2012年12月28日金曜日

第30回 Lymphatic Pump Techniques Ⅱ 

以前にも書いたのですが、リンパの手技についてもう少し書いてみます。

リンパパンプは、ミラーにより「呼吸運動を改善する手技」として1926年に開発させれました。 それから、リンパパンプは、リンパの流れを改善することにより間質から炎症を起こす中間物質や老廃物を除くことによりむくみや感染症にも使われるようになりました。

リンパパンプは、身体が感染症などと戦うためにリンパの流れを良くすることを目的にした手技です。 この手技には、胸椎パンプや腹部パンプなどがあり、これらは、胸管の通りを良くすることにより免疫機能を亢進させることを目的にしています。

他にもいろいろな手技がりあます。例えば、ミラーパンプと言ってリズミカルに素早く胸の前を圧迫するもの。足部を使うペダルパンプ、そして、横隔膜ドーミングなどです。もちろん、背部から刺激を加えることもできます。ミラーパンプは、少しやり方を変えると肺の換気にも影響を与えることができます(はじめは、肺へのアプローチをメインにしていたようなのでこの手技の方が使われていたのかもしれません)。

胸部のリンパ手技は、湿咳や上気道炎などにも効果がみられ、さらには、長期の寝た切り状態のときにも免疫を高めるので感染症を防いだり、むくみや痰などを軽減することができます。あとは、炎症の中間物質を減らしたり、免疫を亢進できるのでアレルギーにも効果が期待できます。

前にも書きましたが、基本的には中枢から行います。中枢にスペースをつくりそのスペースに末梢から送りこんで行くようにすると、足のむくみなどは苦労なく、効果的に軽減することができます。

足の捻挫や、膝の前十字靱帯の手術の後のむくみなども中枢から行うことによって効果的に軽減することができるので、是非やってみてください。

しかしながら、使い慣れないといつ使って良いのかが分からないのがリンパパンプです。

風邪の時?怪我の時?乳がんやリンパ腫の時?

この様なときにはもちろん効果的です。でも、それだけではありません。

私は、リンパパンプを日常的に使っています。特に初診時に使うことが多いです。もちろん免疫力の亢進を目的にということもあるのですが、体液循環の改善をさせることにより 全身に栄養やエネルギーが行きわたる様にしたいと考えているからです。実際に、リンパパンプをやると患者さんの顔色がみるみる変化したり、患者さんによっては手や足が暖かくなるのを感じたり、「血液が流れてきているみたいです。」と言われる患者さんがいたりします。

あとは、呼吸の改善です。鼻呼吸ができない、なんだか呼吸がしずらいと感じる時は、もちろんそれらの原因にもアプローチしますが、赤ちゃんが生まれた時に泣き出すと同時に呼吸が始まる時のようなイメージでリンパパンプを使っています。あの「パンッ!」とはじけるような感じです。身体はあの感じを記憶しています。(多分)組織レベルで一回赤ちゃんに戻ってもらって、そこから再生が行われることを期待して治療しています。

少しマニアックな話になってしまって申し訳ないですが、実際の手技はとても簡単ですし、実は知らない間に使っているような手技もあると思います。最近はYoutubeにもたくさん動画があるのでできそうな手技からマネしてみてください。

今年もあと4日。リンパの流れを良くして、健康に新年を迎えましょう。




2012年12月10日月曜日

第29回 Spiritual

皆さんは「スピリチュアル」と聞くとどのように感じるだろう?

なんだか怪しい感じがする?霊?神秘的?などなど。「スピリチュアル」と言う言葉は良く耳にするものの実際問題なんだか良く分からない。おまけに、日本ではテレビなどで面白おかしく扱われてしまったので少し歪んで伝わっているのではないかと思う。私も、「スピリチュアル」聞くと、E原さんとM輪さんが深夜に2人でやっていた番組を思い出してしまう。

先日、少しブログにも書いたのだが、WHO健康の定義に「スピリチュアル」という言葉が加えられるかもという動きがあるようだ。

「スピリチュアル」を治療する。

日本人は、もともと神様や仏様のような霊性と生活が密に関係していたように思う。これは医学の面でもそうであっただろう。しかし、西洋医学の台頭とともにそのような霊性は排除されていき、いまでは生活からも離れてきてしまっているように思う。

もちろん、心、精神、魂などの言葉を積極的に使い、治療している先生もたくさんいる。しかし、治療に、それらの言葉を使うのに違和感を感じる方も多いように思う。

しかし、世界はそちらの方向へ動き始めている。そういうものを無視しての治療、そして、治癒は難しいということなのだろうか。

では、そのWHOでは「スピリチュアル」をどのように定義しているのかというと、

 「スピリチュアル」とは、人間として生きることに関連した経験的一側面であり、身体感覚的な現象を超越して得た体験を表す言葉である。多くの人々にとっ て、「生きていること」が持つスピリチュアルな側面には宗教的な因子が含まれているが、「スピリチュアル」は「宗教的」とは同じ意味ではない。スピリチュ アルな因子は、身体的、心理的、社会的因子を包含した、人間の「生」の全体像を構成する一因子とみることができ、生きている目的ついての関心や懸念と関わっている場合が多い。(WHO「ガンの緩和ケアに関する専門委員会報告」1983年)

つまり、人間全体を考えるときに無視できない、目には見えないが、生きる目的に関する、とても重要な要素だとされる(Wikipediaより)。

最後の一文がなければなんだか良く分からない。もう少し簡単に訳してくれればいいのに。

生きる目標は?自分とは何か?病気とは?死とは?などなどの魂の苦痛。
宗教などに関係なく誰もが感じる苦痛。
それらに明確な答えなどないだろう。しかし、それらがいろいろな形で身体に影響を及ぼす。いままでは、「ストレス」という言葉で片づけられていたのかも知れない。

オステオパシーの原理の1つ、「身体は1つのユニットである」からすると「スピリチュアル」も当然のごとく「ユニット」に含まれてくるのだろう。現にそのような問題を抱えた患者さんは多い。言葉では言い表すことはできないが、辛いことは分かる。それがお互いに一致すればそれだけで症状は解消する。心の解放。魂の解放。精神の解放。

我々、代替医療者ができることは無限に拡がってきている。
実に良い時代になってきた。

我々がそれなりの責任をもてば最後に近づくまで西洋医学に頼ることなく診ることができる。
そのためには、もちろん勉強は必要だが、人間的な成長も必要になってくるのだろう。特に「スピリチュアル」を扱うためには、幅広い事柄、事象に対して自分の考えを明確にしておかなくてはいけないのではないだろうか。 悩んでいる人の前世を当てることが目的ではなさそうだ。

スピリチュアルも含めての健康だ!



2012年12月7日金曜日

第28回 習慣を変える

習慣を変えようと思ったら3週間その事を続ける必要があるといいます。そして、我々には、いろいろな習慣があります。それは身体に良いものから、悪いものまで本当に多岐にわたります。そして、それには意識できるものもあれば、できないものもあります。

チョコレートを食べすぎてします。たばこを吸ってしまう。 車のスピードを出しすぎてしまう。
くつは右足から履く。貧乏ゆすりをしてしまう。朝起きるとトイレに行く。。。etc...

本日は、習慣を変える時に起こる6段階のステージについて書いてみます。各ステージを理解すると成功しやすいのではないかと思います。

  1. 無関心(Pre-contemplation)
  2. 関心(Contemplation)
  3. 準備(Preparing)
  4. 実行(Action)
  5. 維持(Maintaining)
  6. 終了(Termination)
1:無関心
このステージでは、人はまだ習慣を変えることに興味もないし、変えることの必要性も感じていません。したがって、変化を起こす意図すらありません。
むしろ、自分の習慣をあえて変えないようにする時もあります。その習慣がもたらすであろう負の部分を見ようとしなかったり、それらの関する情報を排除したりします。変化の必要性や現実にどのように変化していくのかというところに焦点を当てようとはしません。
したがって、このステージにいる人は「抵抗者」「動機なし」「否定段階」などと呼ばれたりもします。

2:関心
このステージでは、その習慣について考え始めたり、変化に対する可能性について考え始めます。ある習慣に問題があることを認識し、それを変えることで人生がさらに良いものになるのではと考えるようになります。
この様に考えるようになるにはしばしばきっかけがあります。自分の病気、仕事の責任の増加や身近な人を死などがきっかけになったりします。
しかし、このステージでは、問題はまだ後回しにしてしまったり、 考えがあいまいだったり、メリットやデメリットばかりを考えてしまう傾向にあります。結局は、変化によって起こる良いところは分かっているにも関わらず、つい楽な方に流されてしまいます。

3:準備
このステージでは、変化が起こります。その習慣がもっている問題がどのくらい悪いのかを心配し、認識することで、変化しようと決心します。
決死したら最低でも一カ月以内には実行に移すようにすると良いでしょう。 鉄は熱いうちに打て!です。そして、このステージは、できるだけその習慣に関する情報を集める時期にもなります。自己反省、そして、決心をし、計画をたて、変化の必要性を再認識する。この時期は「移行期」です。心がとても揺れ動いています。頭では分かり始めていても、潜在意識までは変えることができていません。

4: 実行
決意のもとに、いよいよ変化を実行に移す時が来ました。新しい生活の始まりです。同時に、失敗のチャンスや誘惑もとて強い時期です。その習慣の事ばかりが気になってしまうかもしれません。この時期は、「自制心」のステージです。誘惑が強い分、耐える力も必要になります。モチベーションを維持するためにちょっとしたことに対して賞賛してみてください。だいたい6カ月くらいつづくと次の「維持」のステージに移って行きます。

5:維持
このステージは、変化をより強固なものにしていくことになります。新しい生活を維持し、失敗や誘惑に負けないようにしなくてはいけないからです。 この段階では、変化が必要だった悪しき習慣は当たり前のものになり、誘惑に負けないためにいくつかの手段が用意されているはずです。以前よりも失敗する確率はすくないとはいえ、ここでも進歩していると感じることは重要です。
もし、この段階で失敗した場合でも、自分のことを責めずに、「きっかけ」を再認識して時期を見て再チャレンジしてください。失敗は誰にでも起こることです。がっかりすることはありません。

6:終了
これまでは維持が死ぬまで続くと考えてきましたが、最近になり、この「終了」というステージが加えられました。
この段階では、変えた習慣を考えた時に嫌悪感を感じたり、その習慣自体では変化しようというモチベーションに成りえなくなっています。潜在意識まで変化が起こっています。
そして、この段階までくると、その習慣を変えることを友達、家族、同僚などに勧めてみたくなります。この様に勧めることは、他の人のモチベーションに成りやすく、また、その人が変えようとした時の大きなサポーターにもなります。新たな成功を生むためにとても重要な要素になります。
しかしながら、この時期でも、失敗は十分ありえるのです。でも、ここでは、失敗ととらえるよりはより強固な作戦やサポートシステムを作る良い機会だととらえられるようにしてください。

習慣の変化はモチベーションが強ければ強いほど成功率が上がります。始める前に、本気で変えたいと思えるようなモチベーションを持てるようにしてください。統計だと、成功までに5~6回くらい失敗をしているようです。だから、失敗しても自分を決して責めないことです。

皆さんも何か変えたい習慣があったらチャレンジしてみてはいかがでしょう。


2012年12月3日月曜日

第27回:The Body Possesses Self-Regulatory and Self-Healing Mechanisms

本日は、以前ブログで書いたオステオパシーの原則のうちの1つ「The Body Possesses Self-Regulatory and Self-Healing Mechanisms=身体は自己調整能力と自己治癒力メカニズムを有している」について書こうと思う。

オステオパシーの考え方は、東洋医学を学んでいる先生にも非常に受け入れやすいと思う。それは、どちらも自然治癒力をとても重要にとらえているからだ。中国とアメリカ、どのように接点があったのかは分からないが、身体を治していくなかでそれぞれが自然治癒力に気が付くタイミングがあったのであろう。とてつもなく凄いことだ。

私が鍼灸を勉強し始めた時から良く耳にする「自然治癒力」という言葉。その言葉を知っているために、はじめから自然治癒力を意識して治療をすることができた、しかし、自然治癒力という言葉がいまも存在していないとすれば、私はどの段階でそのことに気が付くことができたのだろう。


今でも必死に患者さんを「治そう」としていたのではないかと思う。治そうとし続ければ限界がくるのでいずれ気が付くことができたのだろうか。いずれにせよ、早い段階で知ることができる時代にいたのはとてもラッキーなことだ。

身体は、常にさまざまなバランスを保つように働いている。たとえば、血圧、血糖、そして、心拍数などは、いつでも正常の範囲に収まる様に調節され続けている。組織に何らかの傷が付いた時は、我々がその傷を治る様に助けることはできるが、その組織の回復は身体の中に存在する力によって行われている。これが自然治癒力である。

Dr.スティルは「身体を治すのに必要なすべての薬は身体の中に存在する」と言っている。彼は、身体中の組織にある生来の知性、身体を回復させるための賢さ、そして、身体を健康な状態に保つ知恵を有していることを理解していた。

それらのバランスが崩れた時、これらの知恵が身体のバランスを元通りにしてくれる。オステオパスは、これらの力が病気や身体のアンバランスにより障害された時に、どうすれば内なる力が最大限に働くようになるかを考え、そうすることによって少しでも早く回復に導くようにしています。

自然治癒力が働かない状態や減少はいろいろある。それは、身体的にも精神的にもある。しかし、誰もが有している力です。その自然治癒力が最大限に働ける状態を「健康」と呼べるのでしょう。

WHOの健康の定義も見直され、「スピリチュアル」という単語が加えられるかもという話です。スピリチュアルも含めての健康。精神だけでなく、心も含めての健康なのです。昔の人たちは知っていました。途中でそういうのを排除してしまったのです。まさしく、東洋医学やオステオパシーの原理に時代が追いつきて来ています。楽しみですね。



2012年12月1日土曜日

第26回:根本的な解決

我々、日本人は様々な啓蒙活動のおかげで「薬を飲めば病気が治る!」と信じている人が多いように思います。そして、知らないうちに医療費の増大に貢献しています。

確かに、薬には素晴らしい効果を発揮してくれているものはあります。しかし、薬というのはあくまでも対症療法であり病気を根本から治すというものではありません。

抗生物質も長期間使い続ければ効果がなくなるだけでなく、耐性菌により深刻な事態を引き起こします。ステロイドやNSAIDsなどにもそれぞれに副作用があることを認識しておかなくてはいけません。

高血圧、糖尿病、うつ、そして、腰痛など慢性のものは、その原因を取り除かない限り完治することはありません。治っては繰り返しするのは、その症状を一時的に楽にしているにすぎません。

薬によっては、長期間の服用により関節自体を痛めたり、肝臓を痛めたりしてしまうものもあります。そして、薬の長期服用は交感神経系を興奮させるのでより病気になりやすい状態にもしてしまいます。薬を飲むことにより実は完治からはどんどん遠のいているのです。

実は、手技療法も同じです。長期間に渡る不必要な刺激は、身体に痛みを記憶させます。そして、原因などを忘れ、そこが悪いと身体が勘違いをします。そうなれば治ることはありません。そればかりか、原因を思い出させるのに非常に苦労します。

では、根本とはなにか?

身体は本来ホメオスタシスと言って自然に治る力を有しています。不適切な薬の使用はこの機能を大きく低下させます。低下させるだけならよいですが、多くの精神薬のように皆無にしてしまうものまであります。

症状になる前には必ず何らかの小さなサインがあります。そして、慢性の症状には慢性になるだけの原因や理由があります。それは、肉体的、精神的、生活習慣、生活動作、食生活、人間関係、不安などさまざまなことがあるでしょう。少しおかしいと思ったら、立ち止まって自分に聞いてみるとよいのではないでしょうか。

特に、自分にはストレスがないと思っている人は注意が必要です。そういう人に限って、慢性の腰痛、肩コリ、頭痛や高血圧などの症状を持っている場合が多いです。でも、全くそう思っていない患者さんに強要する必要もありません。

原因をなくしておかないとどうなるか。身体は、あるストレスに対する対処を記憶してしまいます。なので、同じストレスに直面した時にまた同じ痛みや症状となって身体に現れることになります。これが症状が繰り返すメカニズムです。無視し続ければ慢性の状態になり、いずれ動けないような状態になります。身体が強制的にストップをかけるからです。

根本的に治そうと思ったら、自分の状態を知ることです。自分が本当にやりた事、楽しいこと。本当はやりたくない事、嫌いな事。いろいろあると思います。それらとどのように向き合うかも大切になってくるでしょう。

自分で気が付き、自分を変えていくことがとても大切になります。私は、治療で身体や気持ちにきっかけを与え、患者さんの身体にある自然治癒力を引き出すことをします。あとは、患者さんの身体に任せます。つまり、患者さんの身体が治しているのです。私ができるのはそれだけです。根本もヒントは見せますが、それ以上はしません。患者さんが答えを出すことが大切と考えています。

みなさんも自分にある症状や状態を変えたいと思ったら、自分の身体に原因を聞いてみて根本から治してみてはいかがですか?

増大する医療費が減らせるかもしれません。



2012年11月29日木曜日

コラム: 多民族国家

先日興味深いニュースを読んだ。それはオーストラリアで韓国人に対する暴行事件が頻発しているというニュースだ。記者は、それを白豪主義と報道している。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20121127-00000006-cnippou-kr


ここ数年、オーストラリアは多くの移民を受け入れている。人口も2000万人を超えた。そして、今も増加しつづけている。移民を受け入れるということは、その文化も受け入れるということになる。

「郷に入れば郷に従え」のように移民先の国の文化を受け入れるべきだという人がいるかもしれない。しかし、現実問題として3世、4世の代になるくらいまでは難しいのではないかと思う。ひょっとしたら、永遠に埋まらない差だってあるのかもしれない。しかし、それを含めてその国の文化になっていくのだろう。

では、どうしてこの様な事件が頻発しているのか?私は、「勤勉さ」「必死さ」の違いなのではないかと思う。
アジア人の移民はオーストラリア人や他の地域からの移民と比べて明らかに労働に対する気合いが違う。中国も韓国も国内の一流の大学を卒業しても確実に就職できる保証はない。国内の競争は他の国とは比べ物にならないのではないだろう。人口に対するマーケットが小さすぎるのだ。そこで、国外にビジネスチャンスを探す。 韓国の歌手やゴルフ選手が必死に海外で活動するのも国内のマーケットに限界を感じているからだろう。

今回はたまたま韓国人に連続しておこっているが、決して韓国人を標的にしているわけではないだろう。なぜならオーストラリア人が日本人、韓国人、中国人を見た目や言葉で区別できないからだ。 実際、ひとつの事件は「Fuxx Chinese!」と言って襲われている。日本人にも十分起こりえることだ。

オーストラリアの最低賃金は時給15ドル(1300円)くらいである。 日本と比べてもとても高い。アジアの国で時給15ドルくらい貰える国があるのだろうか。しかし、現実は、オーストラリアで働く多くのアジア人は正規での就職ができないのでもっと安い時給で働いている。国によっては、それでも母国で働くより良いのではないだろうか。

日本もそうだが、アジア各国は、国内の競争が激しいので年中休みなく働く。競争相手が営業時間を延ばせば同じように伸ばし、安くすれば、それよりも安くする。そういうことが当たり前になっているので、移住先でも同じことをする。

シドニーでは、オーストラリアンデイという建国記念日の様な日にお店をオープンするのを禁じる法律ができた。アジア人がそんなのお構いなしに仕事をするのを抑制するためだ。

今まで競争などほとんどなかったオーストラリア。いきなり格安で営業時間が長いお店ができ始めると運営はうまく行かなくなる。結果として、雇用の問題がおこる。雇用の問題はサブプライムなど様々な要因により起こっているのだろうが、その怒りの矛先は身近な所に行く。そして、今回の様な暴行事件が起こるのではないかと思う。オーストラリア人からすると自分たちの働き口が奪われているように感じるのだろう。

その点、日本は違う。国内のマーケットがでかい。歌手もゴルファーも海外に出る必要はない。留学生も少ない。今は、人口とマーケットがギリギリつりあっているのだろう。好んで辛いことをする人はいない。しかし、あと何年かすればそのマーケットは必然的に小さくなる。その時、日本はどのように対応するのだろうか。

今も、移民や留学生の受け入れを無防備に行っている日本。日本人よりも優遇される外国人がいる国。尖閣や竹島のように何か起こってもすぐに対応することができない日本。

人口減少にともない、マーケットを維持するために移民を受け入れる。その時、かれらの文化も受け入れてあげれるのだろうか。

われわれ日本人は、白人よりも圧倒的に保守的だ。アメリカ、オーストラリア、フランス、ドイツ。どこでも移民の問題は起こっている。日本はそういうことも考えて進んでいかなくてはいけないように思う。

そうしないと、この様な事件が日本でも起こってしまうような気がしてならない。

2012年11月27日火曜日

第25回:ストレス

みなさんはストレスを感じた時、どのようにして乗り越えているでしょう?

今年も残すところあと1カ月。無事に年末年始を乗り切って頂くために、今日はストレスについて書いてみたいと思います。

現代社会はストレス社会と言われています。したがって、治療においてもストレスを無視することはできません。

ストレスの原因はいろいろあります。仕事の重圧、家庭の役割、人間関係、お金、心配事。これらは比較的気が付きやすいものですね。しかし、体調面、睡眠不足、栄養バランス、長時間に渡る同じ姿勢など気が付きにくいものもたくさんあります。

好きなものばかりを食べる。先日言ったように脳は騙されるけど腸にはストレスがかかる。たばこやお酒などの嗜好品も同じですね。脳は喜び、身体は悲鳴をあげる。ストレスです。

長時間のデスクワークも同じです。「私はPC作業が大好き」と言っても身体には大きなストレスが掛かっている。運動も得意な動作だけを繰り返しているといつの間にか怪我の連続という負の連鎖が始まる。すぐに変化がなくても、数か月、数年後には健康問題になっている可能があります。

この様に、自分にとっては「楽しい、嬉しい、おいしい」など喜ばしい感覚もストレスとなり、いろいろな身体問題となっていることがあるんです。そして、患者さんはまずこういうことを自ら言うことはありません。あまりに症状がとれない時は確認しても良いかもしれませんね。

大切なことは、身体からのサインを見逃さないようにするということです。身体は、小さな感覚や身体の痛み、いろいろなサインを出します。忙しい日々やプレッシャーの中にいると見逃してしまうこれらのサインですが、見逃がし続けると身体は必ず悲鳴をあげます。身体的には、ぎっくり腰や寝違いなどが起こるのかもしれないし、精神的にはうつなどの症状として現れてくるでしょう。身体は強制的にそれ以上の行動を止めようとします。そうなってからでは治すのは大変です。 最悪の場合は、もっと深刻な病気や過労死なども起こりえるでしょう。

身体のサインに気がついても、気が付かないふりをする。その結果が取り返しがつかない結果だとしたらどうでしょう?

オーストラリアの大学の教授が「勝者は常に身体だ!」と言っていました。これは、健康な身体なしに成功はあり得ないということです。健康とはとても大切なんです。

全てのストレスを消す必要はありません。ストレスは時にモチベーションやパワーになります。それゆえ、うまく付き合えるといいですね。

忙しい時は、目の前にいろいろやらなくてはいけないことがあるでしょうが、、一旦立ち止まり「自分はハッピーか?」という自問をし、身体のやりたい事、したい事をしてあげる。そういうことが繰り返しできれば、健康を保つことができ、病気にならずにいられるのではないでしょうか。

みなさんは、自分のストレスの原因が何かおわかりですか?




2012年11月25日日曜日

第24回 Vital Sign

バイタルサイン=「生きている証」。

血圧、心拍数、呼吸数、そして、体温。最近は、これらの他にもいろいろ加わっているようだが、基本的には、心臓が動いている。呼吸をしているなどの生きているサイン。

私が日本に帰ってきて感じたこと。それは日本人はとても厚着だということ。これは日本を離れた事がある人だったら感じたことがあるだろうし、一時帰国した人などからも聞くことがあるだろう。
実際、メルボルンにいても日本からきた観光客はすぐわかる。基本的には厚着だ。

それには、バイタルサインの1つ「体温」が関係していると思う。

日本では熱が37度を超えると動くのがつらくなり病院に行く人がいると思う。しかし、オーストラリアでは、発熱は38度から。それ以下で病院にいっても帰ってリンゴでも食べて寝てなさいと言われる。薬すらもらえない。

気温が20度を超えればみんなサーフショーツにTシャツ、ビーサン。20度をこえると夏になる。これは考え方の違いによるものな気がする。日本人は一日の中で一番寒いときに備えた格好をして外出するのに対し、オーストラリアの人は、一日の中で一番暖かいときに合わせて出かけているように思う。まぁ、これはどっちが良いということはない。

皆さんは自分の平熱をご存じだろうか?皆さん、熱がある時は計るが、普段から計っている人はいないでしょうか。しかし、何かしら慢性の症状がある人は、毎日決まった時間に体温を測ってみると良いと思う。きっと36度以下である場合が多いのではないだろうか。

低体温は、基本的には交感神経系の亢進により起こる。そして、その交感神経系の興奮の主なる原因は「ストレス」だ。

詳しい話しは、ここでは省きますが、この結果、体内に活性酸素が大量発生し、内臓を傷つけ、風邪をひいたり、最悪の場合は癌になったりする。低体温は多くの問題を引き起こす。

短期間の強いストレス、長期間にわたる小さなストレス。どちらも同じように問題になってくる。

では、全くストレスフリーの生活が良いのかというとそうでもない。最近、いろいろな本で言われている「副交感神経系を亢進が病気を防ぐ」という状態だが、あまりにその状態が続けば、交感神経系の亢進と同じように低体温を引き起こす。

ストレスは適度に感じるくらいが良いようです。

では、どのくらいの体温が良いのかというと腋窩で36.3~36.5度くらいでしょう。体内は37.2度前後。この体温は、体内で免疫系がもっとも効果的に働ける温度と言われている。

では、どのようにして体温をあげるのか?
まずは第一に運動でしょう。筋肉による熱生産を上げる。特に下半身。そして、内臓の代謝も重要になる。腸内環境を良くするような食事、そして腹式呼吸などにより圧をかけていくと良いのではないでしょうか。

たばこやカフェインなどにも気を付ける必要があるでしょう。
「私、冷え性なんです。」と言う患者さんがいる。しかし、その患者さんは厚着はしているものの、タバコも吸う、コーヒーもがぶがぶ、おまけに運動はしないし、外食が多い。 しかも、多くのストレスを抱えている。この患者さんをどのようにして治せばよいでしょう。いくら治療しても治りません。

他にも、睡眠不足、肩コリ、腰痛、胃炎、アルコール、うつ気味、アレルギー体質等がある場合は、体温を測ってみると良いのではないかと思います。

今は、どこに行っても暖房がある。小さいころからそういう環境で育つ。電車の中、デパート、オフィス。どこに行っても過剰なくらい暖かい。

とてつもない寒冷地でもない限りは家の中と、外気温を同じくらいにした方が良いという先生もいる。永平寺の雲水さんも寒さには慣れると仰っていた。

寒さが風邪をひかせているのだろうか?

暖房は素晴らしいですが、暖房を入れる前にできること、やれることがたくさんあります。
是非、生活習慣を改善して平熱を高くしてみませんか?

2012年11月21日水曜日

第23回 HOLISTIC PRACTICE

オステオパシーの最大の特徴は「HOLISTIC=全体的な」な治療です。このホリスティックが最大の特徴であるがゆえに、オステオパシーは説明が難しいのです。今日はあるウェブページでホリスティックをとてもうまく説明している文があったので紹介します。

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「 ホリスティック プラクティス」

オステオパシーは、痛みなどの治療にホリスティック(全体的)なアプローチを使います。ホリスティックとは、オステオパスが、その患者に影響をあたえるであろう要素。その患者の現在、過去、そして、過去にあった事、或いは今現在抱えている全ての要因から症状を考えることです。

継続する感情的や精神的なストレスは、身体の機能に影響を与え、いつのまにか永続する筋骨格の問題になります。

そこで、オステオパスは問診や検査、そして治療にホリスティックアプローチを用いるのです。オステオパスは、単に痛いところだけを治療するのではなく、その患者さんをさまざまな方向からみて総合的に判断、治療します。

ホリスティックアプローチとは、頭から足先までを治療したり、痛みをとるのにいろいろなタイプの手技を使うことではありません。

反対に、アロパシー的なホリスティックアプローチは、症状を軽減していく手法をとります。そのやり方は、症状がある部位に対してのマッサージやストレッチ、そして、超音波などの痛みを軽減させる方法になります。この方法では、痛みがある部位にはアプローチできるが、その症状の背景にある大きな問題は解決することはできません。
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ご理解頂けたでしょうか?

オステオパシーは、どうして症状として現れているのかにとても重きを置きます。
したがって、筋骨格のバランスはもちろん、患者さんの過去、現在、過去の出来事、今抱えている問題。栄養。運動。さまざまな観点から問題を考え治療します。

赤ちゃんの時、ある意味では完全な身体、心が出産という大きなイベントを経験し、成長とともにいろいろな影響を受けて症状として現れる。

皆さんの症状は何に影響を受けて出ていると思いますか?
仕事?人間関係?お金?親子関係?未来への不安?ちょっと考えてみてはいかがでしょうか。


 

2012年11月19日月曜日

第22回 これからのオステオパシー

日本に帰って来て院を開き、その関連もあり多くの人と会い名刺交換する機会が増えた。私の名刺にはオステオパシーと書いている。しかし、そのほとんどの人がオステオパシーを知らない。治療に携わっている人でも知らない人が多い。名前は知っていても、何をするのか良く分からないということもあるようだ。前にもブログで言ったが、オステオパシーを簡単に説明するのは難しい。

これはオーストラリアでも同じであった。ほとんどとまでは言わないが、30%くらいの人はまだオステオパシーを知らないと思う。国民2000万人の国にオステオパシーの大学が3校ある。最近になり、日本で言う国家資格のように全州統一のナショナルボードというのもできたし、年々その需要は高まっているのでこれから国民の知るところとなるだろう。オステオパスだと永住権も取り易くなる。

日本にはオステオパシーの高等教育機関がない。鍼灸は大学があり、最近柔整の大学もできた。国家資格も鍼灸、柔整にアンマ、マッサージ、指圧師の3つがある。

なんとかオステオパシー協会みたいなのは結構あるみたいだ。大きくなる前に分かれてしまったのだろうか?

しばしばオステオパシーと同じように見られるカイロプラクターの協会はどうなっているのだろう。やはり分裂を繰り返しているのだろうか?

話は違うが、フランス人のオステオパスによると、全世界には280校くらいオステオパシーの学校があり、、その半分はフランスにある。しかし、認可を受けているのはわずか6校だけ。無茶苦茶だ。それだけあれば、その認知度は高いのだろうか?日本の治療院の状態はこんな感じだろう。国家資格の人がやっている院のほかに、いろいろな民間治療であふれている。

最近になり、日本には薬を使わずに患者さんを治療している医師がいることを知った。それも1人、2人ではない。きっと、まだまだいるのだろう。

オステオパシーはアメリカで生まれた。しかし、1960年代にアメリカのオステオパシー協会は医師会に統合される形で、その原形を失った。いまでは、アメリカのオステオパスで手技だけで治療しているのは全体の2%に満たないと言われている。手技について研究する研究者もいなくなってきている。創始者の薬を使わない、できるだけ手術はしないという思いはもう存在しない。しかし、それでもオステオパシーだ。

しかし、薬を処方できるお医者さんがその薬を使わずに治療している。内科医、精神科医、小児科医。きっと積極的に使わない医師もたくさんいるだろう。オーストラリアのオステオパスにも、いわゆる西洋の医療にほとんど頼らずに診療している先生がいる。 もちろん、必要な時に、きちんと必要だと判断できることが最低条件となる。

オーストラリアのオステオパシーはそのくらいの位置にある。日本のオステオパシーもその位置まで行く日がくるだろう。そして、その時は名刺をみてオステオパシーが分からない人がいない様になっていていると嬉しい。

微力ではあるが日本でオステオパシーが認知されるように頑張っていくぞ!

2012年11月17日土曜日

第21回 Visceral Manipulation

今日は内臓マニピュレーションについて書いて行きます。

内臓マニピュレーションは全ての臓器の動きと身体の構造の間の同調的な相互関係に主眼を置いたテクニックです。健康な身体では、これらの同調的な関係は、身体のどんな動きにも影響されることなくとても安定しています。

内臓オステオパシーとは?
フランス人Jean-Piere Barral DOにより創始されました。

内臓は特別な膜につつまれ、支えられている特別な軟部組織です。したがって、内臓は、その膜が引っ張られたり、ひねられたり、圧迫されたり、常に外力にさらされています。

内臓オステオパシーは、内臓の動きを促進、外力による停滞の解消、そして、管状の内臓の流れを良くすることを目的にしています。

さらに、内臓への直接的なアプローチは、内臓への神経の伝達を回復するためにとても重要になります。

全ての内臓は、自律神経の影響を受けています。副交感神経系への最も効果的なアプローチは頭蓋オステオパシーを通して、頭蓋底や頚静脈孔の動き、働きに注意を置いてみてください。そして、迷走神経は、上部頚椎の動きにも関係があるのでそこも注意深く検査する必要があります。

したがって、頭蓋底や上部頚椎の機能を良くしておくと、それだけで、副交感神経系の働きを良くする事ができます。

骨盤内臓器も仙骨神経系から副交感神経系の影響を受けます。頭蓋仙骨オステオパシーにより、仙骨の働きや機能を良くすることは、骨盤内臓器へのとても良い影響を及ぼします。

交感神経系の臓器への神経支配は、脊柱にそって分布しています。したがって、患者仰向けで脊柱にそって施術者の指を使って患者背中を持ち上げるリブライジングなどのテクニックは、効果的に交感神経系の働きに影響を与えることができます。

内臓テクニックは、其本的にはとても優しいテクニックです。そして、やはり解剖を熟知しておく必要があります。エネルギー系の治療は解剖をおろそかにしてしまうことがありますが、解剖をしっかりイメージして行って行かなくてはなりません。

生物の発生からすると、脳や心臓より先に内臓ができます。そして、地球上のはじめの生物は、内臓は有していたが、脳は持っていませんでした。今でも多くの生物が脳を持たずに生活しています。内臓が脳として働いているのでしょうか?

そういった点から、内臓は第2の脳と言う人がいますが、実は第2ではなく独立した考えをもって働いていると考えています。しかも、脳は直接治療できないけど、内臓はできるんです。

交感神経が過剰に働けは下痢になり、副交感神経では便秘になる。過剰な栄養を体外に出すために下痢になる。変なものを食べるとお腹が痛くなる。そのとき、脳は変なものと認識できていないわけです。したがって、脳は身体に悪いものでもおいしいと判断してしまうけど、内臓は悪いものは悪いと判断しているのです。視覚、聴覚、味覚など、脳はしょっちゅうミスを犯します。内臓は間違いを犯しません。

下痢、便秘、アレルギー、じんましんなどいろいろなサインを見逃さないようにしてください。そして、内臓の声に耳を傾けてみてください。




2012年11月12日月曜日

コラム:モノの教え方&運動の仕方②

先日、モノの教え方&運動の仕方(http://www.blogger.com/blogger.g?blogID=6902311061894011594#editor/target=post;postID=4223088751855473924)について書いた。今日はその続きを書いてみる。続きというよりその番組の宣伝になってしまいそうだが。

先日BSプレミアムで;旅のチカラ「YAWARAの魂に迫る~吉田秀彦 フランス~」という番組を見

その番組は、ロンドン五輪での日本柔道惨敗を受けて、バルセロナオリンピック金メダリストの吉田秀彦氏がフランスを訪れると言うものだ。フランスは現在世界最高の柔道人口を誇り、ロンドン五輪で大会最多のメダルを柔道で獲得している。

日本とフランスのどこに違いがあるのか?吉田氏は日本柔道への危機感とともに町道場を訪れる。

吉田氏はオリンピック選手を輩出した町道場をいくつか訪れて行くうちに、その練習風景を見て衝撃を受けることになる。 そこには、日本では見ることができない練習風景があった。子供たちとても楽しそうに柔道に取り組でいたのだ。もちろん、先生が声を荒げることなどはない。

フランスでは、柔道の基礎を4年間かけて行う。まずは、柔道を楽しんでもらい、黒帯を取るまで続けてもらうことに重きを置その後、レベルに合わせて厳しくなっていく。とても自然な流れだ。

その楽しそうに練習する子供たちを見た吉田氏は、「今まで柔道をやっていて楽しいと思ったことはない。」と言った。五輪で金メダルを取った人が柔道を楽しんだことがない。他に誰が楽しいと思う事ができるのだろう。

さらに、そこにでてくるフランス人柔道家たちは口をそろえて、「柔道は人生だ。柔道からいろいろ教えてもらう。」と言う。多分、誰に教えられるわけでもなく、そういう考えに行きつくのだろう。それこそまさに’道’なのではないかと思う。日本より、日本っぽい。日本でやっていてそういう考えに行きつくことができるのだろうか。

はじめに楽しみを教えるフランス、はじめから厳しくする日本。今回のオリンピックを見るとどちらの方が良い結果をもたらすのかを分かって頂けるだろう。さらに、ある程度の段階に行きついた時のその競技に対する愛情、心構えなども大きな差が生まれているように感じる。

では、日本の厳しい教育を支えてきたものは何なのか?日本軍国主義が終わったも、教育という枠から完全にそのシステムを排除することはできなかった。それはいまでもできていない。これは、「人は自分が教えられたようにしか教えることができない。」という考えに従えば納得頂けるだろう。 他の方法をしらないので、知らないうちに自分がやってきたことを正当化してしまう。幼稚園、小学校、きちんとしている子が良い子だ。個性がある子は良い子に成りずらい。

もう一つの重要な要素は、日本の人口の多さだう。これは、先に書いたオーストラリアともフランスとも圧倒的に違う。オーストラリアは日本の6分の1、フランスでも2分の1に過ぎない。
したがって、日本には変わりがいくらでもいるのだ。むしろ、多少厳しくしないと、振り落とせなかったのかもしれない。

この考えからいけば、日本でもサッカー、野球、水泳などまだまだ競技人口が多いスポーツでは厳しくしてもスポーツのレベルが落ちることはないだろう。次がいる。極端に競技人口が少ないアイススケートなどの純粋培養も別だ。しかし、柔道、相撲、ラグビーなど競技人口がどんどん減少しているスポーツでは、いままでのようにはじめから振り落とすと誰も残らなくなってしまう。結果として、あるレベルに達すると甘くするしかなくなる。あるレベルに達すれば競争があるようでない。悪循環。こうなるとこれらのスポーツはレベルがあがらなくなり、いつのまにか衰退してしまう。

この状況を説明するのにとても良い例が番組の中にあった。吉田氏は、「日本では、柔道の強化選手同士が直接練習することはありえない」と発言している。私もこの発言にはビックリした。フランスでは、強化選手は1年を通して合宿生活し、お互いに日々切磋琢磨する。そのレベルにきて初めて本当の競争がはじまる。日本と全く逆である。どちらが強くなるかを見るより明らかだ。

いざ勝負。となった時に延びる可能性がない、あるいは競争させられないのでは話にならない。小さい頃の何年間をフランスやオーストラリアのように楽しんでスポーツをさせても、行きついた時には追い越されてしまう。我々は、このことに早く気が付かなければならない。

これはスポーツだけでなく、様々な分野にも言えるのかも知れない電化製品、映画、政治力、学力。

楽しむことから始め、好奇心を抱かせ想像力を駆り立てるそして、いざ必要な時には持っている力を爆発させる。

小さなころにしっかりと人間力を育てる。親が過度な期待をしない事が重要なのかもしれない。

11月15日(木)BSプレミアム:午前8時から再放送があるようだ。もし、興味がある方は見てみてください。

  

2012年11月10日土曜日

コラム: TOXIC PARENTS

先日、「毒なる親」という本を読んだ。内容はどうあれその中に気になった一節があったのでそれについて書いてみる。

「自分にはできない」と思っているのは、実際には「できない」のではなく、「していないでいること」を選択しているのである。
「自分にはできない」という考えは、そう思った瞬間に自分を縛ってしまう呪文のようなものだ。実際には自分の意思で「しないでいるのだ」ということをはっきりと自覚してほしい。
選択してそうしているのか、それともそうでないのかの二つには、大きな違いがあるからだ。

この本は、調べてもらえれば分かると思うのだが、親子関係、そして、その関係により子供の人生に及ぼす影響とその改善策について書かれている。そして、この一節は、ある問題を改善しようとした時にしばしば遭遇する「自分にはできない」という考えに対しての作者の意見だ。

なぜ私はこの一節が気になったのか?

この文はある意味で、治療にも通じると感じたからだ。では、この文を治療に置き換えて書いてみる。

「自分は治らない」と思っているのは、実際には「治らない」のではなく、「治らないでいること」を選択しているのである。
「自分は治らない」という考えは、そう思った瞬間に自分を縛ってしまう呪文のようなものだ。実際には自分の意思で「治らないでいるのだ」ということをはっきりと自覚してほしい。
選択してそうしているのか、それともそうでないのかの二つには、大きな違いがあるからだ。

もちろん全ての症状がこれに当てはまるわけではない。事実、多くの方が治りたいと思っているし、自然治癒力を有している身体は治そうとする。

では、なんで何年も治らない症状があるのだろう。何年も治らない腰痛。何年も治らない肩コリ。何年の治らない心の問題。身体には何が起こっているのだろう。筋肉であれば6-8週位の内に治癒するのではないだろうか。骨であっても12-15週もあれば元に戻るだろう。でも、実際はそれよりも長く通院している人の方が多いのではないだろうか。

最後の、「選択してそうしているのか、それともそうでないのかの二つには、大きな違いがあるからだ。」
この一節も実に重要だ。「様々な治療をしたり、生活習慣を改善したり、自分の症状につしてしっかり勉強や分析しているのに治らない」のと、「何もせず、何も改善せず、自分の症状が何なのかも知らないで治らない」ので大きな違いがあるからだ。

同じ治らないにも背景はいろいろある。しかし、我々は、その症状、状態がこのどちらに由来するものなのかをしっかり見極める必要がある。前者の場合は、いずれ改善する時がくるだろうが、後者の場合には、まずそのことを気がついてもらわなければならない。認識しないかぎり改善は見られない。

オーストラリアでは、患者さんを自立させることをとても重要に考えている。治療に依存させることはあってはならない。1つの手技に依存したら、その手技を使わないようにしろと言われるくらいだ。このことはどの先生にもとても厳しく言われる。

患者の選択。患者の自立。選択を見極め、自立を促す。頑張って行こうと思う。

ちなみに、その本によると、頭痛、胃腸の問題、身体のコリ、疲労感、食欲不振、過食、睡眠障害、吐き気、などは、「毒なる親」を持った子供が成人後によく見せる症状だそうだ。




2012年11月7日水曜日

第20回 Lymphatic Drainage

第20回は、リンパの流れを改善するテクニックについて書いていきます。風邪なども流行ってくるころなのでちょうど良いかと思います。

これは、とても優しい手技を用いてリンパや体液の循環を促進する手技です。この手技は、むくみなどにとても効果があり、さらに副交感神経系を刺激することによって身体にある緊張を解放することができます。ここで言う’むくみ’とは目に見える物だけでなく、目に見えない体液の流れの停滞も指しています。

リンパへの手技はそれ単体で用いられることはほとんどありません。他の症状に付随して起こっている、或いはその原因となるリンパの流れを改善します。

では、効果がある症例をいくつか挙げていきます。
  • 手術後の痛み、むくみ
  • むくみ
  • 手足の痛み
  • 多発性硬化炎
  • 慢性疲労症候群、線維筋痛症
  • ストレス、疲労
  • 関節炎
  • 頭痛、片頭痛
  • 不眠症、バイタリティーの消失、記憶低下
  • 免疫系
  • 減量
乳癌のあとの腋から腕へのむくみの治療、股関節や骨盤のあたりにあるリンパ節へ影響を及ぼす癌などの治療後の下肢への治療にも用いることができます。これらの治療は簡単には行きません。数週間から数年掛かる事もあります。しかし、むくみを減らすことによって、関節、四肢を動きやすくし、何よりも心身への苦痛を減らすことができると考えています。

私は癌ではなく、膝の前十字靱帯の手術直後のむくみを治療をしましたが、治療とともに目に見えて腫脹を改善することができました。特に、手術の後は、優しい刺激で十分に身体は反応します。怪我~手術と身体は長い間ストレスにさらされます。そこでさらに強い刺激を用いる必要はないのです。まずは、身体を落ち着かせるように刺激を入れるようにしてください。私はこの時、まず下肢のリンパの流れを改善し、その後股関節、膝関節、足関節をBLTで治療してバランスを取る様にしました。

そして、リンパ循環の停滞、鬱滞は、免疫力を著しく低下させます。したがって、風邪や病気になりやすい状態になります。したがって、リンパの流れを良くしておくことは、病気の予防にもなります。
例え風邪をひいてもあきらめずに、そこでしっかりリンパの流れを良くしておくと薬を飲まなくてもスムーズに改善が見られます。薬が好きでない方は是非試してみてください。

私の経験から言うと、東洋医学でいうところの気滞、気鬱の状態にある人はほぼ100%と言っていい位リンパの流れに問題があります。しっかり流れを改善して身体も気持ちもすっきりするようにしてあげてください。必ず喜んでくれます。

リンパへの手技をするにあたり最も大切になってくるのが解剖です。 解剖。解剖。解剖。
解剖なくしてオステオパシーはありません。手技をしながらしっかりと目的の部位をビジュアライズできるように勉強しておいてください。目に見えるむくみはある程度治療できますが、目に見えない流れの停滞は視覚的に感じていかないと見えてこないと思います。そうなると、エステでこすっているのと大差なくなってしまいます。

最後に、ワンポイントです。よく”末梢から中枢へ”と言われると思いますが、まず中枢側にスペースを作って末梢から流してみてください。例えば、下腿にむくみがあっても、鼠径部にスペースを作って、大腿にスペースを作って、最後に下腿から流してください。きっと綺麗に流れると思います。試してみてください。

では、風邪をひかない様にリンパの流れを綺麗にしましょう。




2012年11月5日月曜日

第19回 Centralization

本日は、’Centralization=集中’について書いてみる。

治療中は覚醒も必要だが、同じように集中力を要する。そして、使う手技によって一気に集中力を高める必要もある。皆さんは、そんな時どのようにして集中力を爆発させているのだろう?

オステオパシーでは、頭蓋、ファンクショナルなど間接法の際に特に高い集中力を求められる。
ある程度、経験があれば違うのかもしれないが、私はまだ意識的に集中力を高めるようにしないと思ったように診ることができない。

そして、高い集中力のレベルも一定でなくてはならない。その集中力は自分の体調やコンディションなどに左右されるべきではないし、コンディションが悪い時ほど強い集中力が発揮できるように訓練しておいたほうがよいうだろう。

覚醒から一気に入る深い集中力。これには訓練が必要だ。

では、オーストラリアの授業で教えられる方法を書いてみる。
  1. 椅子に深く腰掛ける。
  2. 膝は90°、両足の裏がきちんと床に着くようにする。
  3. 背筋を伸ばす
  4. 目を閉じて、何回か深呼吸する。
  5. 自分の回りのスペースを感じる。
  6. 患者にも十分なスペースを与える。
まずは、自分がリラックスできる状態をつくり、そして、患者さんにもリラックスできる環境を与える。
これはとても大切なことだ。患者さんを触る前に自分がしっかり落ち着く必要がある。

両足を床に着けるのは安定性ということもあるのだろうが、大地からのパワーを感じるためと言っている先生もいた。オーストラリアでは、たまに裸足で治療しているヒッピーな人もいる。

そして、先生は瞑想やヨガなどを日常的にしておくことを勧めていた。
日本では座禅などもよいでしょう。
はじめは一人でやるのは大変なのでグループワークに参加しても良いのかもしれない。

そういえば、エドガー・ケーシーも瞑想をしないなんて考えられないと言っていた。彼は、瞑想をとても大切に考え、彼の本「神の探究」にわざわざ瞑想の項目を増やしたくらいだ。

私は、集中力に限界はないと思っている。短時間でしっかりと高めることができればより細かい動きや現象まで感じることができるだろう。それが自然にできるようになっているのが理想的だ。

私も練習をするようにしている。家のような静かなところでやってみたり、電車のなかでやってみたり、時にはサウナで我慢しているときなどにもやるようにしている。でも、やっぱり難しい。

あと、大切なことは、どうしても集中できない時。そういう時は、患者さんから一度手を離なして、上に書いた順番を繰り返しやってみる。リセットも必要だ。そして、準備が整ったら再度手を置く。

先日、永平寺別院長谷寺の雲水さんの話しを聞く機会があった。その中で、雲水さんは、姿勢と呼吸が整えば、考えはまとまるとおっしゃっていた。心が乱れているときは、いつもやっている合掌ですらできなくなってしまうとのことだった。

治療もきっと同じなのだろう。

集中力!
何か良い練習方法があったら教えてください。

2012年11月1日木曜日

第18回 Osteopathy for Babies and Children

本日は、赤ちゃんと子供のためのオステオパシーについて書いてみます。このエリアは私が最も強く関心があるエリアです。理由としては、大人を治療していると明らかに昔からもっている状態に苦しんでいる人が多いということです。本人はそのことに気がついていません。

赤ちゃんや子供の時にしっかり身体を整えておけば、後々でてくるであろう問題を少なくすることができるし、何といっても子供はとても良く治療に反応することができるのです。不調をできるだけ早く取り除いておけば、後の人生がとても幸せなものになると考えています。

一般的には、赤ちゃんや子供はストレスや緊張がないと考えられている。なぜなら彼らはとても若いからだ。しかし、現実は違う。
まず出産は我々の人生でもっともストレスフルな出来事の1つである。 出産までの間、子宮から押し出され、産道からのプレッシャーを感じ、骨盤の中でその位置を変えるなど子供はいろいろな力に直面する。

赤ちゃんの頭はこれらのストレスをしっかり吸収する能力を持っている。産道を通るために、頭の骨は重なり、曲がり、そして、ゆがむことによって頭のサイズを小さくする。そして、顎を胸の方へ近づけることにより、さらに頭の直径を縮める。

その結果、多くの赤ちゃんは頭の形がゆがんだ状態で生まれてくる。 初めの数日、赤ちゃんがお乳を飲んだり、泣いたり、あくびをすることによって、そのゆがんだ形はゆっくり弛んできれいになっていく。しかし、この元に戻す過程は、不完全なまま終わってしまうことが多い。特に、難産であったり、器具を使った場合は不完全であることが多い。その結果、赤ちゃんは、頭と身体にとても不快なストレスを抱えて生きて行かなくてはならなくなる。

だいたいの赤ちゃんは、たとえとても強い変形や圧迫感があったとしても、それらのストレスとうまく付き合うことができるし、満足でき幸せを感じることができる。しかし、うまく対応できない子もいる。このことを覚えておかなくてはならない。オステオパスは、これらの身体に残った圧迫感やストレスがどのように子供の身体に影響しているのかを観察し、治療します。

骨や頭蓋の間への圧迫
赤ちゃんは、頭蓋に常にプレッシャーを感じるととても不快に感じている。これは特に圧迫感が強くなる仰向けn寝た時に感じる。したがって、起きているときより、横になったほうが表現が強くなる子供が多い。これは大切なサインだ。

神経への圧迫
バースコンプレッション(トラウマ)は、唇、ほほ、そして、舌への神経に影響しやすいと考えられている。これらの神経は、頭蓋の下の部分から出ているのだが、赤ちゃんのこの部位は大人ほどしっかり守られていない。赤ちゃんは、しっかりお乳を吸うために、これらの神経、そして、その神経に支配される筋肉を上手に使う必要がある。したがって、うまくお乳が吸えないのも一つのサインになる。

筋肉と軟部組織への圧迫
食道から胃にいくまでに、横隔膜という肋骨の下にある筋肉の層を通る。難産や早産によるストレスはこの横隔膜の緊張を生む。もし、横隔膜が食道方向へ引っ張られると、胃が内容物を保持する能力が著しく低下する。これは、へその緒の問題。へその緒が赤ちゃんの首に絡まっているような場合に赤ちゃんのお腹に緊張を生じる。

通常の緊張
妊娠中や出産時の赤ちゃんへのストレスは、そのまま赤ちゃんの身体の緊張になり、神経系は、常に異常な状態のままになる。これらは、難産、早産の時だけでなく、通常の出産でも起こり、赤ちゃんは完全にリラックスしたり、眠るのが難しい状態に陥る。

これには、1つのセオリーがある。もし、赤ちゃんがそのような状態にあると、まず消化に問題をきたす。母乳やミルクは消化する前に胃からはきだされ、もし、残ったミルクが小腸にはいったとしても、うまく消化できずに発酵してしまいガスを発生する。その結果、赤ちゃんはとても不快な思いをすることになる。

幼児~小児
赤ちゃんのときにこれらの問題をしっかり解決しておかないと、後になって上に描いたような呼吸や消化など様々な問題を起こすことが最近研究で明らかになってきている。呼吸や消化がうまく働かなければ成人してからどんな問題が起こってくるかは容易に想像できるだろう。

頭蓋の骨への圧迫
肉体的な圧迫は、その機能にも影響する。頭や身体の機能は特に重大な影響を受ける。 頭蓋底や耳の周囲へのプレッシャーが解放されないと、耳管への体液循環は低下する。それを放っておけば、繰り返し炎症がおこったり(中耳炎)、膠耳になったりする。最近、注目の突発性難聴だった十分に起こりえるのではないだろうか。発生場所は違うが、同じような発生起序でいえば、斜視が起こったりもする。

顔や顎の骨へも出産時のストレスを受けやすいところだ。これらの骨は、きちんとした形に育つためにも、歯並びをよくしたり、各歯へ適切なスペースをつくるためにも出産時の圧迫を取っておかなければならない。

もし、出産時の圧力が鼻へ影響したら、その子供は口で呼吸をすることになる。口呼吸では、舌が上の歯のアーチを適切にサポートすることができないし、歯がきちんと育つことごできないことが証明されている。

したがって、繰り返す中耳炎、口呼吸、歯並びが著しく悪いこともサインになりえる。

頭蓋オステオパシー
頭蓋へのアプローチはとてもやさしく、安全です。しばしば、外からみているとじっとしているだけで何をしているのか分からないくらいです。しかし、大人だけでなく、赤ちゃんや子供のとても効果を発揮します。
ストレスや緊張を解放するために、その軽い力を使って身体が持っている自然な力を最大限に発揮できるようお手伝いをします。

副作用
治療後の反応は様々ですが、通常子供はリラックスし良く眠る事ができます。それとは反対に、治療後、エネルギーを爆発させ、しばらくして穏やかに眠りに就くこともあります。治療後に元気になるのは正常な反応です。
ごくたまに治療後になかなか落ち着くことができない子供がいます。でも、こえは一時的な反応で、24-48時間以内には落ち着きます。

ここに挙げたのは、ほんの一例にすぎません。
特に小さい頃は、自分をうまく表現できません。泣きやまない、うまくお乳を吸えない、ミルクを吐く、口で呼吸する。気持ちが晴れない。それらの原因が妊娠や出産時に受けたストレスだったらどうでしょう?

これらを解消することはお母さんのストレスを減らすことにもつながります。そして、親子関係も圧倒的によくなります。

妊娠、出産時に子供がなんかしらのストレスを受けているので、その時の母親にも何かしらの問題があったと私は考がえています。これらは、マタニティーブルー、マタニティーディプレッションなどとも関係があるでしょう。したがって、子供の治療と同じように母親の治療もとても重要と考えています。

最近、良く言われる精神的な疾患。もしかしたら、このようなことに起因しているのかもしれないし、肩こり、片頭痛、腰痛などもここでも問題に起因しているのかもしれません。

もし、このような子供のこのような症状、そして、自分自身の体調でお悩みの方。親子関係でお悩みの方。時間は何も解決してくれません。是非、一度相談ください。

2012年10月30日火曜日

第17回 ダイエット

読書の秋。芸術の秋。スポーツの秋。などなどいろいろ言われる秋ですが、なんといっても食欲の秋。ということで、今日はオーストラリア流の体重コントロール法をご紹介します。
私も書きながら再認識します!

ちなみに、オーストラリアでは、オステオパスはコース終了とともにNutritionistの資格を得ることができます。栄養も身体を構成するとても大切な要素と考えています。

まず、長期間で体重を減らして行く場合は、下記の項目をコンビネーションでやっていくことが求められます。
  1. 生活習慣を変える
  2. 運動習慣を変える
  3. 食習慣を変える
 1 生活習慣を変える
  • 自分の行動をモニターする:食べ物日記、食べ物/空腹日記(空腹時以外の食べ物をつける)
  • まず、自己批判、鬱など精神的症状の改善を試みる。
  • 怒りや緊張などのストレスの解消に食べ物を使わない。
  • 毎日体重を計る。
  • 現実的なゴールを設定する。
2 運動習慣を変える
  • 全ての動きが体重に影響あり、それらは身体にも利益を与える。所謂運動だけでなく精神的なもの(瞑想)なども含む。
  • 自分にあった運動の強度、頻度、時間を考えなくてはならない。
  • 体重が減っていくにともなって上記の3つの項目は増やしていく。

運動をより効果的なものにする方法です。
  • 水泳は、陸上で行う運動より体重を減少させる効果は低い。
  • 朝食前、血中の糖とグリコーゲンの値が最も低いので、このタイミングで運動するとより脂肪を燃焼させることができる。
  • 運動してすぐにモノを食べるのを避ける。そうすると、血中の脂肪が筋肉によって使われ、脂肪細胞に戻るのを防ぐことができる。
  • 部分痩せはないと考える!なぜなら脂肪はあなたの身体中をめぐっているからだ。

3 食習慣を変える
  • 摂取カロリーを減らす。

食べ物、食べる時間など細かい方法はあるのですが、まずは、余分なカロリーが何に由来しているのかを見るける。空腹時以外の食べ物、油もの、食べる量、アルコール、その他の過食、過飲を探します。まずは敵を知らねばなりません。

そして、基本は低脂肪、低カロリーダイエットです。したがって、ファーストフードなどはいけません。
朝ごはんを取る事もとても重要です。これは血糖値の値とも関係するのでしっかりとる様にしてください。

そして、きちんとした食事のパターンを持つことも重要になります。3食、毎日ある程度きまった時間にとるようにする。不必要な間食をしないなどを決めておくと良いでしょう。

もし、過食や吐き癖など、食欲コントロールに問題がある場合はその問題も解決しなくてはなりません。

実際にやる前に覚えておいて頂きたいことがいくつかあります。

まずは、自分が本当に痩せる必要があるのかをBMIなどを参考に考えてください。 そして、バランスの良い食生活を心掛けるのも大切なことです。やはり健康的に痩せなくてはなりません。

ある研究では、ほとんどの人は体重減少が1カ月の間に体重の5% までであればリバウンドすることなく維持できると言われています。
例えば、体重60キロの人の場合、1カ月で3キロまで、57キロくらいが無理なくできる減量ということになります。
現実的なゴールを設定する際には、3か月で51~52キロくらいを目標にすると良いでしょう。

無理に体重を落とすと、脂肪と一緒に筋肉も落とすことになります。そして、一旦落ちて、リバウンドすると、付くのはほとんどが脂肪になります。これでは、悪循環です。5%、そして、運動の大切さがわかります。

そして、あなたが行う全ての健康的な変化は、あなたの身体に必ず利益をもたらすということを覚えておいてください。例え、思うように体重が減らなくてもです。まずは、健康的な変化をすることが大切です。それが習慣になり、いずれ体重減少が見られます。

よし、年末に向けて頑張るぞ!OMG,年末が一番難しそう、、、。





2012年10月28日日曜日

第16回 X-ray

本日は、X-rayの基本的な見方を書いてみる。多分、ご存じの方も多いでしょうが、一応順序だって覚えていた方が見落としが少ないと思うので見る順番を中心に書いてみます。

 まず、覚えて頂きたいのがALL ABC'sという語呂です。これがそのまま見る順番になりますので、いままで順序だって見ていなかった先生にはとても便利に使って頂けると思います。

ALL 
  • 必要なフィルムが全て揃っているか?
  • 患者の詳細が全て揃っているか?
  • あるべき骨は全て映っているか?
を確認します。必要なフィルムとは頭蓋には3方向、胸椎は2方向から撮るなどその個所によって軟方向から取るべきかというのが決まっています。それらが全て揃っているか、揃っていないとすればそれはなぜなのかを確認します。患者の詳細は、年齢、性別などのです。これらもとても重要なヒントになるので常に確認が必要になります。そして骨です。これは当たり前のように思いますが、陰影、子供の骨端など欠損しているかのように見えたり、二分脊柱のような奇形や手術で取り除いている場合もあるので確認が必要になります。


A=Alignment(一直線) 
ここでは、1つの骨膜が綺麗に揃っているか、それ以上の骨の並びが綺麗に揃っているかを確認します。例えば、骨折などは分かりやすいですが、その他にも、手関節の尺側変異や脊柱の並び、足のアーチの並びに変異がないかを確認します。

B
B= Bone Quality(骨の質)
これはそのまま、骨がどのように見えるのかを確認します。
骨質が薄くなっている、濃くなっているのか。骨の外側、内側の変化 などをみるようにします。
そして骨膜の関与などもここで確認します。

C
C=Cartilage(軟骨)
軟骨とはいっていますが、ここでは関節の間のスペースと各関節隙が左右対称かを確認します。

S
S=Soft Tissue(軟部組織)
ここでは骨以外の部位での変異を見つけるようにします。腫脹などをみてとることができると思います。

ここでおおよその病変をみつけたら、
1:病変の分析
2:病変はいくつ存在するか。
3:左右対称に存在すうか。
4:診断
この様な流れで診断まで行くことができると思います。

我々が通常見るのは、骨折、脱臼などが多いと思いますが、診断の段階では、レッドフラッグである癌の転移なども十分に考えなくてはなりません。その際は、患者の様々な情報、現病歴、実際の症状などといろいろ照らし合わせて考えていくと良いでしょう。

X-rayを見るのも、1つの技術です。したがって、練習が必要になります。最近では、いろいろな写真がネットにあるので是非ALL ABC'sを使って診断してみてください。





2012年10月25日木曜日

コラム: 大学の1年

本日は、オーストラリアの大学の流れについて書いて行きます。もしかしたら、今後留学したい人の参考になればと思います。

オーストラリアの場合は、2月末に新学期が始まります。1年2学期制です。1学期は12週と決まっています。そして、12週が終わると、1週間のテスト休みがあって1カ月のテスト期間になります。

一度、学期が始まるとそれは深い海に潜るかのごとく次々ある課題、、テストに備えて行かなければなりません。3週目に1つの課題、5週目に小テストが2つ、7週目に課題、10週目に実技小テスト、12週目に小テスト3つ。だいたいこの様な感じで進んでいきます。毎週カウントダウンで進み。気が付いたらもう12週という感じで終わってしまします。だいたいの教科が課題50%、テスト50%とかで配分されているのでどれも手を抜くわけにはいきません。

それらの課題は、1週目の各教科の時に分かるので、1週目にその計画を立てることから始まります。あとは、いかに決めた計画どおり進めていくかです。はっきりいって自分との勝負です。さぼったら後々倍になって返ってきます。

通常、どの科目も講義とチュートリアルで構成されています。チュートリアルとは、クラスを小グループに分けて、クラスでやった内容の問題をあらかじめ解いて行きみんなで答え合わせをするクラスのことを言います。解剖や生理などの重要な科目はこれにワークショップと行って実際に検体で確認したり、実験をしたりするクラスが加わります。したがって、解剖などは、講義3時間、チュートリアル2時間、ワークショップ2時間。1週間に7時間で編成されます。テストもペーパーテストと検体にピンをさしてあるフラッグレース、そして、口頭試問の3つ行わなくてはなりません。本当に隅々まで知らないと受かりません。そうです、ただの地獄です。でも、しっかり勉強するにはとても良い制度なので、日本も解剖だけにでも取り入れたら良いのではないでしょうか。

オーストラリアでは、講義に関しては先生が出席をとってはいけないんです。強制的に出席させてはいけないんです。そして、学生課にいつも生徒の数を数えられているので先生も手を抜くことができません。つまらない授業をすると生徒からクレームが来てすぐクビになってしまします。しかし、出席をとらないからラッキーというわけにはいかないんです。一回の授業でものすごい量進んでしまうのでなかなか休む人はいませんでした。

そして、各授業の間に休み時間というものもありません。なんとなく終わり、次のクラスに移動しなんとなく始まっていきます。そして、9時から5時とかの日は、みんなお腹が減ってしまうのでいろいろ食べながら授業を受けます。ひどい時は、まるで映画館のようです。おやつも日本では考えられないようなものばかり、生のニンジンやセロリをポリポリ食べたり、ツナやコーンの缶詰を食べたり。 鞄からフォークやナイフ、缶切りなどなど。でも、みんな意外とヘルシーなんです。

そして、テスト。テストは基本的には、課題、小テスト、テストの合計で50%以上とればパスできます。これだけ聞くと意外と簡単な様な気がするのですが、みんなガンガン落とします。だいたい1年で10名くらい留年したり、退学したりでいなくなってしまいます。でも、上の学年から同じくらいの人が降りてくるので結局クラスの人数は変わらないのですが。オーストラリアの大学は基本的には追試はありません。しかし、うちの学部はテストが難しいからか追試をやってくれました。僕も5年間で2年生の時に1科目だけ受けたことがありますが、これを落としたらまた来年かと思うと少し緊張したのを覚えています。

慣れるまでは大変ですが、慣れてしまえばあとは何とかなります。これから留学しようか迷っている人は、迷うことなく行ってみてください。それ以上のものを得ることができます。まぁ、多少辛いでしょうが、そこは日本人、気合いと根性あるのみです。押忍! 


2012年10月24日水曜日

第15回 Osteopathy in the Cranial Field

本日は、Osteopathy in the Cranial Fieldについて書いてみます。と言っても細かい手技とかについて書くのではなくもう少し全体的なことを書きます。

クラニアルはエネルギー医学なのか?

世の中には、エネルギーヒーリングというのもがあり、それらは、神秘的な生命力やスピリチュアルエネルギーを基にした治療法を言います。
中国語ではQi(Chi), 日本語ではKi,(気) 、インドではPrana(プラナ)と言われてるものがそれらにあたります。我々東洋人にはとてもなじみが深いものですね。

では、それらのエネルギーはオステオパシーではどのように考えられていたのかというと、いままで何人かのオステオパスがその治療法にエネルギーと言う言葉を用いています。
有名なのは、クラニオセイクラルのJohn UpledgerやバイオダイナミックのJames Jealousなどが挙げられると思います。したがって、アメリカ生まれのオステオパシーにもエネルギーという概念はあるのです。

しかしながら、オステオパシーとしての頭蓋治療はエネルギーではなく、あくまでも生理学的なメカニズムを前提としています。日本では、オステオパシーの頭蓋治療とクラニオセイクラルの区別がついていない人が多いですが、ここに大きな違いがあります。

そうはいっても、頭蓋治療は、数々あるオステオパシーの手技のなかでも最も論争の的になるテクニックであることに間違いはありません。特に、もともとエネルギーの概念を持っていない国では理解されずらいのかもしれません。オーストラリアでも頭蓋治療を肯定的に話す人はほとんどいませんでした。

Osteopathy in the Cranial Fieldは、William Garner Sutherland によって生み出されました。サザーランドは、解剖で頭蓋骨の縫合に動きがあるのではと疑問をもちその研究とともに発展させていきました。
 
では、サザーランドはどのように考えていたのでしょう。彼はこのように述べています;

「筋骨格システムの障害を治すのに、患者自身の内にある力よりパワフルで安全な力はない。」

このように、患者の自然治癒力を促進することに重きを置き、外力を加えることを良しとしていません。「内なる力」という言葉を使っているので彼自身はエネルギー的な考え方をしていたのではないでしょうか。それを最近、生理学的にして行っているのでしょう。このように創始者の思いまでは継承できないようです。

オステオパシーの創始者AT.Stillは自分の子供たちを西洋医学に頼ったことによりに亡くしていたので、一切の薬、手術を行うことを良しとしていませんでした。(現在、アメリカではそれらを行っているのでここでも創始者の思いは消えてしまっています。そして、彼は宗教家でもあったので、「内なる力」のような授業などでされていたのかもしれません。これはあくまでも私の推測です。

頭蓋治療が日本人に好まれるのは、このような感覚にもともと優れているからなのかもしれません。
受ける方の感覚も鋭いので受け入れ易いのでしょう。

この間も少し話題にしたEvidence Based Medicine。これを突き詰めていくと近い将来オステオパシーでも使われなくなってしまう手技があるのではないかと言われています。

私の個人的な見解は、臨床レベルでは、患者さんが納得するような結果が出ればそのメカニズムや理論は二の次でも良いと考えています。人間はそんなに簡単ではないと思っています。しかし、それゆえにきちんとした教育が必要になります。1日、2日のセミナーに出た程度でやられては困るのです。カイロと言う名を使ってボキボキするのが乱立した時のように、クラニアルがとらえられてしまってはいけません。

この様な素晴らしい手技は、自分のさじ加減でどうにでもなってしまうので、自分も患者さんも裏切らないように常に知識を高め、技術を高めていかなければいけないと思います。

サザーランドがこの手技を生みだしていく過程を考えながら 自分の頭、患者さんの頭を触ってみてください。内からの力を感じるはずです。


2012年10月22日月曜日

第14回 Modern Osteopathic Principles

本日は、This is the Osteopathy. オステオパシーの治療はこの原理、原則を基に行われています。 
英語なので訳すると微妙なニュアンスにずれがでるのですが、そんなことにはあまり気にせず各原則の背景にはどんなことが含まれているのかを自分なりに解釈してください。

1: The Body is a unit. 
身体は1つのユニットである。

2:Structure and function are reciprocally inter-related.
構造と機能は相互に関係性を持っている。

3:The body possesses self-regulatory mechanisms. 
身体は、自己調整機能を有する。

4:Rational treatment is based in the previous principles.
 合理的な治療は、1~3の原則に基づいている。

後に、いくつかの原則が適応されています。

5:The body has the inherent capacity to defend itself and repair itself.
身体は, 生まれつき身体を守り、治す能力を有している。

6:When normal adaptability is disrupted, or when environmental changes overcome the body's capacity for self-maintenance, disease may ensue.
身体の正常な適応能力が障害されたり、内部環境の変化により自然治癒能力を弱まらせた時、病気になる。

7:Movement of body fluids is essential to the maintenance of health.
体液の動きは、健康を維持するのに欠かせない。

8:The nervous system plays a crucial part in controlling the body.
神経系は、身体をコントロールするのにとても重要な役割をする。

9:There are somatic components of disease that are not only manifestations of disease but also are factors that contribute to maintenance of the disease state.
病気の構成要素には、単に病気の症状だけでなく、病気の状態を維持するのに原因となる要素がある。

今、読んでみると当たり前のような感じもすると思うのですが、100年以上前に自分の治療や、解剖の知識を通してこの様な原則に行きついたのはとても凄いとこだと思います。そして、AT.Stillのお弟子さんはこれらの原則を基に様々な手技を開発していったのです。

私は、皆さん各自の解釈を尊重したいので、ひとつひとつの説明はあえてしないでおきます。説明は考えを狭くしてしまう可能性があります。
大切なのは自分でどう解釈するかです。決して間違えはありません。想像力です。AT.Stillと会話してみてください。


2012年10月20日土曜日

コラム:モノの教え方&運動の仕方

本日は、モノの教え方と、子供の時期の運動の仕方を書いて行きます。

「人は自分が教わったようにしか、人にものを教えることができない」と言われている。

先日、子供を連れて近所の公園に行った時にたまたまやっていた少年野球を見て思いした言葉だ。この言葉が100%当たっているとは思っていない。でも、そんな出来事だった。

小学校の高学年の子供たちはグランドの奥の方。低学年の子供たちは手前にいる。野球少年たちはとても礼儀良く整列し、挨拶をしている。さすが日本だ!と感心して見ていた。オーストラリアではまずお目にかかれない光景だ。しかし、しばらくするとその思いは一転した。

「とれよ」、「どこみてる」、「おいっ」数人いるコーチ達から発せられた言葉だ。
ノックがはじまれば周りの子供たちはひたすら大きな声をだしている。声をだせばうまくなるのか。
低学年の子たちは、それでも必死にやっている。ひたむきだ。
うまくできない子には、まわりの大合唱とともにひたすらノックがつづく。
しまいには「考えろよっ」の一言。考えさせる教え方をしてないのに何を考えろと言うのだろう。
むしろ考えなくてはいけないのはあなただ。と思ってしまう。

私自身小さなころから、空手、相撲、柔道、ラグビーとそれこそこれ以上に厳しく指導されてきた。
したがって、オーストラリアに行く前の私には当たり前の光景であっただろう。 でも、このように感じたのは、オーストラリアで違う文化を経験したからだ。

オーストラリアでは、ある程度の年齢やレベルになるまで習いごとで怒られることなどまずない。特に低学年や始めたばかりのころは、いかにそのスポーツを楽しませるかに焦点が置かれる。打てない、とれない、決めれないなどは当たり前と考えられる。むしろ失敗しても褒められる。やっている方はとても気持ちよさそうだ。日本人の私には、もう少し厳しくしてくれよと思うことが多々あった。

では、オーストラリアのスポーツは弱いのだろうか。そんなことはない。水泳、サッカー、ラグビー、クリケット、テニス、自転車、トライアスロンなどなど世界レベルのスポーツであふれている。メジャーリーガー、NBAプレイヤーもいる。人口は日本の6分の1、2000万人。人種の違いだけが原因だろうか。

はじめに楽しさを植え付けられるので、子供たちはそのスポーツにどんどん興味がわいてくる。そして、自分はできると良い勘違いをする。したがって、失敗することを恐れない。これが日本との大きな違いのように感じる。サッカーで点が取れない。の原因をこう言う点にあるのではないだろうか。大きくなってこれを修正するのは難しい。相手はナチュラルで勘違いしいてるのだから。

最近、メジャーにいく日本人が多い。でも、活躍するのは少数だ。私が思うに、活躍している人は、小さいころから圧倒的に野球がうまく、ノックの嵐や怒られることが少ないうえに、自分で練習法や課題を見つけることができた人なのではないだろうか。そうすれば、小さい頃から自尊心を傷つけられることが少ない上に、いざアメリカの様なある程度自由なところに投げ出されても迷うことなく練習できる。後は、ナチュラル勘違いの程度が成功のカギを握っているように思う。

それともう一つ日本独自の文化がある。それは、1つの運動をひたすら続けるということだ。(もちろん、これは悪いことではない)。
オーストラリアの人たちは、去年はバレー、今年はラグビー、来年はテニス。夏は水泳、冬は自転車などいろいろな運動をする。

アメリカでもアメフトと野球のプロで活躍したボー・ジャクソンやディオン・サンダースという選手がいる。ウサイン・ボルトもマンチェスターユナイテッドの練習に参加した。そして、あのマイケル・ジョーダンもバスケをリタイアして野球にチャレンジした。ロジャー・フェデラーもサッカーをやっていた。

日本のプロ選手でそのようなことができる人がいるだろうか。実際には環境があればいただろう。ハンマー投げの室伏が野球をやっていたら。松井秀樹がテニスをやっていたら。などなどいろんな可能性があったでしょう。

高校生も、夏は野球、冬はサッカーなどいろいろやるようにしたらよいのではないでしょうか。そんななかでひとうのスポーツに特化したらそのスポーツに打ち込めばよい。でも、最低でも小学生の間はいろいろな刺激を身体に入れたほうがのちのち良いように思う。

しかし、これは文化的な背景によるものが大きいと思う。日本の人は一回始めたものを辞めると何となく負い目を感じる。部活ですら辞めると何かしらの挫折感を感じなくてはいけない。
オーストラリアの人は、無理に何かをやる事はない。嫌になったら辞め、やりたくなったらやる。
これにはどちらが良いとかではなく、むしろ、どちらも一長一短なような気がする。

学校や塾。いろいろなところでストレスを受けている子供たち。せめて習いごとぐらいはストレスフリーでも良いのではないだろうか。全員プロになるわけではないのだから。それに、プロになる子はほっといてもなる。私が育てたとか言うのはただのエゴでしかない。

戦前からの教育法がいまも残っている。これは、自分がそのように教わってきたからだ。我々の時は、人口が多く、個性を画一化するほうがいろいろ都合が良かったのだろう。しかし、これから人口は減っていくんだ何かを思い切ってできる子供たちを増やした方が良いように思う。



2012年10月19日金曜日

第13回 その他のテクニック

直接法、間接法について書いてきましたが、オステオパシーにはまだまだいろいろなテクニックがあります。今日は、それらを簡単に紹介します。

それらのテクニックは、直接法、間接法に簡単にわけることができません。使い方によって、その性質が直接法、間接法、或いはその両方へ変化するからです。

直接法や間接法を用いるもの
  • Osteopathy in the Cranial Field (頭蓋治療)
  • Myofascial Release (筋膜リリース)
  • Visceral Technique (内臓テクニック)
  • Still Technique 
バリアーコンセプトを用いないテクニック
  • Chapman Reflex
  • Lymphatic pump
  • Harmonic Technique 
Osteopathy in the Cranial Field 
これは直接法、間接法のどちらも用います。
頭蓋治療については書きたいことがたくさんあるので、また後日詳しく書きます。

Visceral Manipulation
治療の目的は、手技的に内臓の構造を治療することによって、正常な緊張、動き、神経と体液の流れを取り戻すことです。
内臓マニピュレーションは、特定の手技を用いるわけではなく、様々な手技を合わせて用います。
体性神経、副交感神経などの神経支配、そして、そのレベルを知る事により幅広く治療することができます。

Myofascial Technique
この手技は、ストレッチと反射的解放を複合的に用いることにより軟部組織と関節性の可動性の低下を改善することを目的としています。したがって、ゴールは、、緊張の緩和と機能的協調の獲得になります。
この手技は、直接法と間接法を相互的に用います。

Chapman's Reflexes
これは、手技ではありませんが、1920年にシステムと認識れせ、内臓障害の治療に用いられます。
内臓ー体性反射を刺激することを目的にしています。
ある緊張点は、内臓からの反応点として認識され治療に使われます。
でも、基本的には、治療そのものよりも診断法として使われる方が一般的です。

Lymph pumps
1923年にC.E.Millerにより、リズミカルに腋窩を押すテクニックをとおして描かれ、リンパポンプと名付けられました。
足をリズミカルに背屈することによりリンパ液をポンプする力を起こし循環をよくしたりするのが一例になります。
最近の研究により胸椎、腹をポンプするとリンパ細胞の循環が増すと方向されています。


Harmonic Technique
リズミカルな振幅運動により関節運動を促進し、リンパ液やその他の体液の循環を良くします。
イギリスでは、これに似たような手技がいろいろあります。
  • General osteopathic treatment (GOT)
  • General articulatory treatment 
  • Total body adjustment 
これらの手技も繰り返し身体をゆらすことによって関節の適切な動きを取り戻し、体液循環をよくします。


これまでいろいろなテクニックを紹介してきましたが、われわれは、これらの直接法、間接法のテクニックを合わせて治療します。したがって、100人のオステオパスがいれば100通りの治療法があると言われるのです。このことがオステオパシーって何?と聞かれた時にうまく説明するのに困ってしまうとこなんです。一言で言えるほど簡単ではないんです。

オステオパシーは原理が大切であり、その原理に基づいてする手技に意味があるのです。極端な話、AT.Stillが提唱した医療哲学を基に治療をすれば何をしてもオステオパシーなのです。逆にそれを知らなければ何をしていてもオステではありませ。

日本では、オステと言えば手技という感じで捉えられることが多いですが、その一つ一つの手技だけをピックアップして使っていても究極それはオステではありません。

中医学の中に鍼や灸があるのと同じです。その鍼や灸にもいろいろな方法があります。鍼も灸も見た目が分かりやすいので説明は簡単なのですが、中医には本来、陰陽五行論など、いろいろな原理、原則があります。その原理原則をおろそかにして手技だけを行っている。、今のオステはまさにそんな感じなのでしょう。(もちろんしっかりやられている方はたくさんいると思います)。

次回からそのオステオパシーの原理、原則を紹介していきます。楽しみにしていてください。



2012年10月17日水曜日

コラム: Crazy about Diet!

日本に帰ってきてはや7カ月。日本って面白いと感じたことを書いてみます。

それは何といっても「ダイエット」。

日本の国民のダイエットの興味の高さは世界でもトップレベルでしょう。でも、その意識の高さがゆえにおこっていることがあります。

まずはなんと言っても体重に関する会話がとても多いということです。

太った?どうしたの?痩せた?何して痩せたの?などなど。

皆さんもきっと記憶にあるはずです。最近では、天気の話しより体型に関する話しのほうが多いのではというくらい。まぁ、そのくらい意識が高いともいえるのですが。これと同じように年齢の話しが多いのも日本の特徴です。
私がオーストラリアにいた6年間で体重、年齢が会話になったのなんて本当に数えるくらい。まぁ、年齢の話は、アジア系の人たちが増えると自然と増えるので、文化的な背景も関係するのでしょう。

まるでWhat's up?感覚という感じですね。このようにしてお互い確認しあうのも日本人の良いところとしておきます。

この挨拶がわりの体型の話しはまだ許せるとして、全くもって許せないのが最近テレビなどでみるダイエット関連の報道の仕方。広告だからしょうがないのもわかる。けど、これは本当に最悪。

つい先日、テレビを見ているとある有名人がヨガについて話していた。妊娠中に14kg増えて、出産後そのヨガをやったら妊娠中より15kg痩せた。しかもくびれができたと自慢顔。

このタレントは広告で使われているのだから特に何とも思わないが、この報道の仕方はいかがなものであろう。これだけではない。ガリガリの女の人がでてきてピラティスは痩せる。今度は整形だらけのおばちゃんが出てきて、こう動けば痩せると言う。こっちがあなたを心配しちゃうよ。

本当にヨガやピラティスを愛していてその良さを伝えたいのであればこういう広告の仕方はしないでしょう。
それらの運動をして筋肉量が増すことにより基礎代謝があがるからその結果として体重減少がみられるだろう。とか、ストレスを減らすことにより交感神経の過緊張がおさえられ、今までその代わりに行っていた過食を減らすことができるので痩せる。とかならまだ話しはわかる。

ピラティスは、ケガからの回復を目的に作られたわけであって、痩せるためにつくわれたわけではない。

さらにひどいのは、痩せる食べ物。スープ。サプリ。ジュースなどなど。流行ってはすたり、また新しいのを作り出す。それを健康の専門家までが勧めている。痩せるための何か薬でも入っているの?

痩せるということがどういうことかわからなければいけない。

出るほうより入るほうが多ければ体重は増えるのである。極端にいえば、何も入れなければ体重は落ちるのだ。ただ、それだけだ。

挙げていけばきりがない。子供に関するこは特に頭にくる。子供のダイエット。運動不足。これで日本の未来は大丈夫なのか。

骨密度。気付いた時にはもう遅い。一番からだが出来てくるときに栄養を制限するのはとても危険だ。

ちなみに、身体が大きなイメージのあるオーストラリア人。平均寿命はなんと82歳で世界で4位。日本の84歳に比べるともう少しですが、これから逆転することは十分にありえると思います。さらに子供の学力でも日本はオーストラリアに抜かれてしまっている科目がある。オーストラリアの子供たちは勉強もしている。これに加え、しっかりとした運動、そして、成人してからの運動、あとは本質を見る目を持っていることによるのではないかと考える。


ダイエット。ヨガ。ピラティス。子供の健康。健康食品。どれにも本質がある。
試す前に本質を知ることだ。いつまでも騙されているわけにはいけない。
子供の親は子供の未来もかかっている。学校、塾などを必死に調べるように、栄養についてもしらなくてはいけない。

ブームを作りたがる日本の文化。その中にいるわれわれ日本人。本質を見る時代が来ているように思う。オーストラリアにも日本ほどではないがブームをつくる報道はある。でも、同時に正確な報道もされる。日本には正確な報道、情報があまりにも不足している。

っと、熱く語ってしまいましたが、日本にいるとわからない不思議なことはいろいろあります。また、何か気が付いたら書かせてもらいます。

よしっ、私も今日からダイエットだ!



2012年10月16日火曜日

第12回 Balanced Ligamentous Tension

本日はBlanced Ligamentous Tension(BLT)を紹介します。

この手技は、1940年代初頭に、頭蓋治療の創始者として有名なWilliam Sutherland DOによりBalanced Membranous Tensionとともに提唱されました。
サザーランドDOはこれらの手技を、彼が提唱する頭蓋治療のコンセプトに関連して発展させました。その後、Anne WalesとPaul Kimberleyによりさらに発展されました。

昨日のFunctional Techniqueは、骨の感触に集中するように言いましたが、このBLTは靭帯・関節メカニズムにその焦点を当てます。

靭帯・関節メカニズムとは、
  • 正常に機能している関節は、それぞれの靭帯に適正に配分された緊張により支えられている。
  • 各靭帯間に適切に配分された緊張は、怪我や障害により変化する。
したがって、BLTは怪我などによって一旦失われた靭帯の緊張の不均衡を改善し、適切な緊張を取り戻すことを目的に行います。

実は、このBLT昨日のFunctional Techniqueとやり方はほとんど同じです。

まずは、Screeningして、おおよその悪いところを探します。そして、Scanningすることにより特定の部位まで落とし込みます。そして、最後は、その障害部位が最も動きやすい方向を探します。
その方向を探すのに使うのが、3つの回旋運動、そして3つの直線運動です。

例)上部胸椎
  1. Screen: 10Step Screenなど上部胸椎がおかしい
  2. Scan: 上部胸椎のなかでも特にT2の動きがおかしい
  3. Segmental definition: T2の6方向の動きを確認。
このようなステップのイメージをもってやってみてください。T2の場合は頭をLeverとして使って動きを確認してみてください。昨日も言ったように、その動きはとても、とても小さいです。視覚では確認できないような小さな動きで確認してください。

BLTとFunctional Techniqueの違い
Functional Techniqueは、動きについていき、さらに緊張を緩めるのに呼吸を用いたのに対し、このBLTは、その動きについていかず、ホールドしたままにします。そして、必ずしも呼吸を使う必要はありません。

BLTも身体のほとんどの部位に用いることができるとても便利な手技です。全く力もいらないので誰にでも使ってもらえると思います。
ただ、かなりの触診力を必要とするので手技とともに触診の練習もしておいてください。大変だと思いますが、指先や手のひらが厚くなってしまう行為はできるだけ避けれるといいですね。





2012年10月15日月曜日

第11回 Functional technique

本日はFunctional Technique(indirect) を紹介いたします。Functionalという単語はIndirect technique全体をさす場合もあるのですが、ここでのFunctionalはFunctionalという手技をさしています。

Functional Technique は1950年代初頭に複数のアメリカのオステオパスのグループにより発展しました。そして、William Johnston と Harold Hooverはその発展にとても強い影響を与えたことにより賞賛されています。

どういう治療かというと、問題のある関節はその関節が最も緩むところに位置され、その位置から関節が緩みたい方向へ導くようにします。

まずは、通常と同じよう10ステップスクリーンなどによりスクリーンして、さらに部位を特定するためにスキャンします。ここまでで治療すべき部位が明確になっています。
そして、ここからが過程がFunctional Techniqeuの特徴であり、とても重要になります。6方向(3方向の回旋運動と3方向の直線的な動き)を確認して治療する方向をきめるのです。

回旋方向(回旋と言っていますが、関節の運動軸を中心とした動きを確認します。)
  • 関節軸に対する回旋
  • 屈曲・伸展
  • 側屈
直線運動
  • 頭方向、足の方向
  • 右、左
  • 前、後ろ
最後に呼吸。呼気、吸気のどちらでやわらかくなるかを確認します。

 このテクニックも書くと???となるのですが、要は関節の動く方向の動きを全部試すということです。でも、慣れるまではかなり難しいかと思います。というのも、その動きは限りなく小さいからです。動きと言っていますが、関節を曲げたり、伸ばしたりするわけではありません。その動きは借りなく小さく、目視できないレベルです。できるだけ集中してその動きを感じてください。集中あるのみです。

練習し始めに勘違いしがちなのですが、筋肉の硬さを感じようとしてしまうことです。これではいつまでもなにが起こっているのか良く分かりません。骨の感触、動きを感じるようにしてください。

慣れるまでは難しいFunctional Techniqueですが、身体のほとんどの部位の治療に用いることができるとても優れた治療法です。練習してみてください。

でも、やっぱりわかりずらいですね。


2012年10月12日金曜日

第10回 Counter Strain

今日は、カウンターストレインです。
この手技は1955年にLawrence Jones DOによって作られました。したがって、ジョーンズテクニックとも呼ばれます。

これは、"Spontaneous Release by Positioning" Spontaneous=自発的な、Release=解放、Positioning=ポジション。つまり、身体をあるポジションにもってくことによって起こる自発的な解放を意味します。

3つの重要な特徴があります。
  1. 身体の前後にある圧痛点を探し、触診する。この圧痛点は、トリガーポイント、チャップマンの反射点や経穴と似ているところがあります。
  2. 患者は、その圧痛が最も楽になる体位に位置されます。
  3. 術者は、患者をニュートラポジションに戻すのをサポートしなければいけない。
方法
  1. 圧痛点を探します。
  2. 圧痛がどのくらい強いのかのベースラインを患者と確認します。
  3. その圧痛が最もらくになるポジションを探します。
  4. そのポジションで90秒、或いは触診している感覚が変わるまで保持します。
  5. 患者をゆっくりニュートラルのポジションに戻します。
  6.  圧痛点を再テストします。
実際に行うのはとても簡単です。ただ、患者さんをニュートラルに戻すときに力が入ってしますとそれまで施術が無意味になってしまいます。したがって、最後まで気を抜かず患者さんが脱力した状態をキープできるようにサポートしてあげてください。これが成功のカギを握っています。

圧痛点
Jonesの圧痛点は全部で200以上あります。これはトリガーポイント、チャップマンの反射点、そして経穴などとも似ていることろがあります。不思議です。きっと参考にしたのかも知れません。

身体前面の圧痛点はFlexed dysfunction(屈曲障害)に関係していることが多く、屈曲位で施術されることが多いのに対し、後面の圧痛点はExtended dysfunction(伸展障害)が多くみられ伸展にで施術されることが多いです。
身体の外側に近いところにある圧痛点に関しては、それらに側屈や回旋を加えて施術すると良いでしょう。

基本的には左右差から探していくと分かり易いのではないかと思います。

1回の治療では、5、6個の圧痛点が用いられます。最も硬く、圧痛の強いところから施術してみてください。それだけで、多くのマイナーな圧痛点は消えてしまいます。

この手技は、行うのが簡単な分オーバートリートメントになりやすいです。そうすると逆にバランスを崩してしまうので、刺激量には気を付けて行ってください。もちろん、他のテクニックとの併用も可能です。

では、痛いところを見つけて、痛くないところに身体を動かし、90秒ホールド、しっかり支えて元に戻す。やってみてください。


2012年10月11日木曜日

第9回 Indirect Techniqeu - 間接法

本日は間接法の各テクニックを説明する前に、間接法自体の説明をしたいと思います。

間接法にも様々な手技があるのですが、どれにでも共通する項目があります。
  • キーファクターとしては、手技の動きはモーションバリアーから離れます。
  • 障害されている部位は、バランスが取れるところか、テンションが低くなるところに持っていくようにします。
  • 動きの質に焦点をあてます。
  • 動きの始まりに焦点をあてます。
直接法が、Restrictiveバリアー(可動域が狭くなっているなかでの最大域)を中心にして考えられるのに対し、間接法は動きの質に集中しています。

これだけでは何のことかまずわからないと思います。

間接法を理解するには、ease and bindコンセプトを理解する必要があります。要は、動きやすい方向と動きがなくなる方向があるということです。関節でも、皮膚でも行きたい方向、そして、結びつきが強くなる動きというのがあります。これについては、各テクニックを説明する際に詳しく説明していきます。

効果のメカニズム
  • 神経学的仮定に基づくと、障害が正常ではない求心性インパルスを起こし、その結果、異常な遠心性シグナルが起こる。
  • 求心性シグナルを正常にすれば、機能は正常にもどると考えられています。
  •  したがって、間接法は求心性の異常興奮を減らす手技と考えられます。
適応症
  • 手技の性質からもとても幅広い疾患に用いることができます。
  • 寝た切りの患者や中枢、末梢神経障害に使われることもあります。
歴史
  •  Drスティルは、彼の書物のなかで結合組織のシステムを協調していました。彼は、直接法とともに間接法も使っていたと考えられています。
  • しかし、主な発展は1940年代に入ってからになります。
    • William SutherlandによりCranial osteopathy とBalance Ligamentous Tension
    • Hoover&JohnsonによりFunctional Technique
    • JonesによりCounter Strain
    • Schiowitz&DiGiovannaによりFacilitated Positional Release
  • これらの手技が一般的に間接法と言われています。

日本では、指圧、柔整や整体などいろいろな伝統医療があったためなのか、直接法はいまいちキャッチーではなかったのでしょう、日本でオステオパシーというと間接法のイメージが強いはずです。あとは、日本の先生の職人気質、日本人特有のミステリアスなものへの興味などからも間接法を好んで使う先生が多いのでしょうか。

Cranial Osteopathyの先生は別として、オーストラリアでは間接法だけで治療している先生は見たことがありません。直接法の補助的に使っている先生がほとんどでした。(彼らは簡単に痛さ、硬さが取れた方がいいじゃないかと考えています。)治療の順序も直接法から間接法がセオリーになります。実際、直接法と併用した方が効果が持続するようです。

でも、はっきり言って最後は好みの問題なのではないでしょうか。間接法だけで治療しても全然問題ないと思います。ただ、時間がかかるので補助的になってしまっているだけかもしれません。

皆さんもいろいろ試して好みの組み合わせをみつけてください。オリジナルができるかもしれません。

では、明日からは各手技を説明していきます。


2012年10月10日水曜日

コラム:オーストラリアのオステオ事情

間接法の説明に行く前に小休止ということで今日は、オーストラリアのオステオ事情を書いてみます。

現在、オーストラリアには3つの大学にオステオのコースがあります。そのうちVictoria Uni とRIMTはビクトリア州に、Southern Cross Uniはニューサウスウェールズ州にあります。私が留学した2006年にWestern Sydney Uniのコースはなくなってしまいました。どの大学も3年の学士、2年の修士を合わせた5年のコースになっています。ビクトリアのコースが一番大変だという噂です(多分、どこの学校の人も自分のところが一番大変と言っているでしょう)。

3年が終わると、マッサージの国家資格がもらえるので、みんなマッサージ師として働き始めます(うちの大学だけかもしれませんが)。時給はなんと30ドルとか40ドルです。こう聞くととても高く感じますが、オーストラリアの最低賃金は15ドルくらいなので、マックでも、サブウェイでも、スーパーマーケットでも20ドルとるくらいはもらっています。まぁ、その分物価がとても高いですが。向こうの大学生はとってもお金もちです。かわいそうなおっさん留学生にいつもおごってくれました。

少し話しがずれましたが、5年のコースが終わるとナショナルボードに登録してはれてオステオパスとなります。1年目は、だいたい2つ、3つの院を掛け持ちで働き始めます。月曜はAクリニック、火曜日はBクリニックというようにある程度の患者さんが付くまではあちこち動きまわります。このシステムは実はとても良くできていて、それぞれ特徴のある院を選ぶことによっていろいろな手技を学ぶことができるのです。

このようにまじめに働き始めるのはクラスの60%くらい。あとはというと、5年も大変なことしたのにすぐに働けるわけがないと言って、世界中を旅したり、全く違う仕事をしたり、中には医学部に進学したりする人もいます。まぁ、なにするのも全く急がないのがオージーの良いところです。

学校の配置の関係からか、オーストラリアのオステオパスのほとんどがビクトリア州とニューサウスウェールズ州に集まっています。私のクラスメートもメルボルンは競争が激しいから他の州に行くといっている人がいました。でも、日本人の私からするとほとんど競争がないように感じるくらいです。
でも、イギリスではすでにオステオパスが余ってしまっているようで、その人たちがオーストラリア、ニュージーランドで働けるように法改正されたようなので、さらに競争は激しくなるでしょう。

本当にさまざまなスタイルのオステオパスがいるのも特徴です。日本の画一化されたオステオパシーからは想像できないと思います。筋骨格の先生、クリニカルピラティすといってオステ+ピラティスも最近流行っています。その他、クラニアルの先生、バイオダイナミックの先生。スポーツに特化した先生。スポーツトレーナー、パーソナルトレーナー、ヒッピーなどなど。様々な分野に進出して新しいオステオパシーが生まれています。日本のオステオパシーがいかに狭い範囲でやっているのかということが分かると思います。

オーストラリアには、オステオパシーの他に、フィジオセラピーという治療法もとても盛んに行われています。これは日本の理学療法士と言う感じなのでしょうか。もっと広い範囲の治療をおこなっているような気もしますが。2年前から6年のコースになり卒業するとドクターとして扱われます。最近、オステオパスとフィジオセラピストが一緒にに働く機会が増えてきているので治療法もボーダーレスになってきているように感じます。オステオパシーとこのフィジオセラピーがオーストラリアの人が怪我したときのファーストチョイスになっています。

オステオパシーは、これが正解というような治療法はないし、先生の考えがとても強く反映される治療法なので、個性の主張が大好きなオーストラリア人にはとても向いている治療法なのかもしれません。


2012年10月9日火曜日

第8回 High-Velocity Low-Amplitude Technique

今日はこれぞオステオパシー!High-Velocity Low-Amplitude Techniqueを紹介し
ます。
Velocity=早い、Amplitude=振幅。つまり、とても速く、短い振幅のテクニックということになります。Drスティルが「Lightening Bonesetter」と言われていたことからも分かるように、この手技からオステオパシーは始まりました。簡単にいうと関節をポキッと鳴らすテクニックです。

日本では、いろんな情報の錯綜により関節を鳴らす手技は敬遠されてきていますが、オーストラリア、特にビクトリア大学ではHVLAの授業数がもっとも多く、これを中心に治療を組み立てる先生がとても多いです。 

HVLAは、
  • High Velocity Thrust(HVT)
  • Mobilisation with impulse(MWI)
  • Thrust Technique
  • Manipulation
  • Adjustment 
など、いろいろな言われ方をします。この中で、Thrust, Manipulation, Adjustは比較的良く聞くと思います。

適応症
  • 関節運動の低下
  • 関節運動の質の変化
  • 関節痛
  • 関節周囲の筋肉の硬さ
  • 関節障害にともなう交感神経過敏反応
治療メカニズム
  • キャビテーション(ポキッとなる事)
  • ストレッチ
  • 痛みの抑制
  • 筋緊張緩和反射
  • 位置覚の向上
  • プラシーボ
HLVAは,その目覚ましいポキッという音がでるので強いプラシーボ効果をもつとされています。
しかし、メカニズムにきちんとプラシーボを入れるあたりが、日本と違うところなんです。


HVLAの効果の証明
  • HVLAはRandom Controlled Trial により腰痛に効果があることが証明されています。
  • 数々の研究論文が関節可動域の向上、痛みの低下、そして、位置覚の向上がみられることを証明しています。
禁忌
  • 骨、靭帯、動脈、神経、椎間板などに損傷が起こりやすい状態のときはいかなる症状でも注意が必要となります。
  • 患者さんがHVLAをやると楽になるという思いから、手技への依存が強まった場合は禁忌とします。
HVLAと脳卒中
  • 上部頚椎へのHVLAが椎骨動脈を傷つけ脳卒中を起こすことがあると、まことしやかに信じられていますが、統計では、1:40,000~10,000,000くらいの確率であるかもと言われています。かなり少ない確率とはいえるのですが、全くないともいえないというのがいまのところの認識です。
  • しかし、、いくつかの論文では、HVLAと脳卒中の関係性を示す証拠がないと言っています。
HVLAはとても即効性があり素晴らしいテクニックなのですが、日本の場合、教育制度不備や教える方の知識不足、そして、誤った情報などによりあまりよいイメージがないことをとても寂しく思います。

オステオパスは、頭蓋以外の身体のほとんどの関節をadjustすることができます。しかし、この手技をやみくもに使うのではなく、施術前に患者さんに、その効果、メカニズム、副作用、そして、代替の手技があることを説明することが義務付けられています。こうしたステップを経てはじめてお互いがきちんと守られた状態で施術することができるのです。これは他の手技にも通じることですが、その手技をやる目的、効果、メカニズム、そして、その副作用は必要最低限説明できるようにしておくと良いかと思います。

今回で、ひとまず直接法の簡単な説明は終わります。次回からは間接法を説明していきますので楽しみにしておいてください。



2012年10月8日月曜日

第7回 Muscle Energy Technique

本日は、マッスルエナジーテクニック。略してMETを紹介します。

METとは、術者の用いる反対方向の力に対し、患者の筋肉を適切にコントロールされた方向へ収縮させることにより関節可動域を広げる手技です。しかし、METは単に手技というだけではなく、評価方法としても使われています。

METは、Fred Mitchell Srによって開発され、その息子Fred Mitchell Jrによってシステム化されました。初めてオステオパシーの手技として紹介されたのは1919年のことになります。あと少しで100周年です。

Mitchellに最初に骨盤に対する筋力を用いた矯正法を紹介しました。そして、この方法がどんどん広がり頭蓋骨以外のすべての関節に用いられていくようになりました。

METの適応症
  • 収縮した筋を緩める。
  • 動きの低下した関節の関節可動域をひろげる。
  • 生理学的に筋力の低下した筋の筋力の促進。
  • 局所の浮腫(むくみ)やうっ血の低下。
治療効果のメカニズム
  •  筋筋膜ストレッチ
  • 伸長ストレッチ
  • 体液循環の促進
  • 痛みの低下
  • 位置覚と運動覚の向上
METは筋肉の収縮のさせかたにより3つに分類されます。
  1. Post-isometric relaxation MET
  2. Reciprocal inhibition MET
  3. Isotonic contraction to increase tone
 筋収縮に関して、ここで確認しておきます。
  • Isometric contraction: 筋肉の長さは同じです。
  • Isotonic(concentric) contraction: 筋肉は短くなります。
  • Isolytic(eccentric) contraction: 筋肉は長くなります。
Post-isometric relaxation MET
  •  一般的に使われているMETのほとんどがこの手技になります。
  •  他動運動で関節可動域が低下した時に用いられます。
  • 関節をバリアーまで 持って行き、バリアーから離れるように筋肉を収縮させ、3~5秒。その後、完全に緊張を緩め、新しいバリアーまで持って行く。これを3~5回繰り返す。
 Reciprocal Inhibition MET
  • これは、硬くなった筋肉の拮抗筋を緊張させることによりその筋肉の緊張を緩和する手技になります。
 Isolytic contraction
  • これは、意図的に術者の抵抗力を強くし、患者の筋力を上回るようにし、筋緊張とともにストレッチを加えます。
  • 私は、大きな筋肉や強い筋肉。そして、Post-isometrcを3~4回繰り返したあと最後に用いることがあります。
METは、解剖、運動学などを理解していればかなり幅広く使える手技だと思います。 ただ、筋緊張の保持する時間、患者さんが完全にリラックスすることができるかどうかなが治療効果を左右してします。やってみてうまく筋肉の緩和がみられないときは、まずバリアーをしっかり確認、5秒間の緊張の保持、そして、患者の完全リラックスに意識をおいてやってみるとよいと思います。術者が用いる抵抗力もいろいろな考え方があるのでいろいろ自分で試してやってみてください。





2012年10月7日日曜日

第6回 Articulation Technique

今日は雨の日曜日鈍った身体にちょうどよいアーティキュレーション(以降Artic)について書いてみます。これも昨日のSoft Tissueと同じ直接法です。

Aritcは関節可動域の低下した関節へ他動運動を繰り返すことにより、関節可動域の改善を計るというとてもシンプルなテクニックです。関節運動を繰り返す際、毎回バリアー(限界可動域)を感じるようにし、そのバリアーがきちんと広がっていることを確認します。

適応症
  • 関節痛
治療のメカニズム
  • 痛覚低下
  • 体液循環の促進(関節内、関節外)
  • 関節軟骨への栄養の増加
  • 関節周囲の結合組織のストレッチ
  • 交感神経への影響


このテクニックの特徴はLever(てこ)を用いることにより大きな強い力を用いることなく行えるところにあります。
そして、そのLeverにはLong LeverとShort Leverの2種類あります。
  • Long Leverは、てこの支点から離れたところから力を加えて行います。
  • Short Leverは、てこの支点に近いところへ力を加えて行います。
例:第5、第6肋間筋の治療
  • Long Leverの場合
片方の手は、患者第6肋骨を保持し、反対の手で患者上肢を把握、動かすことで目的部位にストレッチを加える。 これは支点から遠いいところから力を加えるのでLong Leverと成ります。
  • Short Leverの場合
片手で患者第6肋骨、反対の手で患者第5肋骨を保持。両手の間隔を開くことによって目的部位にストレッチを加える。これは支点に近いのでShort Leverになります。

Long Lever, Short Lever別にどちらをつかっても構いません、一緒に使ってもOKです。使いやすい方、力の入りやすい方を選んで行ってみてください。

このArticを応用して生み出された手技にイギリスで発展した下記の3つのテクニックがあります。
  • General Articulatory Technique
  • General Osteopathic Treatment 
  • Harmonic Technique
これらのテクニックについては後日ふれていきますが、私はこの中のGenetal Osteopathic TreatmentとHarmonic Techniqueを組み合わせた手技を基本に治療を行っています。利点としては、診断と治療が同時に行えるという点があります。そして、METも組み込むことができるのでほとんどの関節をこの方法で診断、治療しています。

文にすると難しく感じるでしょうが、Articを行うのはとても簡単です。患者さんの関節可動域を検査している時に、動きの悪い方向があったらその可動域の改善がみられるまで繰り返しその方向に動かす!だけです。
検査もそうですが、必ず健側から行い、基準をつくり、その基準を基に患側のバリアーを探し、関節運動を他動的に繰り返すことによって、徐々にそのバリアーを広げるようにする。というのが一連の流れです。

行うのはとてもシンプルなArticですが、バリアーに集中してしっかり行ってみてください。これだけで大きな効果が得られることもあるんです。


2012年10月6日土曜日

第5回 Soft Tissue Technique

本日は、ソフトティシューテクニックを紹介します。ソフトティシューとは、軟部組織を意味します。これは直接法のなかでも基本中の基本と言われる手技です。整骨院の治療にもとても活用しやすいのが特徴です。今日からしばらく直接法の簡単な説明をしていきます。お付き合いください。

Soft Tissue Technique
適応症
  • 筋緊張緩和
  • 筋膜のストレッチ
  • 治療部位の筋筋膜への循環の促進
  • 治療部位の組織の栄養の促進
  • 異常な反射の正常化
  • 局所の免疫反応の促進
禁忌症
  • 急性炎症
  • 治療部位の肌の病変
  •  骨粗相症
  • 骨折
  • 血腫
  • 疼痛、または、過敏すぎる周囲組織の反応や組織の拒否反応
 治療原則
  • 治癒過程の促進
  • 短くなった組織のストレッチ
  • 筋緊張緩和
  • 関節液、組織液などの循環の促進
  • 痛みの低下
 手技
  • クロスファイバーテクニック
オステオパスに最も良く使われているテクニック。 ゆっくり、リズミカルに筋繊維を横断するようにマッサージします。
局所の循環の増加。筋のストレッチを目的としています。
  • ロングチューディナルテクニック
 筋繊維の走行に沿ってマッサージしていきます。
 局所の循環の増加。筋のストレッチを目的としています。
  • インヒビション
圧痛部位を探し、そこにゆっくり継続した圧を加えます。患者に深呼吸を数回してもらっても良いです。押している部位に変化がでるまで続けます。
硬結部のストレッチ。局所の循環の増進を目的としています。
  • マイオフェイシャルリリース(直接法)
動きの低下している方向へ筋膜のストレッチを行います。
 結合組織のストレッチ。局所循環の促進を目的としています。
  • フリクション
早くて短い動きで。繊維の走行に対して横断するように動かします。じばじば痛いことがあります。
主に、炎症がある腱、靭帯に用います。
炎症を抑え、治癒の促進を目的としています。
  • エフュラージ
ゆっくりとして、リズミカルなさする様な動き。通常、オイルを用いて使われる。
静脈やリンパのウっ滞や、心配の緩和などに用いられます。
 体液循環の促進。患者リラックスを目的にしています。
  • ストレッチ
筋の起始、停止を遠ざけゆっくり伸長を加える。ハムストリングくらい大きい筋肉では30秒を理想的とするが、それより小さな筋肉では短くても構わない。
硬く、収縮した組織、結合組織のストレッチを目的に行われます。

名前はちょっとわかりずらいですが、内容はどれも簡単です。多分、みなさんもすでに日常の診療で使っているものもあると思います。
そして、エッ、これしかないの?と思った方。はい、これしかありません。日本の指圧、柔整の後療法などの方法を細かく書いたら軽くこれの何倍もあるでしょうからその凄さがかわります。


2012年10月5日金曜日

第4回 A.T.Still's Technique

オステオパシーの創始者アンドリュー・テイラー・スティルについて書いてみます。今日は良く目にするオステオパシーを作ったきっかけではなく、その技術に関する彼の考え方に焦点を当てて書いてみます。
 

Dr. スティルはオステオパシーの創始者として名前は知られているが、彼の行っていた手技については分からないことが多い。というのも、彼が行っていた筋骨格系の治療法のほとんどは20世紀の間に失われてしまっているからです。でも、後に、Richard Van Buskirk によって再発見され広められStill's Techniqueという名で残っています。

Dr.スティルは、カークスビルの道端で治療をしていました。それにもかかわらず、彼は筋骨格系の治療のマスターと考えられていました。このことは、Dr. スティルのところに多くの患者さんや生徒が集まったこと、そして、彼らの証言からも証明されています。

彼は"Lightning bonesetter"と言われていました。これは、彼が使っていた手技のスピードがとても速かったからです。治療の全てを早い手技だけでやっていたわけではないようですが、これらのことから彼は、主にHVLA(短く速い動きにより関節をポキッと鳴らす手技)を使っていたと考えられています。。しかし、Van Buskirk は、スティルは関節を鳴らすことが必ずしも良い結果を出すわけではないと言っていたと後述しています。

では、なぜ彼の手技は失われてしまったのか?秘伝の手技なので隠したかったのだろうか?
実はそうではないのです。主な理由としては下記の3つが挙げられます。
  1. Dr.スティルは、学校では解剖とオステオパシーの原理を教え、テクニックは教えなかった。
  2. Dr スティルは、これらの知識から、生徒がそれにあった手技を自ら生み出すと信じていた。
  3. Dr スティルは、一つの手技だけが最高であるとは考えていなかった。
彼は、多くの治療を通して最高の手技などないことを知り、授業のなかで解剖と原理を通してヒントを与え続け、自分がそうしたように生徒達が独自の手技を生み出すと強く信じていたのです。

そして、彼はこのようにその時の心境を語っている。
”私は、どこを押したり、引いたり、さすったりといったことを生徒にアドバイスをすることはない。こうすることにより、あなた(生徒)は考え始め探究者となり、何がノーマルで何がアブノーマルなかのを知ることができる。これを包括的に理解できたとき、あなた(生徒)は何をすれば良いかを知り、自分がしていることの結果を予想することができるのだ”。

さらにDr スティルは、自分の生徒とオステオパシーに興味を持っている人に向けてこのように言っている。
”世の中に骨の位置を動かす技術はたくさんある、そして、不自然な関節の位置を元に戻す方法もたくさんある。したがって、オステオパシーの術者は、骨の動きを整えるのに一つの手技やマニピュレーションに固執することはない。”

このような考えもあり、20年もあとに発明されたカイロにくらべ発展は大きく遅れをとった。しかし、彼の死後、当時の生徒達によりたくさんの手技が生み出されるのです。Dr スティルはこの事を予想していたのでしょう。
  • William Sutherland: Osteopathy in the Cranial Field)
  • Lawrence Jones : Counter Strain 
  • Gordon Zinc : Fascial techniques, common compensatory pattern
  • Hoover & William Johnson : Functional Technique
  • Fred Mitchell : Muscle Energy Technique
これらは、ほんの一例に過ぎないです。そして、Dr スティルの原理のもと、その手技はこの瞬間も生まれ続けています。

同じように生徒の一人だったAlan Becker(D Beckerの息子、Rolling Beckerの兄弟)は後のインタビューでいかなる手技も患者さんやその問題に合うように適応してく。そして、直接法、間接法を明確に分ける必要などないとも言っています。

つまり、これがオステオパシーなのです。 彼の原理のもと探究することがオステオパシーなのです。

 1つ、1つの手技がオステオパシーなのではないのです。そんなのに最高のものがないことは1900年代初頭の段階でわかっているのです。

オステオパシーは簡単でもあり、とても難しくもあるのです。それを決めるのは自分なのです。

でも、AT.Stillはもっとシンプルに考えていたのではないかなとも思っています。

最後は、紹介というよりも持論を展開してしまいました。





2012年10月4日木曜日

第3回 Palpation(触診)

今回は触診について書いてみます。オステオパシーでは、触診を一つ技術、あるいはそれ以上と考え、手技と同じように厳しく指導されます。したがって、学校に入ってすぐに勉強が始まり1年かけてみっちり行われます。当然テストもあります。しかし、年配の先生方は、口をそろえて今は甘いと言います。確かに、昔の人は本のページの下に髪の毛を置き、18ページ重ねた上からでもどこに髪の毛があるか分かったという話があります。

今日は、その練習方法の例を書いて行きます。
 骨
  1. 頚切痕
  2. 胸鎖関節
  3. 鎖骨
  4. 烏口突起
  5. 肩鎖関節
  6. 上腕骨大結節
  7. 結節間溝
  8. 上腕骨小結節
  9. 三角筋結節
  10. 上腕骨体
  11. 肩甲棘
  12. 棘上窩
  13. 棘下窩
  14. 肩甲骨上角
  15. 肩甲骨内縁
  16. 肩甲骨下角
  17.  肩甲骨外縁
筋肉
  1. 棘上筋
  2. 棘下筋
  3. 肩甲下筋
  4. 小円筋
腋窩
  1. 前:大胸筋(小胸筋)
  2. 内:前鋸筋(肋骨2-6)
  3. 後:広背筋、大円筋
上腕の筋
  1. 三角筋
  2. 上腕筋
  3. 烏口腕筋
  4. 上腕三頭筋
後面の筋
  1. 僧帽筋
  2. 挙上筋
  3. 菱形筋
この他、肩周辺の滑液包、上腕動脈、腋窩のリンパ節を確認する。

肩であれば上記のように触っていく。骨から初めて筋肉、血管、神経、リンパ節などを触っていく。
これを2人組みになり説明をしながら行う。筋肉に関しては、起始、停止、支配神経を説明しながら行う。筋肉はわかりわかりずらい時は軽く力を入れてもらいその走行を確認するようにする。

これに慣れてくると触診力がつくだけでなく、触っているところ、そして、その深層まで視覚的にとらえることができる。

治療している部位が視覚的に浮かび上がっているのと、いないのとでは効果に大きな違いがでる。
皮膚から一枚、一枚はがしながら悪い部位を探していく。オーストラリアでは、先生から治療中に触っているところの下には何があるかを常に質問される。その下の下、その下と質問は繰り返される。答えたと思っても、その支配神経、動きなどを質問される。

私は、若いころ勘に頼った治療をしていた。当時はそれでなんとかなったし、それで良いと思っていた。でも、ある日、それに限界を感じ、その何年も成長していないことに気がついた。

触診は地味ですが、確実に力をもたらしてくれるのでみんなで楽しく勉強してみてください。




2012年10月3日水曜日

第2回 Standing&Seated Flexion Test

本日は、Greenman 10Step Screenの中の、Standing &Seated Flexion testについて説明します。このテストはMETで仙骨の変位を確認する際にも使われるので、日頃から練習しておくと良いと思います。

Standing Flexion Testは腸骨に対する仙骨の動き、Seated Flexion Testは仙骨に対する腸骨の動きをテストしています。

Standing Flexion Test
  1. 患者は立位。その時、両足の幅は10cm程度。
  2. 術者は目線をPSISの位置までおとし、手の親指をPSISの下縁に置く。
  3. 患者はず顎を引き、その後床に手が着くまで、ゆっくり、無理なく身体を前に倒していく。その時、施術者はPSISの動きを観察する。(脊柱の側ワンも確認する。)
  4. 頭(天井)方向に動きの多いほうのPSIS側をテスト陽性とする。 
  5. 陽性の原因としては、仙腸関節の動きの低下、その低下により仙骨が腸骨の動きに引っ張られてします等が考えられます。
  6. 反対側のハムストリングの緊張からも同じような所見がでることがあるので、ハムストリングも常に確認する。
Seated Flexion Test
  1. 患者は座位。その時に膝90°で足裏が完全に床に着くようにする。
  2.  術者は目線をPSISのレベルにできるだけ近づけ、手の親指をPSISの下縁に置く。
  3.  患者はゆっくり前屈する。その時、患者の両手は、患者両膝の間を通るようにする。
  4. 術者はPSISの動きを観察し、頭(天井)方向へ動きの多いほうのPSIS側を陽性とする
 Standing とSeatedを比べると、Seatedの方が信頼性が高いです。したがって、Standingだけでは診断には十分でないのでこの二つを併用するようにしてください。


  • (+ve)Standing, (-ve) Seated = 腸骨の障害
 立位では陽性で、座ると陰性。下肢からの影響がない状態、そして、腸骨の動きがある状態で陽性。つまり、腸骨起因の障害と考えられる。
  •  (-ve) Standing, (+ve) Seated = 仙骨の障害 
 これは逆に、腸骨、下肢の影響をなくすと陽性になる。つまりより仙骨起因の障害であると考えられる。
  • (+ve) Standing, (+ve) Seated = 仙骨の障害 
どちらも陽性。腸骨、仙骨どちらも考えなくてはいけないのだが、Seated Flexion testの方がテストとしての信頼性、優位性が高いため仙骨起因と考える。

この2つのテスト。読むと難しいですが、やるととても簡単。慣れると1,2分でできます。この1,2分で自分の中での基準ができます。治療には必ず基準必要。まずは、深い事を考えずに左右どちらの仙腸関節に問題があるのかを確認することから初めてください。

おわかり頂けましたでしょうか?





2012年10月2日火曜日

第1回 10step screen

記念すべき第一回は、Dr.グリーマンの10ステップスクリーンを紹介します。10ステップといいつつ実は12ステップありますが。

我々オステオパスにとって適切な診断をすることは何よりも重要なことになります。しかり、限られた治療時間のなかで検査にそんなに時間を使うことはできません。そこで用いられるのがこの10ステップスクリーンです。いろいろあるスクリーニング法のなかでもこの方法はとても包括的かつ短時間に正確に行うことができます。自由診療の先生だけでなく、整骨院で働く先生。そして、骨格系の検査が苦手な先生などにもお使い頂けると思います。(特に若い先生は若いうちから勘に頼って治療するのではなく、その勘が当たっているのかを常に確認するようにしておくと何年後かの治療家としての姿が変わってきます)。

すべての患者さんに同じ基準を用いるという点でもとても優れているスクリーニング法です。

Greenman 10step screen
1 歩行
1-1 通常の歩行
1-2 かかと歩行
1-3 つまさき歩行
1-4 タンデム歩行

2 姿勢
後方より
2-1 耳垂
2-2 肩
2-3 肩甲骨下角
2-4 脊柱
2-5 腸骨稜
2-6 PSIS
2-7 膝カ
2-8 アキレス腱
2-9 アーチの高さ
側方より
2-10 頭の位置
2-11 脊柱の湾曲
前方より
2-12 鎖骨
2-13 ASIS
2-14 膝蓋骨下縁

3 体幹側屈

4 Standing Flexion Test

5 Stroke Test

6 Seated Flexion Test(座位)

7 上肢の動き(肩甲ー上腕リズム)

8 体幹の回旋(座位)

9 体幹の側屈

10 頚椎の動き(座位)

11 胸郭の動きおよび呼吸

12 下肢の動き(仰向き)
12-1 SLR
12-2 フェーバー・パトリックテスト(Faber Patrick Test)
12-3 スクワット(これは1の歩行時に確認しても良い)

これらのステップを通して問題のある個所をみつけることができます。そして、その問題の個所をさらなる検査で精査(Scanning) していくようにしてください。

私はこのあと、自動運動、多動運動、触診、整形外科的検査をして診断します。きちんとした診断なしに良い骨格系の治療はあり得ません。是非、おためしください。

次回は、この中の、Standing flexion test, Seated flexion testの説明をしていきます。