2013年1月8日火曜日

第32回:雪解けを待つ。

今診ている患者様に71歳の男の方がいる。主訴は、右ひざ痛。昔、けがをしたのが影響していると言っていた。

いろんな治療を経験して、私のところに来てくれた。

初診時に感じたこと。膝にはほとんど問題がないということだ。多少の変形はありながらも他動的には全可動域問題なく動く。左右差もほとんどない。

それよりも気になったことは、身体の過緊張状態。頚部、背部、腰部の柔軟性が著しく低下している。頚部の緊張も著名なことから、既往歴、現病歴などにも注意をそそぐ。特に問題はないようだ。脳神経にも問題はみられない。

本人は、年齢的なものだと思っている。でも、それは違う。100人の71歳の人が皆同じように過緊張状態にあるのなら年齢的なものと言えるかもしれないがそうではない。

私は、身体を一つの袋のようなものと考えている。水が入っている袋を触っているような感覚で治療をする。頭から足までをそのように触っていく。健康であれば頭を触っても足に動きがみられる。腰を動かすと頭も下肢も連動して動く。連動して動けるかがとても重要になる。

今回はこの連動がほとんど見られない。これでは、膝を最大限に使うことができない。

治療は、硬膜や筋膜の緊張をとることに集中する。今まで何回か治療しているが、まだ膝は触っていない。この緊張が取れれば、袋の連動が生まれ膝は自然に回復をみせると考えている。そうなって残った痛みを治療すればよい。それまでは膝を触っても「治す」のは難しい。

70年かけて生じた緊張は半端ではない。それは、アルプス山脈にある氷河が解けるのを待っているかのように感じる。それは永遠に解けないのではないかと少し心配にもなる。
しかし、毎回しっかりと動きを感じる。そして、それは始めのころより確実に強くなってきている。
もう少しだ。もう少し待ってみよう。と自問自答。

先ほど、その方の今年初めての治療をした。この緊張はアルプス山脈にある氷河ではなく、富士山の山頂に積っている雪だったようだ。少し解けはじめていた。連動も生まれている。呼吸のパターンにも明らかに変化がでている。待って良かった。

患者様にそのことを伝えても「半信半疑」という顔をしている。それはそうだ。富士山の雪が少し解けたのを気がつく人はいない。しかし、もう少しだ。あと少しでその変化は自覚になる。

身体は確実に治す方向に向かい始めた。どの患者さんも必ず身体が治る方向に向き始める瞬間がある。こうなれば治療は終わったも同然だ。あとは、その力を助けていけばよい。

このままいけば春前には、緊張はなくなりそうだ。そうなったら膝は動き始める。それまでに下肢の筋トレをしっかりやっておいてもらおう。



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