2019年9月24日火曜日

第62回:ドラゴンクエスト

手技を学ぶってどのような感じ?って聞かれたら。
「ドラゴンクエストみたいな感じ!」って答える。

ドラゴンクエストは、レベルを上げていきながら、使える装備も増え、魔法も増えて行く。そして、強い敵も倒すことができるようになるゲーム。

この装備や魔法が治療でいうところの手技に当たる。レベル1の勇者は、いきなり凄い武器を扱えないように、まだ治療を始めたばかりの先生がいきなり難しい手技をすることはできない。

その昔、どこかの国の王様がバイオリンをはじめたいと言って、ストラディバリウスを購入したが、思ったように音がだせずに壊していまったという話しを聞いたことがある。
その反面、「弘法筆を選ばず」ということわざがあるように、物事に巧みな人は、道具を選ばない。つまり、経験豊かな先生は、どのような手技にであっても使いこなすことができる。

しかし、手技とドラゴンクエストは全く同じとはいえない。違いは2つ。
1つはレベルの上げ方。
1年である程度のレベルに到達している人もいれば、10年やってもほとんど変わらない人もいる。

中国の武術では、生徒がそのレベルに達したと判断してはじめてそれに見合った技を教えたという。何年やろうと先生が達していないと判断すれば教えてはもらえない。
これは冷たいように感じるかもしれないが、とても理にかなっている。
実際に、レベルに合わない手技は使いこなすことができないし、意図したのとは違う方向に進んでしまうこともある。

そして、もう一つは人間性も重要な要素。
ドラゴンクエストでは、だれが操作してもそのキャラクターのまま。
なので敵を倒してレベルを上げていけば、強い装備も魔法も使いこなせる。

しかし、手技は違う。まずは、その症状をきちんと判断し、それに適切と思われる手技を選択する。それだけではなく、その患者さんを触って、感じて、最適と思われる手技をチョイスする。そのためには、患者さんの背景や好み、さまざまなことをトータルして選択しなくてはならない。これは、センスという言葉で片付けてしまってはならない。
仕事だけでなく、遊んだり、勉強したり、さまざまなことでレベルアップできるはず。
そして、何よりも手技を学びたいという強い気持ちが大切。気持ちなくしてはどうしようもできない。情熱に勝るものなし。

もちろん、さまざまな手技があるというのを知っておくのは大切。
そして、そのような世界があるということを知っておくのも大事。
そのような環境に身を置くのも大切。

少し触ってもらえばどのくらいのレベルかはわかる。
治療とはそのくらい繊細なもの。
私は、手技を学ぶこともそうだが、速い段階で治療をする手を作るのも大切だと思っている。経験があっても手ができない人はいる。触診は二方向。患者さんも触っている。
触って得られる情報をできるだけ多くする。これが一番大切。手に人間性が現れる。

「目は口ほどにものを言う。」というけど、治療家の場合は、「手は口ほどにものを言う。」になる。

学問は、ドラゴンクエストでも良いかもしれないが、手技は、レベルアップに人間力も加わる気がする。

いろいろな手技があるのを知っておいて、そのレベルに達したり、必要とした際に自然と手技に出会うのが理想的。やっぱりより良いものを常に探しておかなくては。
そう考えると日々の診療はとても大切!日々課題を持って取り組もう。