまだまだだ。知識も技術もまだまだだ。やらなくてはいけないことが山ほどある。そのことを再認識できただけでも今回来てよかった。

セミナーのなかで印象に残ったいくつかの言葉を書き留めておこう。

「我々は道案内だ」。オステオパスは患者さんのかだら・こころ・精神をよりよい方向へ導くのが仕事。あとは、患者さんの身体の仕事だ。

「我々は何人の人を治せるのか?」答えは「0人」オステオパスは道案内をするだけ。これがオステオパシー。
 
「その人がもっている最大のポテンシャルに到達させる」これは目から鱗。いままで治癒ってなんだろうって考えていたんだけど。これは凄い。ポテンシャルは人によって違う。
 
「治療する前に、その患者さんの美しいところを探しなさい。」これは本当に大切。だれもが「美しいところ」を持っている。それがポテンシャルにつながる。

セミナーが行われたクリニック。とても居心地が良かった。周りも緑に囲まれていて、治療中もまどから小鳥や小動物がいるのが見える。なんだか自分もほっとする。Drオスワルドも「ここは私にとってのパワースポットだ」といってセミナーが終わってもしばらく座ってその空間を楽しんでいた。なんかわかる気がしたので時間までとなりで座っていた。この様な雰囲気が治療をする雰囲気なんだなと思った。私も将来そのような治療院を持ちたい。緑もなく、コンクリートに囲まれたなかではエネルギーに限界があるのだろう。治療する方もされる方もすでにエネルギーが枯渇している。環境はとても大事だ。

今回のセミナーは衝撃的だった。アメリカのオステオパシーの歴史の深さ・凄さを感じた。これは、他の国では見ることができないだろう。どのテクニックも理論的だった。日本でこのような背景や理論まで知っている人はいないだろうか。これは日本だけでなくオーストラリアでもそうなのかもしれない。本当に行って良かった。

常に勉強だ。また、機会を見つけて参加しよう。