2014年5月10日土曜日

第48回:Pain Science

Pain Science。
かれこれ50年以上研究されているエリア。注目度は低いものの、最近、良く耳や目にするようになってきた。

海外のオステオパスのフォーラムでも頻繁に取り上げられる話題。

痛みは脳からの情報で、身体からの情報ではない。
痛みとは、身体からのインプットではなく、脳からのアウトプット。

だから脳を治療する必要がある!

慢性の痛み。
通常の組織の修復期間をすぎても治らない。そして、再負傷するわけでも、持続的な刺激があるわけでもないのに痛みが続く。

治療院に通っている人のほとんどがこのような痛みを抱えているのでは。

いままでは、姿勢が悪い、コアの筋力が弱い、ヘルニアなどを痛みが続く原因にしていたが、それらを明確にサポートすようなエビデンスは存在しない。

逆に、まったく痛みがない人をMRIをとったらそのほとんどの人が何かしらの組織の損傷が見つかったという研究報告もある。

では、痛みを感じる人と痛みを感じない人の違いって何?

そうです。痛みに対する脳の認識の違いです。

凄い痛さを問題ないと考える脳と、少しの痛さを問題と考える脳。

痛みのメカニズムはとても複雑。ここではそれを説明したいわけではありません。

大切なのは、どうして脳がそのように認識してしまうかということ。

簡単な例。
仕事に行く。毎日嫌な仕事をしなくてはならない。嫌な人と会わなくてはならない。
そして、仕事にいくと肩が痛くなる。腰が痛くなる。

この2つのことが長時間起こり続けると、脳はこの2つの本来関係のない事象を結びつけてしまう。
そして、いつの間にか仕事にいくと肩や腰が痛くなる。ひどくなると仕事のことを考えると痛くなる。ようになってしまう。

お休み中は快適。仕事や学校に戻ると痛くなる。こんな経験あるでしょうか?

患者さんが「いままで痛かったのに、院に来て先生の顔を見たら痛くなくなった」というのも脳の認識によって起こる。
痛みに対して適正な行動がとられたという安心感が脳をリラックスさせる。

では、脳が痛みを起こしているのをどうやって治すの?
教育しかありません。

最近流行りのコアマッスル。
筋トレをしたという安心感。筋トレによる新たな刺激。などにより脳の認識に変化が起こる。
別に筋肉が付いたからでもなんでもない。筋肉がしっかりしていなくても痛くない人は星の数ほどいる。

でも、運動は脳の認識に変化を起こすのにとても良いように思う。

ヒーリングバックペインのDrサーノは、患者さんを集めてメカニズムを説明したり、経験談を話したりすることによって多くの人を治している。患者さんを触ることは治癒を遅くするとも言っている。
読んだり話したりするだけで治るのだから触る必要はない。
これも脳の認識を変えることによって症状を改善させる。読んだり話したりするだけなので身体は何も変わっていない。

確かに、治療もやり方を間違えると脳の間違った認識を助長させてしまい、患者さんは治療院なしでは生活できなくなってしまう。

こういう不幸な患者さんを増やさないためには、教育しかない。治療して教育!
メカニズムを教えてあげることだ。説明して、読んでもらって、気が付いてもらう。
自分で気が付けば、よりスムーズに脳が変化する。

これからは、身体だけでなく脳を治療する時代だ。
Pain Science。
3年後にはコアトレーニングのように日本でも普通に話されるようになっているでしょう。

最近、患者さんからのメール相談が増えている。毎日返信するのが楽しい。
メールでも悩みを打ち明けて頂けるのはありがたいことだ。