2012年10月30日火曜日

第17回 ダイエット

読書の秋。芸術の秋。スポーツの秋。などなどいろいろ言われる秋ですが、なんといっても食欲の秋。ということで、今日はオーストラリア流の体重コントロール法をご紹介します。
私も書きながら再認識します!

ちなみに、オーストラリアでは、オステオパスはコース終了とともにNutritionistの資格を得ることができます。栄養も身体を構成するとても大切な要素と考えています。

まず、長期間で体重を減らして行く場合は、下記の項目をコンビネーションでやっていくことが求められます。
  1. 生活習慣を変える
  2. 運動習慣を変える
  3. 食習慣を変える
 1 生活習慣を変える
  • 自分の行動をモニターする:食べ物日記、食べ物/空腹日記(空腹時以外の食べ物をつける)
  • まず、自己批判、鬱など精神的症状の改善を試みる。
  • 怒りや緊張などのストレスの解消に食べ物を使わない。
  • 毎日体重を計る。
  • 現実的なゴールを設定する。
2 運動習慣を変える
  • 全ての動きが体重に影響あり、それらは身体にも利益を与える。所謂運動だけでなく精神的なもの(瞑想)なども含む。
  • 自分にあった運動の強度、頻度、時間を考えなくてはならない。
  • 体重が減っていくにともなって上記の3つの項目は増やしていく。

運動をより効果的なものにする方法です。
  • 水泳は、陸上で行う運動より体重を減少させる効果は低い。
  • 朝食前、血中の糖とグリコーゲンの値が最も低いので、このタイミングで運動するとより脂肪を燃焼させることができる。
  • 運動してすぐにモノを食べるのを避ける。そうすると、血中の脂肪が筋肉によって使われ、脂肪細胞に戻るのを防ぐことができる。
  • 部分痩せはないと考える!なぜなら脂肪はあなたの身体中をめぐっているからだ。

3 食習慣を変える
  • 摂取カロリーを減らす。

食べ物、食べる時間など細かい方法はあるのですが、まずは、余分なカロリーが何に由来しているのかを見るける。空腹時以外の食べ物、油もの、食べる量、アルコール、その他の過食、過飲を探します。まずは敵を知らねばなりません。

そして、基本は低脂肪、低カロリーダイエットです。したがって、ファーストフードなどはいけません。
朝ごはんを取る事もとても重要です。これは血糖値の値とも関係するのでしっかりとる様にしてください。

そして、きちんとした食事のパターンを持つことも重要になります。3食、毎日ある程度きまった時間にとるようにする。不必要な間食をしないなどを決めておくと良いでしょう。

もし、過食や吐き癖など、食欲コントロールに問題がある場合はその問題も解決しなくてはなりません。

実際にやる前に覚えておいて頂きたいことがいくつかあります。

まずは、自分が本当に痩せる必要があるのかをBMIなどを参考に考えてください。 そして、バランスの良い食生活を心掛けるのも大切なことです。やはり健康的に痩せなくてはなりません。

ある研究では、ほとんどの人は体重減少が1カ月の間に体重の5% までであればリバウンドすることなく維持できると言われています。
例えば、体重60キロの人の場合、1カ月で3キロまで、57キロくらいが無理なくできる減量ということになります。
現実的なゴールを設定する際には、3か月で51~52キロくらいを目標にすると良いでしょう。

無理に体重を落とすと、脂肪と一緒に筋肉も落とすことになります。そして、一旦落ちて、リバウンドすると、付くのはほとんどが脂肪になります。これでは、悪循環です。5%、そして、運動の大切さがわかります。

そして、あなたが行う全ての健康的な変化は、あなたの身体に必ず利益をもたらすということを覚えておいてください。例え、思うように体重が減らなくてもです。まずは、健康的な変化をすることが大切です。それが習慣になり、いずれ体重減少が見られます。

よし、年末に向けて頑張るぞ!OMG,年末が一番難しそう、、、。





2012年10月28日日曜日

第16回 X-ray

本日は、X-rayの基本的な見方を書いてみる。多分、ご存じの方も多いでしょうが、一応順序だって覚えていた方が見落としが少ないと思うので見る順番を中心に書いてみます。

 まず、覚えて頂きたいのがALL ABC'sという語呂です。これがそのまま見る順番になりますので、いままで順序だって見ていなかった先生にはとても便利に使って頂けると思います。

ALL 
  • 必要なフィルムが全て揃っているか?
  • 患者の詳細が全て揃っているか?
  • あるべき骨は全て映っているか?
を確認します。必要なフィルムとは頭蓋には3方向、胸椎は2方向から撮るなどその個所によって軟方向から取るべきかというのが決まっています。それらが全て揃っているか、揃っていないとすればそれはなぜなのかを確認します。患者の詳細は、年齢、性別などのです。これらもとても重要なヒントになるので常に確認が必要になります。そして骨です。これは当たり前のように思いますが、陰影、子供の骨端など欠損しているかのように見えたり、二分脊柱のような奇形や手術で取り除いている場合もあるので確認が必要になります。


A=Alignment(一直線) 
ここでは、1つの骨膜が綺麗に揃っているか、それ以上の骨の並びが綺麗に揃っているかを確認します。例えば、骨折などは分かりやすいですが、その他にも、手関節の尺側変異や脊柱の並び、足のアーチの並びに変異がないかを確認します。

B
B= Bone Quality(骨の質)
これはそのまま、骨がどのように見えるのかを確認します。
骨質が薄くなっている、濃くなっているのか。骨の外側、内側の変化 などをみるようにします。
そして骨膜の関与などもここで確認します。

C
C=Cartilage(軟骨)
軟骨とはいっていますが、ここでは関節の間のスペースと各関節隙が左右対称かを確認します。

S
S=Soft Tissue(軟部組織)
ここでは骨以外の部位での変異を見つけるようにします。腫脹などをみてとることができると思います。

ここでおおよその病変をみつけたら、
1:病変の分析
2:病変はいくつ存在するか。
3:左右対称に存在すうか。
4:診断
この様な流れで診断まで行くことができると思います。

我々が通常見るのは、骨折、脱臼などが多いと思いますが、診断の段階では、レッドフラッグである癌の転移なども十分に考えなくてはなりません。その際は、患者の様々な情報、現病歴、実際の症状などといろいろ照らし合わせて考えていくと良いでしょう。

X-rayを見るのも、1つの技術です。したがって、練習が必要になります。最近では、いろいろな写真がネットにあるので是非ALL ABC'sを使って診断してみてください。





2012年10月25日木曜日

コラム: 大学の1年

本日は、オーストラリアの大学の流れについて書いて行きます。もしかしたら、今後留学したい人の参考になればと思います。

オーストラリアの場合は、2月末に新学期が始まります。1年2学期制です。1学期は12週と決まっています。そして、12週が終わると、1週間のテスト休みがあって1カ月のテスト期間になります。

一度、学期が始まるとそれは深い海に潜るかのごとく次々ある課題、、テストに備えて行かなければなりません。3週目に1つの課題、5週目に小テストが2つ、7週目に課題、10週目に実技小テスト、12週目に小テスト3つ。だいたいこの様な感じで進んでいきます。毎週カウントダウンで進み。気が付いたらもう12週という感じで終わってしまします。だいたいの教科が課題50%、テスト50%とかで配分されているのでどれも手を抜くわけにはいきません。

それらの課題は、1週目の各教科の時に分かるので、1週目にその計画を立てることから始まります。あとは、いかに決めた計画どおり進めていくかです。はっきりいって自分との勝負です。さぼったら後々倍になって返ってきます。

通常、どの科目も講義とチュートリアルで構成されています。チュートリアルとは、クラスを小グループに分けて、クラスでやった内容の問題をあらかじめ解いて行きみんなで答え合わせをするクラスのことを言います。解剖や生理などの重要な科目はこれにワークショップと行って実際に検体で確認したり、実験をしたりするクラスが加わります。したがって、解剖などは、講義3時間、チュートリアル2時間、ワークショップ2時間。1週間に7時間で編成されます。テストもペーパーテストと検体にピンをさしてあるフラッグレース、そして、口頭試問の3つ行わなくてはなりません。本当に隅々まで知らないと受かりません。そうです、ただの地獄です。でも、しっかり勉強するにはとても良い制度なので、日本も解剖だけにでも取り入れたら良いのではないでしょうか。

オーストラリアでは、講義に関しては先生が出席をとってはいけないんです。強制的に出席させてはいけないんです。そして、学生課にいつも生徒の数を数えられているので先生も手を抜くことができません。つまらない授業をすると生徒からクレームが来てすぐクビになってしまします。しかし、出席をとらないからラッキーというわけにはいかないんです。一回の授業でものすごい量進んでしまうのでなかなか休む人はいませんでした。

そして、各授業の間に休み時間というものもありません。なんとなく終わり、次のクラスに移動しなんとなく始まっていきます。そして、9時から5時とかの日は、みんなお腹が減ってしまうのでいろいろ食べながら授業を受けます。ひどい時は、まるで映画館のようです。おやつも日本では考えられないようなものばかり、生のニンジンやセロリをポリポリ食べたり、ツナやコーンの缶詰を食べたり。 鞄からフォークやナイフ、缶切りなどなど。でも、みんな意外とヘルシーなんです。

そして、テスト。テストは基本的には、課題、小テスト、テストの合計で50%以上とればパスできます。これだけ聞くと意外と簡単な様な気がするのですが、みんなガンガン落とします。だいたい1年で10名くらい留年したり、退学したりでいなくなってしまいます。でも、上の学年から同じくらいの人が降りてくるので結局クラスの人数は変わらないのですが。オーストラリアの大学は基本的には追試はありません。しかし、うちの学部はテストが難しいからか追試をやってくれました。僕も5年間で2年生の時に1科目だけ受けたことがありますが、これを落としたらまた来年かと思うと少し緊張したのを覚えています。

慣れるまでは大変ですが、慣れてしまえばあとは何とかなります。これから留学しようか迷っている人は、迷うことなく行ってみてください。それ以上のものを得ることができます。まぁ、多少辛いでしょうが、そこは日本人、気合いと根性あるのみです。押忍! 


2012年10月24日水曜日

第15回 Osteopathy in the Cranial Field

本日は、Osteopathy in the Cranial Fieldについて書いてみます。と言っても細かい手技とかについて書くのではなくもう少し全体的なことを書きます。

クラニアルはエネルギー医学なのか?

世の中には、エネルギーヒーリングというのもがあり、それらは、神秘的な生命力やスピリチュアルエネルギーを基にした治療法を言います。
中国語ではQi(Chi), 日本語ではKi,(気) 、インドではPrana(プラナ)と言われてるものがそれらにあたります。我々東洋人にはとてもなじみが深いものですね。

では、それらのエネルギーはオステオパシーではどのように考えられていたのかというと、いままで何人かのオステオパスがその治療法にエネルギーと言う言葉を用いています。
有名なのは、クラニオセイクラルのJohn UpledgerやバイオダイナミックのJames Jealousなどが挙げられると思います。したがって、アメリカ生まれのオステオパシーにもエネルギーという概念はあるのです。

しかしながら、オステオパシーとしての頭蓋治療はエネルギーではなく、あくまでも生理学的なメカニズムを前提としています。日本では、オステオパシーの頭蓋治療とクラニオセイクラルの区別がついていない人が多いですが、ここに大きな違いがあります。

そうはいっても、頭蓋治療は、数々あるオステオパシーの手技のなかでも最も論争の的になるテクニックであることに間違いはありません。特に、もともとエネルギーの概念を持っていない国では理解されずらいのかもしれません。オーストラリアでも頭蓋治療を肯定的に話す人はほとんどいませんでした。

Osteopathy in the Cranial Fieldは、William Garner Sutherland によって生み出されました。サザーランドは、解剖で頭蓋骨の縫合に動きがあるのではと疑問をもちその研究とともに発展させていきました。
 
では、サザーランドはどのように考えていたのでしょう。彼はこのように述べています;

「筋骨格システムの障害を治すのに、患者自身の内にある力よりパワフルで安全な力はない。」

このように、患者の自然治癒力を促進することに重きを置き、外力を加えることを良しとしていません。「内なる力」という言葉を使っているので彼自身はエネルギー的な考え方をしていたのではないでしょうか。それを最近、生理学的にして行っているのでしょう。このように創始者の思いまでは継承できないようです。

オステオパシーの創始者AT.Stillは自分の子供たちを西洋医学に頼ったことによりに亡くしていたので、一切の薬、手術を行うことを良しとしていませんでした。(現在、アメリカではそれらを行っているのでここでも創始者の思いは消えてしまっています。そして、彼は宗教家でもあったので、「内なる力」のような授業などでされていたのかもしれません。これはあくまでも私の推測です。

頭蓋治療が日本人に好まれるのは、このような感覚にもともと優れているからなのかもしれません。
受ける方の感覚も鋭いので受け入れ易いのでしょう。

この間も少し話題にしたEvidence Based Medicine。これを突き詰めていくと近い将来オステオパシーでも使われなくなってしまう手技があるのではないかと言われています。

私の個人的な見解は、臨床レベルでは、患者さんが納得するような結果が出ればそのメカニズムや理論は二の次でも良いと考えています。人間はそんなに簡単ではないと思っています。しかし、それゆえにきちんとした教育が必要になります。1日、2日のセミナーに出た程度でやられては困るのです。カイロと言う名を使ってボキボキするのが乱立した時のように、クラニアルがとらえられてしまってはいけません。

この様な素晴らしい手技は、自分のさじ加減でどうにでもなってしまうので、自分も患者さんも裏切らないように常に知識を高め、技術を高めていかなければいけないと思います。

サザーランドがこの手技を生みだしていく過程を考えながら 自分の頭、患者さんの頭を触ってみてください。内からの力を感じるはずです。


2012年10月22日月曜日

第14回 Modern Osteopathic Principles

本日は、This is the Osteopathy. オステオパシーの治療はこの原理、原則を基に行われています。 
英語なので訳すると微妙なニュアンスにずれがでるのですが、そんなことにはあまり気にせず各原則の背景にはどんなことが含まれているのかを自分なりに解釈してください。

1: The Body is a unit. 
身体は1つのユニットである。

2:Structure and function are reciprocally inter-related.
構造と機能は相互に関係性を持っている。

3:The body possesses self-regulatory mechanisms. 
身体は、自己調整機能を有する。

4:Rational treatment is based in the previous principles.
 合理的な治療は、1~3の原則に基づいている。

後に、いくつかの原則が適応されています。

5:The body has the inherent capacity to defend itself and repair itself.
身体は, 生まれつき身体を守り、治す能力を有している。

6:When normal adaptability is disrupted, or when environmental changes overcome the body's capacity for self-maintenance, disease may ensue.
身体の正常な適応能力が障害されたり、内部環境の変化により自然治癒能力を弱まらせた時、病気になる。

7:Movement of body fluids is essential to the maintenance of health.
体液の動きは、健康を維持するのに欠かせない。

8:The nervous system plays a crucial part in controlling the body.
神経系は、身体をコントロールするのにとても重要な役割をする。

9:There are somatic components of disease that are not only manifestations of disease but also are factors that contribute to maintenance of the disease state.
病気の構成要素には、単に病気の症状だけでなく、病気の状態を維持するのに原因となる要素がある。

今、読んでみると当たり前のような感じもすると思うのですが、100年以上前に自分の治療や、解剖の知識を通してこの様な原則に行きついたのはとても凄いとこだと思います。そして、AT.Stillのお弟子さんはこれらの原則を基に様々な手技を開発していったのです。

私は、皆さん各自の解釈を尊重したいので、ひとつひとつの説明はあえてしないでおきます。説明は考えを狭くしてしまう可能性があります。
大切なのは自分でどう解釈するかです。決して間違えはありません。想像力です。AT.Stillと会話してみてください。


2012年10月20日土曜日

コラム:モノの教え方&運動の仕方

本日は、モノの教え方と、子供の時期の運動の仕方を書いて行きます。

「人は自分が教わったようにしか、人にものを教えることができない」と言われている。

先日、子供を連れて近所の公園に行った時にたまたまやっていた少年野球を見て思いした言葉だ。この言葉が100%当たっているとは思っていない。でも、そんな出来事だった。

小学校の高学年の子供たちはグランドの奥の方。低学年の子供たちは手前にいる。野球少年たちはとても礼儀良く整列し、挨拶をしている。さすが日本だ!と感心して見ていた。オーストラリアではまずお目にかかれない光景だ。しかし、しばらくするとその思いは一転した。

「とれよ」、「どこみてる」、「おいっ」数人いるコーチ達から発せられた言葉だ。
ノックがはじまれば周りの子供たちはひたすら大きな声をだしている。声をだせばうまくなるのか。
低学年の子たちは、それでも必死にやっている。ひたむきだ。
うまくできない子には、まわりの大合唱とともにひたすらノックがつづく。
しまいには「考えろよっ」の一言。考えさせる教え方をしてないのに何を考えろと言うのだろう。
むしろ考えなくてはいけないのはあなただ。と思ってしまう。

私自身小さなころから、空手、相撲、柔道、ラグビーとそれこそこれ以上に厳しく指導されてきた。
したがって、オーストラリアに行く前の私には当たり前の光景であっただろう。 でも、このように感じたのは、オーストラリアで違う文化を経験したからだ。

オーストラリアでは、ある程度の年齢やレベルになるまで習いごとで怒られることなどまずない。特に低学年や始めたばかりのころは、いかにそのスポーツを楽しませるかに焦点が置かれる。打てない、とれない、決めれないなどは当たり前と考えられる。むしろ失敗しても褒められる。やっている方はとても気持ちよさそうだ。日本人の私には、もう少し厳しくしてくれよと思うことが多々あった。

では、オーストラリアのスポーツは弱いのだろうか。そんなことはない。水泳、サッカー、ラグビー、クリケット、テニス、自転車、トライアスロンなどなど世界レベルのスポーツであふれている。メジャーリーガー、NBAプレイヤーもいる。人口は日本の6分の1、2000万人。人種の違いだけが原因だろうか。

はじめに楽しさを植え付けられるので、子供たちはそのスポーツにどんどん興味がわいてくる。そして、自分はできると良い勘違いをする。したがって、失敗することを恐れない。これが日本との大きな違いのように感じる。サッカーで点が取れない。の原因をこう言う点にあるのではないだろうか。大きくなってこれを修正するのは難しい。相手はナチュラルで勘違いしいてるのだから。

最近、メジャーにいく日本人が多い。でも、活躍するのは少数だ。私が思うに、活躍している人は、小さいころから圧倒的に野球がうまく、ノックの嵐や怒られることが少ないうえに、自分で練習法や課題を見つけることができた人なのではないだろうか。そうすれば、小さい頃から自尊心を傷つけられることが少ない上に、いざアメリカの様なある程度自由なところに投げ出されても迷うことなく練習できる。後は、ナチュラル勘違いの程度が成功のカギを握っているように思う。

それともう一つ日本独自の文化がある。それは、1つの運動をひたすら続けるということだ。(もちろん、これは悪いことではない)。
オーストラリアの人たちは、去年はバレー、今年はラグビー、来年はテニス。夏は水泳、冬は自転車などいろいろな運動をする。

アメリカでもアメフトと野球のプロで活躍したボー・ジャクソンやディオン・サンダースという選手がいる。ウサイン・ボルトもマンチェスターユナイテッドの練習に参加した。そして、あのマイケル・ジョーダンもバスケをリタイアして野球にチャレンジした。ロジャー・フェデラーもサッカーをやっていた。

日本のプロ選手でそのようなことができる人がいるだろうか。実際には環境があればいただろう。ハンマー投げの室伏が野球をやっていたら。松井秀樹がテニスをやっていたら。などなどいろんな可能性があったでしょう。

高校生も、夏は野球、冬はサッカーなどいろいろやるようにしたらよいのではないでしょうか。そんななかでひとうのスポーツに特化したらそのスポーツに打ち込めばよい。でも、最低でも小学生の間はいろいろな刺激を身体に入れたほうがのちのち良いように思う。

しかし、これは文化的な背景によるものが大きいと思う。日本の人は一回始めたものを辞めると何となく負い目を感じる。部活ですら辞めると何かしらの挫折感を感じなくてはいけない。
オーストラリアの人は、無理に何かをやる事はない。嫌になったら辞め、やりたくなったらやる。
これにはどちらが良いとかではなく、むしろ、どちらも一長一短なような気がする。

学校や塾。いろいろなところでストレスを受けている子供たち。せめて習いごとぐらいはストレスフリーでも良いのではないだろうか。全員プロになるわけではないのだから。それに、プロになる子はほっといてもなる。私が育てたとか言うのはただのエゴでしかない。

戦前からの教育法がいまも残っている。これは、自分がそのように教わってきたからだ。我々の時は、人口が多く、個性を画一化するほうがいろいろ都合が良かったのだろう。しかし、これから人口は減っていくんだ何かを思い切ってできる子供たちを増やした方が良いように思う。



2012年10月19日金曜日

第13回 その他のテクニック

直接法、間接法について書いてきましたが、オステオパシーにはまだまだいろいろなテクニックがあります。今日は、それらを簡単に紹介します。

それらのテクニックは、直接法、間接法に簡単にわけることができません。使い方によって、その性質が直接法、間接法、或いはその両方へ変化するからです。

直接法や間接法を用いるもの
  • Osteopathy in the Cranial Field (頭蓋治療)
  • Myofascial Release (筋膜リリース)
  • Visceral Technique (内臓テクニック)
  • Still Technique 
バリアーコンセプトを用いないテクニック
  • Chapman Reflex
  • Lymphatic pump
  • Harmonic Technique 
Osteopathy in the Cranial Field 
これは直接法、間接法のどちらも用います。
頭蓋治療については書きたいことがたくさんあるので、また後日詳しく書きます。

Visceral Manipulation
治療の目的は、手技的に内臓の構造を治療することによって、正常な緊張、動き、神経と体液の流れを取り戻すことです。
内臓マニピュレーションは、特定の手技を用いるわけではなく、様々な手技を合わせて用います。
体性神経、副交感神経などの神経支配、そして、そのレベルを知る事により幅広く治療することができます。

Myofascial Technique
この手技は、ストレッチと反射的解放を複合的に用いることにより軟部組織と関節性の可動性の低下を改善することを目的としています。したがって、ゴールは、、緊張の緩和と機能的協調の獲得になります。
この手技は、直接法と間接法を相互的に用います。

Chapman's Reflexes
これは、手技ではありませんが、1920年にシステムと認識れせ、内臓障害の治療に用いられます。
内臓ー体性反射を刺激することを目的にしています。
ある緊張点は、内臓からの反応点として認識され治療に使われます。
でも、基本的には、治療そのものよりも診断法として使われる方が一般的です。

Lymph pumps
1923年にC.E.Millerにより、リズミカルに腋窩を押すテクニックをとおして描かれ、リンパポンプと名付けられました。
足をリズミカルに背屈することによりリンパ液をポンプする力を起こし循環をよくしたりするのが一例になります。
最近の研究により胸椎、腹をポンプするとリンパ細胞の循環が増すと方向されています。


Harmonic Technique
リズミカルな振幅運動により関節運動を促進し、リンパ液やその他の体液の循環を良くします。
イギリスでは、これに似たような手技がいろいろあります。
  • General osteopathic treatment (GOT)
  • General articulatory treatment 
  • Total body adjustment 
これらの手技も繰り返し身体をゆらすことによって関節の適切な動きを取り戻し、体液循環をよくします。


これまでいろいろなテクニックを紹介してきましたが、われわれは、これらの直接法、間接法のテクニックを合わせて治療します。したがって、100人のオステオパスがいれば100通りの治療法があると言われるのです。このことがオステオパシーって何?と聞かれた時にうまく説明するのに困ってしまうとこなんです。一言で言えるほど簡単ではないんです。

オステオパシーは原理が大切であり、その原理に基づいてする手技に意味があるのです。極端な話、AT.Stillが提唱した医療哲学を基に治療をすれば何をしてもオステオパシーなのです。逆にそれを知らなければ何をしていてもオステではありませ。

日本では、オステと言えば手技という感じで捉えられることが多いですが、その一つ一つの手技だけをピックアップして使っていても究極それはオステではありません。

中医学の中に鍼や灸があるのと同じです。その鍼や灸にもいろいろな方法があります。鍼も灸も見た目が分かりやすいので説明は簡単なのですが、中医には本来、陰陽五行論など、いろいろな原理、原則があります。その原理原則をおろそかにして手技だけを行っている。、今のオステはまさにそんな感じなのでしょう。(もちろんしっかりやられている方はたくさんいると思います)。

次回からそのオステオパシーの原理、原則を紹介していきます。楽しみにしていてください。



2012年10月17日水曜日

コラム: Crazy about Diet!

日本に帰ってきてはや7カ月。日本って面白いと感じたことを書いてみます。

それは何といっても「ダイエット」。

日本の国民のダイエットの興味の高さは世界でもトップレベルでしょう。でも、その意識の高さがゆえにおこっていることがあります。

まずはなんと言っても体重に関する会話がとても多いということです。

太った?どうしたの?痩せた?何して痩せたの?などなど。

皆さんもきっと記憶にあるはずです。最近では、天気の話しより体型に関する話しのほうが多いのではというくらい。まぁ、そのくらい意識が高いともいえるのですが。これと同じように年齢の話しが多いのも日本の特徴です。
私がオーストラリアにいた6年間で体重、年齢が会話になったのなんて本当に数えるくらい。まぁ、年齢の話は、アジア系の人たちが増えると自然と増えるので、文化的な背景も関係するのでしょう。

まるでWhat's up?感覚という感じですね。このようにしてお互い確認しあうのも日本人の良いところとしておきます。

この挨拶がわりの体型の話しはまだ許せるとして、全くもって許せないのが最近テレビなどでみるダイエット関連の報道の仕方。広告だからしょうがないのもわかる。けど、これは本当に最悪。

つい先日、テレビを見ているとある有名人がヨガについて話していた。妊娠中に14kg増えて、出産後そのヨガをやったら妊娠中より15kg痩せた。しかもくびれができたと自慢顔。

このタレントは広告で使われているのだから特に何とも思わないが、この報道の仕方はいかがなものであろう。これだけではない。ガリガリの女の人がでてきてピラティスは痩せる。今度は整形だらけのおばちゃんが出てきて、こう動けば痩せると言う。こっちがあなたを心配しちゃうよ。

本当にヨガやピラティスを愛していてその良さを伝えたいのであればこういう広告の仕方はしないでしょう。
それらの運動をして筋肉量が増すことにより基礎代謝があがるからその結果として体重減少がみられるだろう。とか、ストレスを減らすことにより交感神経の過緊張がおさえられ、今までその代わりに行っていた過食を減らすことができるので痩せる。とかならまだ話しはわかる。

ピラティスは、ケガからの回復を目的に作られたわけであって、痩せるためにつくわれたわけではない。

さらにひどいのは、痩せる食べ物。スープ。サプリ。ジュースなどなど。流行ってはすたり、また新しいのを作り出す。それを健康の専門家までが勧めている。痩せるための何か薬でも入っているの?

痩せるということがどういうことかわからなければいけない。

出るほうより入るほうが多ければ体重は増えるのである。極端にいえば、何も入れなければ体重は落ちるのだ。ただ、それだけだ。

挙げていけばきりがない。子供に関するこは特に頭にくる。子供のダイエット。運動不足。これで日本の未来は大丈夫なのか。

骨密度。気付いた時にはもう遅い。一番からだが出来てくるときに栄養を制限するのはとても危険だ。

ちなみに、身体が大きなイメージのあるオーストラリア人。平均寿命はなんと82歳で世界で4位。日本の84歳に比べるともう少しですが、これから逆転することは十分にありえると思います。さらに子供の学力でも日本はオーストラリアに抜かれてしまっている科目がある。オーストラリアの子供たちは勉強もしている。これに加え、しっかりとした運動、そして、成人してからの運動、あとは本質を見る目を持っていることによるのではないかと考える。


ダイエット。ヨガ。ピラティス。子供の健康。健康食品。どれにも本質がある。
試す前に本質を知ることだ。いつまでも騙されているわけにはいけない。
子供の親は子供の未来もかかっている。学校、塾などを必死に調べるように、栄養についてもしらなくてはいけない。

ブームを作りたがる日本の文化。その中にいるわれわれ日本人。本質を見る時代が来ているように思う。オーストラリアにも日本ほどではないがブームをつくる報道はある。でも、同時に正確な報道もされる。日本には正確な報道、情報があまりにも不足している。

っと、熱く語ってしまいましたが、日本にいるとわからない不思議なことはいろいろあります。また、何か気が付いたら書かせてもらいます。

よしっ、私も今日からダイエットだ!



2012年10月16日火曜日

第12回 Balanced Ligamentous Tension

本日はBlanced Ligamentous Tension(BLT)を紹介します。

この手技は、1940年代初頭に、頭蓋治療の創始者として有名なWilliam Sutherland DOによりBalanced Membranous Tensionとともに提唱されました。
サザーランドDOはこれらの手技を、彼が提唱する頭蓋治療のコンセプトに関連して発展させました。その後、Anne WalesとPaul Kimberleyによりさらに発展されました。

昨日のFunctional Techniqueは、骨の感触に集中するように言いましたが、このBLTは靭帯・関節メカニズムにその焦点を当てます。

靭帯・関節メカニズムとは、
  • 正常に機能している関節は、それぞれの靭帯に適正に配分された緊張により支えられている。
  • 各靭帯間に適切に配分された緊張は、怪我や障害により変化する。
したがって、BLTは怪我などによって一旦失われた靭帯の緊張の不均衡を改善し、適切な緊張を取り戻すことを目的に行います。

実は、このBLT昨日のFunctional Techniqueとやり方はほとんど同じです。

まずは、Screeningして、おおよその悪いところを探します。そして、Scanningすることにより特定の部位まで落とし込みます。そして、最後は、その障害部位が最も動きやすい方向を探します。
その方向を探すのに使うのが、3つの回旋運動、そして3つの直線運動です。

例)上部胸椎
  1. Screen: 10Step Screenなど上部胸椎がおかしい
  2. Scan: 上部胸椎のなかでも特にT2の動きがおかしい
  3. Segmental definition: T2の6方向の動きを確認。
このようなステップのイメージをもってやってみてください。T2の場合は頭をLeverとして使って動きを確認してみてください。昨日も言ったように、その動きはとても、とても小さいです。視覚では確認できないような小さな動きで確認してください。

BLTとFunctional Techniqueの違い
Functional Techniqueは、動きについていき、さらに緊張を緩めるのに呼吸を用いたのに対し、このBLTは、その動きについていかず、ホールドしたままにします。そして、必ずしも呼吸を使う必要はありません。

BLTも身体のほとんどの部位に用いることができるとても便利な手技です。全く力もいらないので誰にでも使ってもらえると思います。
ただ、かなりの触診力を必要とするので手技とともに触診の練習もしておいてください。大変だと思いますが、指先や手のひらが厚くなってしまう行為はできるだけ避けれるといいですね。





2012年10月15日月曜日

第11回 Functional technique

本日はFunctional Technique(indirect) を紹介いたします。Functionalという単語はIndirect technique全体をさす場合もあるのですが、ここでのFunctionalはFunctionalという手技をさしています。

Functional Technique は1950年代初頭に複数のアメリカのオステオパスのグループにより発展しました。そして、William Johnston と Harold Hooverはその発展にとても強い影響を与えたことにより賞賛されています。

どういう治療かというと、問題のある関節はその関節が最も緩むところに位置され、その位置から関節が緩みたい方向へ導くようにします。

まずは、通常と同じよう10ステップスクリーンなどによりスクリーンして、さらに部位を特定するためにスキャンします。ここまでで治療すべき部位が明確になっています。
そして、ここからが過程がFunctional Techniqeuの特徴であり、とても重要になります。6方向(3方向の回旋運動と3方向の直線的な動き)を確認して治療する方向をきめるのです。

回旋方向(回旋と言っていますが、関節の運動軸を中心とした動きを確認します。)
  • 関節軸に対する回旋
  • 屈曲・伸展
  • 側屈
直線運動
  • 頭方向、足の方向
  • 右、左
  • 前、後ろ
最後に呼吸。呼気、吸気のどちらでやわらかくなるかを確認します。

 このテクニックも書くと???となるのですが、要は関節の動く方向の動きを全部試すということです。でも、慣れるまではかなり難しいかと思います。というのも、その動きは限りなく小さいからです。動きと言っていますが、関節を曲げたり、伸ばしたりするわけではありません。その動きは借りなく小さく、目視できないレベルです。できるだけ集中してその動きを感じてください。集中あるのみです。

練習し始めに勘違いしがちなのですが、筋肉の硬さを感じようとしてしまうことです。これではいつまでもなにが起こっているのか良く分かりません。骨の感触、動きを感じるようにしてください。

慣れるまでは難しいFunctional Techniqueですが、身体のほとんどの部位の治療に用いることができるとても優れた治療法です。練習してみてください。

でも、やっぱりわかりずらいですね。


2012年10月12日金曜日

第10回 Counter Strain

今日は、カウンターストレインです。
この手技は1955年にLawrence Jones DOによって作られました。したがって、ジョーンズテクニックとも呼ばれます。

これは、"Spontaneous Release by Positioning" Spontaneous=自発的な、Release=解放、Positioning=ポジション。つまり、身体をあるポジションにもってくことによって起こる自発的な解放を意味します。

3つの重要な特徴があります。
  1. 身体の前後にある圧痛点を探し、触診する。この圧痛点は、トリガーポイント、チャップマンの反射点や経穴と似ているところがあります。
  2. 患者は、その圧痛が最も楽になる体位に位置されます。
  3. 術者は、患者をニュートラポジションに戻すのをサポートしなければいけない。
方法
  1. 圧痛点を探します。
  2. 圧痛がどのくらい強いのかのベースラインを患者と確認します。
  3. その圧痛が最もらくになるポジションを探します。
  4. そのポジションで90秒、或いは触診している感覚が変わるまで保持します。
  5. 患者をゆっくりニュートラルのポジションに戻します。
  6.  圧痛点を再テストします。
実際に行うのはとても簡単です。ただ、患者さんをニュートラルに戻すときに力が入ってしますとそれまで施術が無意味になってしまいます。したがって、最後まで気を抜かず患者さんが脱力した状態をキープできるようにサポートしてあげてください。これが成功のカギを握っています。

圧痛点
Jonesの圧痛点は全部で200以上あります。これはトリガーポイント、チャップマンの反射点、そして経穴などとも似ていることろがあります。不思議です。きっと参考にしたのかも知れません。

身体前面の圧痛点はFlexed dysfunction(屈曲障害)に関係していることが多く、屈曲位で施術されることが多いのに対し、後面の圧痛点はExtended dysfunction(伸展障害)が多くみられ伸展にで施術されることが多いです。
身体の外側に近いところにある圧痛点に関しては、それらに側屈や回旋を加えて施術すると良いでしょう。

基本的には左右差から探していくと分かり易いのではないかと思います。

1回の治療では、5、6個の圧痛点が用いられます。最も硬く、圧痛の強いところから施術してみてください。それだけで、多くのマイナーな圧痛点は消えてしまいます。

この手技は、行うのが簡単な分オーバートリートメントになりやすいです。そうすると逆にバランスを崩してしまうので、刺激量には気を付けて行ってください。もちろん、他のテクニックとの併用も可能です。

では、痛いところを見つけて、痛くないところに身体を動かし、90秒ホールド、しっかり支えて元に戻す。やってみてください。


2012年10月11日木曜日

第9回 Indirect Techniqeu - 間接法

本日は間接法の各テクニックを説明する前に、間接法自体の説明をしたいと思います。

間接法にも様々な手技があるのですが、どれにでも共通する項目があります。
  • キーファクターとしては、手技の動きはモーションバリアーから離れます。
  • 障害されている部位は、バランスが取れるところか、テンションが低くなるところに持っていくようにします。
  • 動きの質に焦点をあてます。
  • 動きの始まりに焦点をあてます。
直接法が、Restrictiveバリアー(可動域が狭くなっているなかでの最大域)を中心にして考えられるのに対し、間接法は動きの質に集中しています。

これだけでは何のことかまずわからないと思います。

間接法を理解するには、ease and bindコンセプトを理解する必要があります。要は、動きやすい方向と動きがなくなる方向があるということです。関節でも、皮膚でも行きたい方向、そして、結びつきが強くなる動きというのがあります。これについては、各テクニックを説明する際に詳しく説明していきます。

効果のメカニズム
  • 神経学的仮定に基づくと、障害が正常ではない求心性インパルスを起こし、その結果、異常な遠心性シグナルが起こる。
  • 求心性シグナルを正常にすれば、機能は正常にもどると考えられています。
  •  したがって、間接法は求心性の異常興奮を減らす手技と考えられます。
適応症
  • 手技の性質からもとても幅広い疾患に用いることができます。
  • 寝た切りの患者や中枢、末梢神経障害に使われることもあります。
歴史
  •  Drスティルは、彼の書物のなかで結合組織のシステムを協調していました。彼は、直接法とともに間接法も使っていたと考えられています。
  • しかし、主な発展は1940年代に入ってからになります。
    • William SutherlandによりCranial osteopathy とBalance Ligamentous Tension
    • Hoover&JohnsonによりFunctional Technique
    • JonesによりCounter Strain
    • Schiowitz&DiGiovannaによりFacilitated Positional Release
  • これらの手技が一般的に間接法と言われています。

日本では、指圧、柔整や整体などいろいろな伝統医療があったためなのか、直接法はいまいちキャッチーではなかったのでしょう、日本でオステオパシーというと間接法のイメージが強いはずです。あとは、日本の先生の職人気質、日本人特有のミステリアスなものへの興味などからも間接法を好んで使う先生が多いのでしょうか。

Cranial Osteopathyの先生は別として、オーストラリアでは間接法だけで治療している先生は見たことがありません。直接法の補助的に使っている先生がほとんどでした。(彼らは簡単に痛さ、硬さが取れた方がいいじゃないかと考えています。)治療の順序も直接法から間接法がセオリーになります。実際、直接法と併用した方が効果が持続するようです。

でも、はっきり言って最後は好みの問題なのではないでしょうか。間接法だけで治療しても全然問題ないと思います。ただ、時間がかかるので補助的になってしまっているだけかもしれません。

皆さんもいろいろ試して好みの組み合わせをみつけてください。オリジナルができるかもしれません。

では、明日からは各手技を説明していきます。


2012年10月10日水曜日

コラム:オーストラリアのオステオ事情

間接法の説明に行く前に小休止ということで今日は、オーストラリアのオステオ事情を書いてみます。

現在、オーストラリアには3つの大学にオステオのコースがあります。そのうちVictoria Uni とRIMTはビクトリア州に、Southern Cross Uniはニューサウスウェールズ州にあります。私が留学した2006年にWestern Sydney Uniのコースはなくなってしまいました。どの大学も3年の学士、2年の修士を合わせた5年のコースになっています。ビクトリアのコースが一番大変だという噂です(多分、どこの学校の人も自分のところが一番大変と言っているでしょう)。

3年が終わると、マッサージの国家資格がもらえるので、みんなマッサージ師として働き始めます(うちの大学だけかもしれませんが)。時給はなんと30ドルとか40ドルです。こう聞くととても高く感じますが、オーストラリアの最低賃金は15ドルくらいなので、マックでも、サブウェイでも、スーパーマーケットでも20ドルとるくらいはもらっています。まぁ、その分物価がとても高いですが。向こうの大学生はとってもお金もちです。かわいそうなおっさん留学生にいつもおごってくれました。

少し話しがずれましたが、5年のコースが終わるとナショナルボードに登録してはれてオステオパスとなります。1年目は、だいたい2つ、3つの院を掛け持ちで働き始めます。月曜はAクリニック、火曜日はBクリニックというようにある程度の患者さんが付くまではあちこち動きまわります。このシステムは実はとても良くできていて、それぞれ特徴のある院を選ぶことによっていろいろな手技を学ぶことができるのです。

このようにまじめに働き始めるのはクラスの60%くらい。あとはというと、5年も大変なことしたのにすぐに働けるわけがないと言って、世界中を旅したり、全く違う仕事をしたり、中には医学部に進学したりする人もいます。まぁ、なにするのも全く急がないのがオージーの良いところです。

学校の配置の関係からか、オーストラリアのオステオパスのほとんどがビクトリア州とニューサウスウェールズ州に集まっています。私のクラスメートもメルボルンは競争が激しいから他の州に行くといっている人がいました。でも、日本人の私からするとほとんど競争がないように感じるくらいです。
でも、イギリスではすでにオステオパスが余ってしまっているようで、その人たちがオーストラリア、ニュージーランドで働けるように法改正されたようなので、さらに競争は激しくなるでしょう。

本当にさまざまなスタイルのオステオパスがいるのも特徴です。日本の画一化されたオステオパシーからは想像できないと思います。筋骨格の先生、クリニカルピラティすといってオステ+ピラティスも最近流行っています。その他、クラニアルの先生、バイオダイナミックの先生。スポーツに特化した先生。スポーツトレーナー、パーソナルトレーナー、ヒッピーなどなど。様々な分野に進出して新しいオステオパシーが生まれています。日本のオステオパシーがいかに狭い範囲でやっているのかということが分かると思います。

オーストラリアには、オステオパシーの他に、フィジオセラピーという治療法もとても盛んに行われています。これは日本の理学療法士と言う感じなのでしょうか。もっと広い範囲の治療をおこなっているような気もしますが。2年前から6年のコースになり卒業するとドクターとして扱われます。最近、オステオパスとフィジオセラピストが一緒にに働く機会が増えてきているので治療法もボーダーレスになってきているように感じます。オステオパシーとこのフィジオセラピーがオーストラリアの人が怪我したときのファーストチョイスになっています。

オステオパシーは、これが正解というような治療法はないし、先生の考えがとても強く反映される治療法なので、個性の主張が大好きなオーストラリア人にはとても向いている治療法なのかもしれません。


2012年10月9日火曜日

第8回 High-Velocity Low-Amplitude Technique

今日はこれぞオステオパシー!High-Velocity Low-Amplitude Techniqueを紹介し
ます。
Velocity=早い、Amplitude=振幅。つまり、とても速く、短い振幅のテクニックということになります。Drスティルが「Lightening Bonesetter」と言われていたことからも分かるように、この手技からオステオパシーは始まりました。簡単にいうと関節をポキッと鳴らすテクニックです。

日本では、いろんな情報の錯綜により関節を鳴らす手技は敬遠されてきていますが、オーストラリア、特にビクトリア大学ではHVLAの授業数がもっとも多く、これを中心に治療を組み立てる先生がとても多いです。 

HVLAは、
  • High Velocity Thrust(HVT)
  • Mobilisation with impulse(MWI)
  • Thrust Technique
  • Manipulation
  • Adjustment 
など、いろいろな言われ方をします。この中で、Thrust, Manipulation, Adjustは比較的良く聞くと思います。

適応症
  • 関節運動の低下
  • 関節運動の質の変化
  • 関節痛
  • 関節周囲の筋肉の硬さ
  • 関節障害にともなう交感神経過敏反応
治療メカニズム
  • キャビテーション(ポキッとなる事)
  • ストレッチ
  • 痛みの抑制
  • 筋緊張緩和反射
  • 位置覚の向上
  • プラシーボ
HLVAは,その目覚ましいポキッという音がでるので強いプラシーボ効果をもつとされています。
しかし、メカニズムにきちんとプラシーボを入れるあたりが、日本と違うところなんです。


HVLAの効果の証明
  • HVLAはRandom Controlled Trial により腰痛に効果があることが証明されています。
  • 数々の研究論文が関節可動域の向上、痛みの低下、そして、位置覚の向上がみられることを証明しています。
禁忌
  • 骨、靭帯、動脈、神経、椎間板などに損傷が起こりやすい状態のときはいかなる症状でも注意が必要となります。
  • 患者さんがHVLAをやると楽になるという思いから、手技への依存が強まった場合は禁忌とします。
HVLAと脳卒中
  • 上部頚椎へのHVLAが椎骨動脈を傷つけ脳卒中を起こすことがあると、まことしやかに信じられていますが、統計では、1:40,000~10,000,000くらいの確率であるかもと言われています。かなり少ない確率とはいえるのですが、全くないともいえないというのがいまのところの認識です。
  • しかし、、いくつかの論文では、HVLAと脳卒中の関係性を示す証拠がないと言っています。
HVLAはとても即効性があり素晴らしいテクニックなのですが、日本の場合、教育制度不備や教える方の知識不足、そして、誤った情報などによりあまりよいイメージがないことをとても寂しく思います。

オステオパスは、頭蓋以外の身体のほとんどの関節をadjustすることができます。しかし、この手技をやみくもに使うのではなく、施術前に患者さんに、その効果、メカニズム、副作用、そして、代替の手技があることを説明することが義務付けられています。こうしたステップを経てはじめてお互いがきちんと守られた状態で施術することができるのです。これは他の手技にも通じることですが、その手技をやる目的、効果、メカニズム、そして、その副作用は必要最低限説明できるようにしておくと良いかと思います。

今回で、ひとまず直接法の簡単な説明は終わります。次回からは間接法を説明していきますので楽しみにしておいてください。



2012年10月8日月曜日

第7回 Muscle Energy Technique

本日は、マッスルエナジーテクニック。略してMETを紹介します。

METとは、術者の用いる反対方向の力に対し、患者の筋肉を適切にコントロールされた方向へ収縮させることにより関節可動域を広げる手技です。しかし、METは単に手技というだけではなく、評価方法としても使われています。

METは、Fred Mitchell Srによって開発され、その息子Fred Mitchell Jrによってシステム化されました。初めてオステオパシーの手技として紹介されたのは1919年のことになります。あと少しで100周年です。

Mitchellに最初に骨盤に対する筋力を用いた矯正法を紹介しました。そして、この方法がどんどん広がり頭蓋骨以外のすべての関節に用いられていくようになりました。

METの適応症
  • 収縮した筋を緩める。
  • 動きの低下した関節の関節可動域をひろげる。
  • 生理学的に筋力の低下した筋の筋力の促進。
  • 局所の浮腫(むくみ)やうっ血の低下。
治療効果のメカニズム
  •  筋筋膜ストレッチ
  • 伸長ストレッチ
  • 体液循環の促進
  • 痛みの低下
  • 位置覚と運動覚の向上
METは筋肉の収縮のさせかたにより3つに分類されます。
  1. Post-isometric relaxation MET
  2. Reciprocal inhibition MET
  3. Isotonic contraction to increase tone
 筋収縮に関して、ここで確認しておきます。
  • Isometric contraction: 筋肉の長さは同じです。
  • Isotonic(concentric) contraction: 筋肉は短くなります。
  • Isolytic(eccentric) contraction: 筋肉は長くなります。
Post-isometric relaxation MET
  •  一般的に使われているMETのほとんどがこの手技になります。
  •  他動運動で関節可動域が低下した時に用いられます。
  • 関節をバリアーまで 持って行き、バリアーから離れるように筋肉を収縮させ、3~5秒。その後、完全に緊張を緩め、新しいバリアーまで持って行く。これを3~5回繰り返す。
 Reciprocal Inhibition MET
  • これは、硬くなった筋肉の拮抗筋を緊張させることによりその筋肉の緊張を緩和する手技になります。
 Isolytic contraction
  • これは、意図的に術者の抵抗力を強くし、患者の筋力を上回るようにし、筋緊張とともにストレッチを加えます。
  • 私は、大きな筋肉や強い筋肉。そして、Post-isometrcを3~4回繰り返したあと最後に用いることがあります。
METは、解剖、運動学などを理解していればかなり幅広く使える手技だと思います。 ただ、筋緊張の保持する時間、患者さんが完全にリラックスすることができるかどうかなが治療効果を左右してします。やってみてうまく筋肉の緩和がみられないときは、まずバリアーをしっかり確認、5秒間の緊張の保持、そして、患者の完全リラックスに意識をおいてやってみるとよいと思います。術者が用いる抵抗力もいろいろな考え方があるのでいろいろ自分で試してやってみてください。





2012年10月7日日曜日

第6回 Articulation Technique

今日は雨の日曜日鈍った身体にちょうどよいアーティキュレーション(以降Artic)について書いてみます。これも昨日のSoft Tissueと同じ直接法です。

Aritcは関節可動域の低下した関節へ他動運動を繰り返すことにより、関節可動域の改善を計るというとてもシンプルなテクニックです。関節運動を繰り返す際、毎回バリアー(限界可動域)を感じるようにし、そのバリアーがきちんと広がっていることを確認します。

適応症
  • 関節痛
治療のメカニズム
  • 痛覚低下
  • 体液循環の促進(関節内、関節外)
  • 関節軟骨への栄養の増加
  • 関節周囲の結合組織のストレッチ
  • 交感神経への影響


このテクニックの特徴はLever(てこ)を用いることにより大きな強い力を用いることなく行えるところにあります。
そして、そのLeverにはLong LeverとShort Leverの2種類あります。
  • Long Leverは、てこの支点から離れたところから力を加えて行います。
  • Short Leverは、てこの支点に近いところへ力を加えて行います。
例:第5、第6肋間筋の治療
  • Long Leverの場合
片方の手は、患者第6肋骨を保持し、反対の手で患者上肢を把握、動かすことで目的部位にストレッチを加える。 これは支点から遠いいところから力を加えるのでLong Leverと成ります。
  • Short Leverの場合
片手で患者第6肋骨、反対の手で患者第5肋骨を保持。両手の間隔を開くことによって目的部位にストレッチを加える。これは支点に近いのでShort Leverになります。

Long Lever, Short Lever別にどちらをつかっても構いません、一緒に使ってもOKです。使いやすい方、力の入りやすい方を選んで行ってみてください。

このArticを応用して生み出された手技にイギリスで発展した下記の3つのテクニックがあります。
  • General Articulatory Technique
  • General Osteopathic Treatment 
  • Harmonic Technique
これらのテクニックについては後日ふれていきますが、私はこの中のGenetal Osteopathic TreatmentとHarmonic Techniqueを組み合わせた手技を基本に治療を行っています。利点としては、診断と治療が同時に行えるという点があります。そして、METも組み込むことができるのでほとんどの関節をこの方法で診断、治療しています。

文にすると難しく感じるでしょうが、Articを行うのはとても簡単です。患者さんの関節可動域を検査している時に、動きの悪い方向があったらその可動域の改善がみられるまで繰り返しその方向に動かす!だけです。
検査もそうですが、必ず健側から行い、基準をつくり、その基準を基に患側のバリアーを探し、関節運動を他動的に繰り返すことによって、徐々にそのバリアーを広げるようにする。というのが一連の流れです。

行うのはとてもシンプルなArticですが、バリアーに集中してしっかり行ってみてください。これだけで大きな効果が得られることもあるんです。


2012年10月6日土曜日

第5回 Soft Tissue Technique

本日は、ソフトティシューテクニックを紹介します。ソフトティシューとは、軟部組織を意味します。これは直接法のなかでも基本中の基本と言われる手技です。整骨院の治療にもとても活用しやすいのが特徴です。今日からしばらく直接法の簡単な説明をしていきます。お付き合いください。

Soft Tissue Technique
適応症
  • 筋緊張緩和
  • 筋膜のストレッチ
  • 治療部位の筋筋膜への循環の促進
  • 治療部位の組織の栄養の促進
  • 異常な反射の正常化
  • 局所の免疫反応の促進
禁忌症
  • 急性炎症
  • 治療部位の肌の病変
  •  骨粗相症
  • 骨折
  • 血腫
  • 疼痛、または、過敏すぎる周囲組織の反応や組織の拒否反応
 治療原則
  • 治癒過程の促進
  • 短くなった組織のストレッチ
  • 筋緊張緩和
  • 関節液、組織液などの循環の促進
  • 痛みの低下
 手技
  • クロスファイバーテクニック
オステオパスに最も良く使われているテクニック。 ゆっくり、リズミカルに筋繊維を横断するようにマッサージします。
局所の循環の増加。筋のストレッチを目的としています。
  • ロングチューディナルテクニック
 筋繊維の走行に沿ってマッサージしていきます。
 局所の循環の増加。筋のストレッチを目的としています。
  • インヒビション
圧痛部位を探し、そこにゆっくり継続した圧を加えます。患者に深呼吸を数回してもらっても良いです。押している部位に変化がでるまで続けます。
硬結部のストレッチ。局所の循環の増進を目的としています。
  • マイオフェイシャルリリース(直接法)
動きの低下している方向へ筋膜のストレッチを行います。
 結合組織のストレッチ。局所循環の促進を目的としています。
  • フリクション
早くて短い動きで。繊維の走行に対して横断するように動かします。じばじば痛いことがあります。
主に、炎症がある腱、靭帯に用います。
炎症を抑え、治癒の促進を目的としています。
  • エフュラージ
ゆっくりとして、リズミカルなさする様な動き。通常、オイルを用いて使われる。
静脈やリンパのウっ滞や、心配の緩和などに用いられます。
 体液循環の促進。患者リラックスを目的にしています。
  • ストレッチ
筋の起始、停止を遠ざけゆっくり伸長を加える。ハムストリングくらい大きい筋肉では30秒を理想的とするが、それより小さな筋肉では短くても構わない。
硬く、収縮した組織、結合組織のストレッチを目的に行われます。

名前はちょっとわかりずらいですが、内容はどれも簡単です。多分、みなさんもすでに日常の診療で使っているものもあると思います。
そして、エッ、これしかないの?と思った方。はい、これしかありません。日本の指圧、柔整の後療法などの方法を細かく書いたら軽くこれの何倍もあるでしょうからその凄さがかわります。


2012年10月5日金曜日

第4回 A.T.Still's Technique

オステオパシーの創始者アンドリュー・テイラー・スティルについて書いてみます。今日は良く目にするオステオパシーを作ったきっかけではなく、その技術に関する彼の考え方に焦点を当てて書いてみます。
 

Dr. スティルはオステオパシーの創始者として名前は知られているが、彼の行っていた手技については分からないことが多い。というのも、彼が行っていた筋骨格系の治療法のほとんどは20世紀の間に失われてしまっているからです。でも、後に、Richard Van Buskirk によって再発見され広められStill's Techniqueという名で残っています。

Dr.スティルは、カークスビルの道端で治療をしていました。それにもかかわらず、彼は筋骨格系の治療のマスターと考えられていました。このことは、Dr. スティルのところに多くの患者さんや生徒が集まったこと、そして、彼らの証言からも証明されています。

彼は"Lightning bonesetter"と言われていました。これは、彼が使っていた手技のスピードがとても速かったからです。治療の全てを早い手技だけでやっていたわけではないようですが、これらのことから彼は、主にHVLA(短く速い動きにより関節をポキッと鳴らす手技)を使っていたと考えられています。。しかし、Van Buskirk は、スティルは関節を鳴らすことが必ずしも良い結果を出すわけではないと言っていたと後述しています。

では、なぜ彼の手技は失われてしまったのか?秘伝の手技なので隠したかったのだろうか?
実はそうではないのです。主な理由としては下記の3つが挙げられます。
  1. Dr.スティルは、学校では解剖とオステオパシーの原理を教え、テクニックは教えなかった。
  2. Dr スティルは、これらの知識から、生徒がそれにあった手技を自ら生み出すと信じていた。
  3. Dr スティルは、一つの手技だけが最高であるとは考えていなかった。
彼は、多くの治療を通して最高の手技などないことを知り、授業のなかで解剖と原理を通してヒントを与え続け、自分がそうしたように生徒達が独自の手技を生み出すと強く信じていたのです。

そして、彼はこのようにその時の心境を語っている。
”私は、どこを押したり、引いたり、さすったりといったことを生徒にアドバイスをすることはない。こうすることにより、あなた(生徒)は考え始め探究者となり、何がノーマルで何がアブノーマルなかのを知ることができる。これを包括的に理解できたとき、あなた(生徒)は何をすれば良いかを知り、自分がしていることの結果を予想することができるのだ”。

さらにDr スティルは、自分の生徒とオステオパシーに興味を持っている人に向けてこのように言っている。
”世の中に骨の位置を動かす技術はたくさんある、そして、不自然な関節の位置を元に戻す方法もたくさんある。したがって、オステオパシーの術者は、骨の動きを整えるのに一つの手技やマニピュレーションに固執することはない。”

このような考えもあり、20年もあとに発明されたカイロにくらべ発展は大きく遅れをとった。しかし、彼の死後、当時の生徒達によりたくさんの手技が生み出されるのです。Dr スティルはこの事を予想していたのでしょう。
  • William Sutherland: Osteopathy in the Cranial Field)
  • Lawrence Jones : Counter Strain 
  • Gordon Zinc : Fascial techniques, common compensatory pattern
  • Hoover & William Johnson : Functional Technique
  • Fred Mitchell : Muscle Energy Technique
これらは、ほんの一例に過ぎないです。そして、Dr スティルの原理のもと、その手技はこの瞬間も生まれ続けています。

同じように生徒の一人だったAlan Becker(D Beckerの息子、Rolling Beckerの兄弟)は後のインタビューでいかなる手技も患者さんやその問題に合うように適応してく。そして、直接法、間接法を明確に分ける必要などないとも言っています。

つまり、これがオステオパシーなのです。 彼の原理のもと探究することがオステオパシーなのです。

 1つ、1つの手技がオステオパシーなのではないのです。そんなのに最高のものがないことは1900年代初頭の段階でわかっているのです。

オステオパシーは簡単でもあり、とても難しくもあるのです。それを決めるのは自分なのです。

でも、AT.Stillはもっとシンプルに考えていたのではないかなとも思っています。

最後は、紹介というよりも持論を展開してしまいました。





2012年10月4日木曜日

第3回 Palpation(触診)

今回は触診について書いてみます。オステオパシーでは、触診を一つ技術、あるいはそれ以上と考え、手技と同じように厳しく指導されます。したがって、学校に入ってすぐに勉強が始まり1年かけてみっちり行われます。当然テストもあります。しかし、年配の先生方は、口をそろえて今は甘いと言います。確かに、昔の人は本のページの下に髪の毛を置き、18ページ重ねた上からでもどこに髪の毛があるか分かったという話があります。

今日は、その練習方法の例を書いて行きます。
 骨
  1. 頚切痕
  2. 胸鎖関節
  3. 鎖骨
  4. 烏口突起
  5. 肩鎖関節
  6. 上腕骨大結節
  7. 結節間溝
  8. 上腕骨小結節
  9. 三角筋結節
  10. 上腕骨体
  11. 肩甲棘
  12. 棘上窩
  13. 棘下窩
  14. 肩甲骨上角
  15. 肩甲骨内縁
  16. 肩甲骨下角
  17.  肩甲骨外縁
筋肉
  1. 棘上筋
  2. 棘下筋
  3. 肩甲下筋
  4. 小円筋
腋窩
  1. 前:大胸筋(小胸筋)
  2. 内:前鋸筋(肋骨2-6)
  3. 後:広背筋、大円筋
上腕の筋
  1. 三角筋
  2. 上腕筋
  3. 烏口腕筋
  4. 上腕三頭筋
後面の筋
  1. 僧帽筋
  2. 挙上筋
  3. 菱形筋
この他、肩周辺の滑液包、上腕動脈、腋窩のリンパ節を確認する。

肩であれば上記のように触っていく。骨から初めて筋肉、血管、神経、リンパ節などを触っていく。
これを2人組みになり説明をしながら行う。筋肉に関しては、起始、停止、支配神経を説明しながら行う。筋肉はわかりわかりずらい時は軽く力を入れてもらいその走行を確認するようにする。

これに慣れてくると触診力がつくだけでなく、触っているところ、そして、その深層まで視覚的にとらえることができる。

治療している部位が視覚的に浮かび上がっているのと、いないのとでは効果に大きな違いがでる。
皮膚から一枚、一枚はがしながら悪い部位を探していく。オーストラリアでは、先生から治療中に触っているところの下には何があるかを常に質問される。その下の下、その下と質問は繰り返される。答えたと思っても、その支配神経、動きなどを質問される。

私は、若いころ勘に頼った治療をしていた。当時はそれでなんとかなったし、それで良いと思っていた。でも、ある日、それに限界を感じ、その何年も成長していないことに気がついた。

触診は地味ですが、確実に力をもたらしてくれるのでみんなで楽しく勉強してみてください。




2012年10月3日水曜日

第2回 Standing&Seated Flexion Test

本日は、Greenman 10Step Screenの中の、Standing &Seated Flexion testについて説明します。このテストはMETで仙骨の変位を確認する際にも使われるので、日頃から練習しておくと良いと思います。

Standing Flexion Testは腸骨に対する仙骨の動き、Seated Flexion Testは仙骨に対する腸骨の動きをテストしています。

Standing Flexion Test
  1. 患者は立位。その時、両足の幅は10cm程度。
  2. 術者は目線をPSISの位置までおとし、手の親指をPSISの下縁に置く。
  3. 患者はず顎を引き、その後床に手が着くまで、ゆっくり、無理なく身体を前に倒していく。その時、施術者はPSISの動きを観察する。(脊柱の側ワンも確認する。)
  4. 頭(天井)方向に動きの多いほうのPSIS側をテスト陽性とする。 
  5. 陽性の原因としては、仙腸関節の動きの低下、その低下により仙骨が腸骨の動きに引っ張られてします等が考えられます。
  6. 反対側のハムストリングの緊張からも同じような所見がでることがあるので、ハムストリングも常に確認する。
Seated Flexion Test
  1. 患者は座位。その時に膝90°で足裏が完全に床に着くようにする。
  2.  術者は目線をPSISのレベルにできるだけ近づけ、手の親指をPSISの下縁に置く。
  3.  患者はゆっくり前屈する。その時、患者の両手は、患者両膝の間を通るようにする。
  4. 術者はPSISの動きを観察し、頭(天井)方向へ動きの多いほうのPSIS側を陽性とする
 Standing とSeatedを比べると、Seatedの方が信頼性が高いです。したがって、Standingだけでは診断には十分でないのでこの二つを併用するようにしてください。


  • (+ve)Standing, (-ve) Seated = 腸骨の障害
 立位では陽性で、座ると陰性。下肢からの影響がない状態、そして、腸骨の動きがある状態で陽性。つまり、腸骨起因の障害と考えられる。
  •  (-ve) Standing, (+ve) Seated = 仙骨の障害 
 これは逆に、腸骨、下肢の影響をなくすと陽性になる。つまりより仙骨起因の障害であると考えられる。
  • (+ve) Standing, (+ve) Seated = 仙骨の障害 
どちらも陽性。腸骨、仙骨どちらも考えなくてはいけないのだが、Seated Flexion testの方がテストとしての信頼性、優位性が高いため仙骨起因と考える。

この2つのテスト。読むと難しいですが、やるととても簡単。慣れると1,2分でできます。この1,2分で自分の中での基準ができます。治療には必ず基準必要。まずは、深い事を考えずに左右どちらの仙腸関節に問題があるのかを確認することから初めてください。

おわかり頂けましたでしょうか?





2012年10月2日火曜日

第1回 10step screen

記念すべき第一回は、Dr.グリーマンの10ステップスクリーンを紹介します。10ステップといいつつ実は12ステップありますが。

我々オステオパスにとって適切な診断をすることは何よりも重要なことになります。しかり、限られた治療時間のなかで検査にそんなに時間を使うことはできません。そこで用いられるのがこの10ステップスクリーンです。いろいろあるスクリーニング法のなかでもこの方法はとても包括的かつ短時間に正確に行うことができます。自由診療の先生だけでなく、整骨院で働く先生。そして、骨格系の検査が苦手な先生などにもお使い頂けると思います。(特に若い先生は若いうちから勘に頼って治療するのではなく、その勘が当たっているのかを常に確認するようにしておくと何年後かの治療家としての姿が変わってきます)。

すべての患者さんに同じ基準を用いるという点でもとても優れているスクリーニング法です。

Greenman 10step screen
1 歩行
1-1 通常の歩行
1-2 かかと歩行
1-3 つまさき歩行
1-4 タンデム歩行

2 姿勢
後方より
2-1 耳垂
2-2 肩
2-3 肩甲骨下角
2-4 脊柱
2-5 腸骨稜
2-6 PSIS
2-7 膝カ
2-8 アキレス腱
2-9 アーチの高さ
側方より
2-10 頭の位置
2-11 脊柱の湾曲
前方より
2-12 鎖骨
2-13 ASIS
2-14 膝蓋骨下縁

3 体幹側屈

4 Standing Flexion Test

5 Stroke Test

6 Seated Flexion Test(座位)

7 上肢の動き(肩甲ー上腕リズム)

8 体幹の回旋(座位)

9 体幹の側屈

10 頚椎の動き(座位)

11 胸郭の動きおよび呼吸

12 下肢の動き(仰向き)
12-1 SLR
12-2 フェーバー・パトリックテスト(Faber Patrick Test)
12-3 スクワット(これは1の歩行時に確認しても良い)

これらのステップを通して問題のある個所をみつけることができます。そして、その問題の個所をさらなる検査で精査(Scanning) していくようにしてください。

私はこのあと、自動運動、多動運動、触診、整形外科的検査をして診断します。きちんとした診断なしに良い骨格系の治療はあり得ません。是非、おためしください。

次回は、この中の、Standing flexion test, Seated flexion testの説明をしていきます。