2014年6月18日水曜日

第49回:心と身体

オステオパシーでは、心と身体の関係をとても重要に考える。
心が、精神活動、身体活動の原動力になる。心が疲れてしまうと、この原動力が失われ、様々な機能がストップする。

痛みは身体からのサイン。痛みを作り出すことによって、身体がなんらかの危険な状況にあることを教えてくれる。

はじめは小さな痛みからはじまる。それを無視すると少し大きな痛みへと変化する。
気持ちが強い人だと、肉体に起こる症状が強くでる。身体は痛みを強くすることでなんとか身体を止めようとする。
肉体よりも気持ちの方へ症状を移すこともある。元気がでない。疲れた。つまらない。ひどくなると息苦しい。パニック。うつ。

身体からのサインということに変わりはない。それが肉体にでるか、心にでるか。

このように書くととても簡単なように思える。しかし、実際はより複雑だ。

先日、若い女性の方が来院された。
「あたし骨盤がづれていて、足の長さが違うし、下腹部もぽっこりでているし、二の腕も太い。」
それが、痛みやなんらかの問題を起こしていることはないようだ。
「治療してくれないの?」

不必要な治療はやらないし、新たな痛みを創ってしまう可能性がある。
それでは、一体、何を治せば良いのだろう?しばらく会話を続けてみる。

「あたし病んでるの!」「あたし病んでるから!」
 どうして病んでるって思うの?という問いに対しては「わからない」

私のところにくるということは何かしらの助けが必要だから来たはず。

ある会話をきっかけに、いろいろな話しをし始める。
過去。現在。未来。「壮絶な過去と現在」 本人は笑いながら話す。

もう痛さも感じない。疲れも感じない。漠然と病んでいると感じている。
ただ頑張る身体と押し潰した心。

心と身体の距離が遠い。自分が自分でわからない。

頭を触るとまるで硬い石のよう。薄い金属の玉を触っているみたい。
動きは全くない。

しばらくすると動きだす頭。そして、溢れる涙。

落ち着くと普段は薬を飲まずには寝られない彼女が眠りに落ちる。

治療が終わると「あたしって疲れていたんだ」とポツリ。

心と身体が少し近づいた。少し痛みも感じ始めるかもしれない。

心と身体の距離が遠い人は意外と多い。
それを防ぐためには、痛みを尊重し、耳を傾けてあげることだ。

身体の痛みも心の痛みも自分の生きかたの方向が自分に合っていないことを教えてくれる。

痛みはいつでも私たちを助けてくれる。痛みを感じたらがっかりせずに、どうして痛みがあるのかを考えるようにすれば痛みは自然に消えていく。

疲れたり、痛みがあるときほど自分の身体や心の声に耳を傾ける時間を作ってみてはいかがだろう?