2014年9月23日火曜日

第52回:治る?治らない?

オステオパシーは、「骨の両端の理解を深めること。」だとAT.スティルは言っている。

これには2つの意味があり、解剖をしっかり勉強して身体の隅々まで理解を深めていくということと、人間の人生(生死)への造詣を深めていくという意味が込められてている。

我々の仕事は、誰かの人生の一時期に存在する痛みや不調を治療を通して軽減させたり、なくしたりすることだとすると、いろいろ考えなくてはいけないことがある。

治癒を目標に治療するが、治癒とは何を意味するのだろう?
治癒=健康?!このイコールは成り立つのだろうか?
痛みや不調があれば、不健康?!
健康とはどういう状態?

この忙しい現代社会、不調や痛みがない人など存在するのだろうか?
痛みがあっても健康!痛みがないのに不健康!この違いは。

我々が診るなかで急性のもののほとんどは放っておいても治るだろう。身体には自然治癒力がある。
骨折・脱臼・捻挫・挫傷・打撲。よほどのことがなり限り自然に治癒する。

だが、慢性の症状はそうでない場合が多い。世の中の健康ではないと感じている人の多くが急性ではなく慢性の症状で苦しんでいるのではないだろうか。自然治癒力があるのに慢性になる?

痛みは、生命維持装置。身体は自分のなかに危険がないかを常にパトロールして回っている。
痛みはアウトプット。インプットを受け中枢神経系が作り出す。身体が危険な状況下にあると思えば、その危険から逃げるために痛みを作り出す。

そして、脳は非常にあいまいにできているので、2つの事象を1つにしてしまう。
肩が痛い。首が痛い。腰が痛い。
学校がつまらない。仕事がつらい。家庭の問題。
これらの本来別の事象が長時間継続するといつの間にか1つの問題になる。
仕事をすると腰が痛い。学校で勉強すると肩がこる。家に帰ると腰が痛い。
ストレスと痛みがくっつく瞬間。

本来、この2つの事象が1つになる前に治せるのが理想的だ。
これはパブロフの犬と同じ理屈なのだが、ベルが鳴ると食事が食べれるという回路ができてしまうと、それを2つの事象に引き離すことは容易ではない。ストレスと痛みが1つになったのを別のものだと認識させるのも簡単にはいかない。

しかし、人間の身体は非常にうまくできている。

痛みは生命維持装置。急性のはじめ(受傷時)はできるだけ早く危険か回避させるために強い痛みをだす。しかし、慢性は違う。急性ほどの緊急性はないからだ。

だから、慢性になっていくときは、短い時間の少しの痛みから始まることが多い。必ずしも怪我している必要もない。ここで適切な対応(身体が安心する行動)がとられれば痛みは治まる。しかし、適切な行動がとられないと、身体は少しづつ症状を強くしていく。

筋肉の痛み。痺れ。筋力低下。骨を破壊。不眠。心をプツリ。順番は人それぞれ。

症状が慢性になっている患者さんは、自分がそのような状態に陥っているのに気が付いていない人が多い。

身体は教えてくれている。痛みや不調を尊重するだけだ。無視すれば症状はさらに強くなる。
無視し続ければ身体は何かしらの機能を止め、壊してまでも身体が無理しないようにしてくれる。

不調や痛みの原因はわからないことが多い。特に問題の真ん中にいる人は原因をみつけるのは至難の業。あとは、気が付いているけど、その原因は変えることができないと諦めていたり、気が付かないようにしている場合もある。仕事や夫婦関係の問題などがこれに該当するだろう。どちらも変えるよりも、まずは現状を維持することを考える傾向にある。そうすると症状はより強くなる。

本当に治りたかったら、痛みを尊重するだけ。何かをしてみて、痛みや不調が軽減することは身体に良いこと、逆に強くなるものは原因に近いのかも。

常に勝者は身体だ!健康な肉体なしに何もできない。地位や名誉や財産を築いたところで健康を失えばそれまで。

痛みや不調がある時は、無理せずに立ち止まるとき。周りの人になんと言われようと無理はしてはいけない。あなたが健康を害してたからといって、身体を交換してくれる人はいない。 自分の身体は自分で守る。

理解してしまえばシンプルな痛みのシステムにも一つ難しい問題がある。それは、治りたくない人。ではなく、治ることを迷う人。

どんな状態にもメリットがある。健康にいるメリット。不健康にいるメリット。

痛みがあれば休める。痛みがあればこれをしなくてよい。痛みがあれば行かなくて済む。
鬱であれば、、、。不眠であれば、、、。ぎっくり腰であれば、、。足が痺れていれば、、。
痛みがストッパー的な役割をしてくれている。しかし、痛みがあるのは嫌だ。

子供の時、学校に行きたくなくてお腹を痛くしたり、熱を出したりと同じかな。

治療をしていくと始めに訴えていた主訴はなくなる。しかし、同時に次にある痛みを訴える。
治ろうか、治らないでいようか迷う。
治らないでいれば、痛みはあるがいままでのパターンで良い。
治そうとすると、痛みはないが、新しいパターンを構築しなくてはいけなくなる。これを大変に思っているうちは治らない。

治るには勇気と覚悟が必要。

痛みで嫌なことを回避するのではなく、はっきりと口で言えるようになると楽になる。

痛みで回避する傾向は、男の人に多いように思う。日頃からしっかり、強くいることが求められるせいか、口に出していうことが苦手なのだろうか。

治療は生き方を変えること。苦しい人生は痛みや不調で教えてくれる。そうしたら、楽な生き方をみつけ、実践する。自分の心に従うだけ。シンプル。

本人が本気で治ろうとする痛みは必ず治ります!
「本気」がキーワード!


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